医師監修

【医師に聞く】2018年風疹流行、風疹ウイルスと免疫力の関係

2018年、首都圏を中心に風疹が流行しはじめ、全国的に広がりを見せています。
風疹は感染力が非常に高く、大人になってからかかることで重症化しやすいことが知られています。そして、風疹による最も大きな影響は、風疹の抗体が不十分な女性が、妊娠初期に風疹ウイルスに感染することによって胎児に影響を与えてしまう「先天性風疹症候群」です。
そこで、男女問わず、すべての人に知っておいてほしい風疹について、医師に詳しく教えてもらいました。

2018年10月 現状の流行度合い

国立感染症研究所による2018年11月21日現在の情報によると、2018年度の風疹患者累積報告数は2,186人です。
2017年の同時期には82人しか確認されておらず、まさに27倍もの風疹患者がいるということになります。
風疹は、近年でも2度の流行がありました。2012年には2,386人、2013年にはなんと14,344人が風疹に罹患したと報告されています。そしてこのままいくと、今年は2012年の患者数をゆうに抜く勢いで感染が広がっているのです。

ワクチンを接種していない世代が、感染を拡大させている

風疹流行の背景には、ワクチン未接種世代の存在があります。
風疹の予防接種は通常2回、それによって十分な免疫を得ることができますが、実は定期接種の対象者は女子中学生のみ、という時代がありました。

2018年現在、39歳〜56歳の女性は、2回の予防接種を受けている世代です。しかし、56歳より上の世代の女性と、40歳以上の男性は、1回もワクチン接種をしていないのです。
若い世代ではもう少し接種が進んでいます。28~39歳では男女いずれもが、幼児期もしくは中学生の時に1回の接種をしています。しかし1回しか受けていないため、抗体が十分かというと疑問です。
そのため、特に30〜50代の男性を中心に、風疹が流行しているのです。

昔は自然感染によって抗体を得てきた

かつて予防接種のなかった時代は、毎年のように風疹が流行し、かかった人へ免疫を得ることができました。しかしそれは逆に言うと風疹で命を落とす人も多かった、ということでもあります。
風疹ワクチンの接種がはじまったのは昭和52年です。それ以来、風疹患者は減りましたが、自然感染で抗体を得る人も減ったため、余計に接種を受けていない人の罹患リスクが高まっているのです。

今年、届け出のあった風疹患者の中心は、やはりワクチン接種がなく、風疹ウイルスに感染したことがない集団であることが分かっています。

風疹にかかる・かからないのカギは免疫力

風疹のメカニズムは、風邪と同じ。感染している人のセキやくしゃみの飛沫などからうつります。しかし、ウイルスに接したからといって全員が発症するわけではありません。

また予防接種を受けていなくても、どんなに流行してもかからない人もいるのです。これも風邪やインフルエンザと一緒ですね。
実は、風疹やインフルエンザ、風邪などにかかりやすい人の条件というのは、医学的にははっきりとしたエビデンスはないのです。

本当は「検査でこんな数値が出たら、風疹にかかりやすい」とかが分かったらいいのですが、今はそこまでは分からない。
では何が「かかる・かからない」に関係しているかというと、漠然とした「免疫力」を理由にするしかないのです。
しかしこの「免疫力」はれっきとした医学用語で、けっしてないがしろにしていいものではありません。

免疫力について

免疫力と、体力は違います。
見た目がっしりしていて健康そうな人でも、毎年風邪をひいたりしますよね。それはいくら体力があっても、その人の免疫力が低いということ。そのよう方は、風疹にもかかりやすい可能性があります。
では免疫力のあるなしは、どうやって判断すればいいのでしょう。
これも実は、簡単に判断はできないのです。だからはっきりと「あなたは風疹にかかりやすいですよ」といえないのですね。

免疫力は、採血で免疫グロブリンの数値をはかるなど、特殊な検査で調べることはできます。しかしそれはあくまでも「部分的」なもので、その人の免疫力の程度をきっちりと見定めることは現段階では不可能です。

