遅延型フードアレルギーの根本的な改善のために、食事制限は必須ではないということをご存知ですか?
フードアレルギーと聞くと、「反応の出た食材を食べてはいけない」と思い込んでいる方が多くいらっしゃいます。しかし、それは根本的な解決策ではありません。そこで今回は、遅延型フードアレルギーと食事制限の関係、危険性、そして改善に向けた具体的なステップについてご紹介します。
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一般的に言われている遅延型フードアレルギーの治療方法
フードアレルギーと聞いて、何を思い浮かべますか?
たとえば桃やメロンなどの果物、そば、ナッツ類など…
私たちの身体は、様々な食物に対してアレルギー反応を起こしてしまいます。
フードアレルギーには、食べてすぐに症状が出る即時性のものと、数時間から数週間もたってから症状が出る「遅延型」のものがあります。
即時型のアレルギーの場合、幼少期にはじめて食べたもので急な症状が出たり、特定の食材を食べてすぐに体調不良などに気付き、病院でアレルギー検査を受けたというパターンが多いのではないでしょうか。そして、アレルゲンが特定されると、医師から「それを食べてはいけない」という指導を受けたことと思います。
その結果、除去食しか食べられないようになったり、自由に外食ができなくなってしまったりと、生活の中に不便を感じている場合も多いでしょう。
遅延型フードアレルギーも、「自分がどの食材にアレルギーを持っているか」は、検査で分かります。
そのとき、自分では思いもよらなかった食材の数値が高い、もしくは好物だと思ってよく食べていたものに反応が出るなど、驚くような結果が出ることが多くあります。
そして即時型と同様に「反応の出た食材は、食べないでください」と指導を受けることがほとんどなのです。
原因食材の除去は、根本解決ではない
ただし遅延型フードアレルギーにおいて、アレルゲンとなる食材を「食べない」という方法は、対症療法でしかなく、根本的な解決にはなりません。
それは、食べないことで一時的に症状が改善することがあっても、再び食べ始めると同じような症状が出てしまうからです。
原因となる食材の除去は、あくまで「応急処置」。
それが即時型フードアレルギーで、食べてすぐに重篤な症状が出てしまう…という場合は、一時的に「食べない」ということも必要です。しかし、慢性的な不調の原因が遅延型フードアレルギーだった場合、ただ単に避けるだけでは、根本的な解決にはなっていないのです。
原因食材の除去に潜むリスク
検査の結果から「食べてはいけない」と言われた場合、治したい一心でそれを忠実に守ることと思います。しかし、それは楽しいはずの食生活に大きな影響を及ぼしてしまいます。
それだけなら良いのですが、自己流に反応の出ている食材を全て制限し、かえって体調が悪くなってしまう…また、頻繁に検査を行って、反応の出る食材の数がだんだんと増えてしまい、どうしてよいか分からなくなった…というケースも見受けられます。
とくに子どもの場合は、必要な栄養を十分にとれず、栄養障害を起こしてしまう危険性も持っています。
もちろん、検査結果をもとに必要最低限の食事制限をして、体調が良くなることもあるでしょう。しかし、一方では不自由な思いをして食事制限をしても何の効果がなかったり、かえって体調を乱される場合があるということも、知っておいてください。
遅延型フードアレルギーを根本的に解決しよう
遅延型のフードアレルギーを根本的に解決するには、腸内の環境に目を向けることが必要です。
私たちの腸の中には、100兆個もの腸内フローラが存在しています。この腸内フローラは、ただ腸内にいるだけではありません。食べたものをきちんと消化・吸収させるため、重要な役割を果たしています。
たんぱく質を例にとってみましょう。
食事に含まれるたんぱく質は、小腸にある「消化酵素」のはたらきで、ペプチドやアミノ酸というものに分解されます。 分解された腸内のたんぱく質やペプチドは、普通は腸の外に出ることはありません。
そして腸内フローラが正しくはたらくことで、小腸の中の粘膜が「バリアー」の役割となり、腸から「不要なもの」が体の中に入ってこないようにしています。
ところが、何らかのストレスが原因で腸内フローラのバランスが崩れると、腸内環境が乱れてしまいます。
すると腸の壁に穴があき、その穴から、たんぱく質やペプチドが血液中にもれていってしまうのです。このような状態を、リーキーガット症候群と言います。
リーキーガットの状態では、十分に分解されていない物質が血液中にどんどん漏れてしまうため、身体がそれを「異常事態」と判断してアレルギー反応を起こします。つまり、アレルギー反応が起こること自体が問題なのではなく、アレルギーを起こすような「異物」が体の中に漏れて入ってくることが問題なのです。これが「遅延型フードアレルギー」の原因です。
食事制限なしに遅延型フードアレルギーを改善する方法
そう聞くと、ますます「NGなものを食べてはいけないのでは?」と思うかも知れません。
しかし、どんなに食べるものに気を使っても、腸の壁の穴がふさがらない限り、遅延型フードアレルギーの根本的解決にはなりません。
つまり必要なのは、「食べないで不調な症状がなくなった」状態ではなく、「何を食べても元気で健康でいられる」ように、腸内環境を正常な状態にする治療なのです。
ある食材で「食物アレルギー」を起こしていたとしても、きっちりと腸内環境を整え、リーキーガットを治療すれば、その食材も食べれるようになります。いつまでも食べれる様にならないならば、それは治療がまだ不十分であるということを意味しています。
具体的にどのようにすればいいか?
フードアレルギーは単に検査結果で陽性が出たからという単純な理由で、食物除去をするべきものではないということが理解できたら、実際に根本的な改善へ向けてのアクションを起こしていきましょう。手順としては、以下の流れがおすすめです。
①検査でアレルギー反応の出た食材を2週間だけ制限し、体調を観察する。
②2週間後、その食材を以前と同じように食べてみる。そして制限した2週間と、再び食べ始めた2週間に体調変化があったかどうかを確かめる。
③もし制限中に体調が良くなり、食べ始めて体調が悪くなったのであれば、根本的治療であるリーキーガットの治療を行いながら、しばらくは控える。
④並行して、腸内環境を整えることに気を配る。
(食物繊維を積極的にとる、補助としてサプリメントを利用するなど)
⑤もし、リーキーガットの治療を行なっているのに、いつまでもある食材に対しての反応がなくならなければ、それ以外の原因(カンジダ菌感染や重金属による腸管の損傷など)が関係している可能性があるため、改めて検査を行う
このような進めかたで、自分の遅延型フードアレルギーの程度を知り、食生活をコントロールすることが必要です。
腸内は自分の目で見ることはできません。だからこそ、状態を把握して、根本的な改善を目指してみてはいかがでしょうか。
まとめ
遅延型フードアレルギーは、自分では気付きにくく、そして治しにくい病気です。だからこそとりあえずの食事制限がおこなわれがちなのですが、「食べない」ということでは本当の原因は解消できません。遅延型フードアレルギーの改善のためにも、腸内環境を整えて、好きなものを食べることのできる身体を取り戻しましょう。
監修医師/小西康弘(医療法人全人会理事長)
2013年に小西統合医療内科を開院。2018年9月より医療法人全人会を設立。分子栄養学や機能性医学の最先端の知識に基づき、私たちの体が本来持っている「自己治癒力」を高める医療を提供。
豊富な臨床経験に基づいた有益な情報を発信中。