免疫力は、異物の侵入を防ぐ防波堤

風疹のウイルスは、インフルエンザウイルスの2〜5倍の感染力を持つといわれています。つまり自前の免疫力で、そのあたりに飛んでいる風邪やインフルエンザをブロックできていても、風疹ウイルスには負けてしまう…ということも十分にあり得ます。
さきほど、免疫力は数値化できないというお話をしました。しかし、免疫細胞の働きや、どのようなときに弱くなるか…というのは、ある程度分かっています。

免疫は、細胞性免疫と液性免疫のふたつに分けられます。
液性免疫は、免疫ブログロブリンというタンパク質が血液中に溶けており、外から入ってきた異物をやっつける働きをしています。細胞性免疫は、リンパ球やマクロファージなどの免疫を司っている免疫細胞が担当しているもので、これも異物を攻撃します。

つまり免疫力は、これらの免疫グロブリンや免疫細胞が協力しあってできる、体外からのウイルスや細菌などの異物の侵入を防ぐための「防波堤」のようなものとお考えください。
「防波堤」がキッチリと機能していると感染にはかかりにくくなります。

逆に「防波堤」の機能が何らかの理由で低下していると、感染にかかりやすくなるということです。
では、どうしたら「防波堤」を高くすることができるのかということになると、まだまだその方法は分かっていません。民間ではこうすれば免疫力を高めることができるという方法が色々といわれていますが、(もちろんそれなりに納得できるものもありますが)全てが科学的な根拠があるかといわれれば、必ずしもそうではないことも多いのです。

だから、「かかる・かからないは免疫力の問題」ということが分かっていても、具体的な対策として現段階で一番有効なのは、ワクチンの接種ということになっているのです。

男性こそ風疹の予防が必要

風疹は、大人になってからかかると重症化します。中でも大きな影響は、妊娠中の女性の感染による、先天性風疹症候群のリスクです。
妊娠初期の風疹はお腹の赤ちゃんにもうつる可能性があり、母親に風疹の症状が出なくても、赤ちゃんには感染することがあるため注意が必要です。

先天性風疹症候群にかかった場合、心疾患や難聴、白内障をもって生まれるリスクが高まってしまいます。
先天性風疹症候群予防するには、妊娠初期の女性への感染を予防することが第一ですが、これは決して女性側だけのはなしではありません。
それよりも、現在感染リスクの高い、働き盛りで、外からウイルスを家に持ち帰る可能性の高い30〜50代の男性にこそ、気を付けて欲しいことなのです。

風疹は「不顕性感染」といって、感染はしていても症状があらわれないこともあり、自覚症状はなくとも人にうつしてしまう可能性もあります。
今は首都圏での感染が多く報告されていますが、自覚をしない人が移動をすることで、それ以外の地域で広がっていくことも十分に考えられるのです。
もしこの記事を読んでいる男性に、結婚を考えている・妊娠を希望しているパートナーがいるなら、自分がかかるよりも大きな影響を与える可能性があることを知ってください。

まとめ

予防接種というと、「危険、受けない方がよい」という意見も出てきます。
もちろん予防接種には、有害事象も出てきます。100%安全な予防接種など、存在しないからです。しかし風疹に関しては、打たないリスクと打つリスクを秤にかけるならば、打つ方がいいと言えるでしょう。特に、小さいうちにかかるのであればリスクは少なくて済みますが、現在問題になっている30~50代の男性が罹患すると重症化する恐れがあります。

今年のように、ある程度年齢も限定されていて、家族がいる・これから子どもを持ちたい、という男性は、周囲へ感染拡大させてしまう、ということも踏まえ、ワクチン接種は積極的に行うことをおすすめします。

監修医師/小西康弘(医療法人全人会理事長)

2013年に小西統合医療内科を開院。2018年9月より医療法人全人会を設立。分子栄養学や機能性医学の最先端の知識に基づき、私たちの体が本来持っている「自己治癒力」を高める医療を提供。
豊富な臨床経験に基づいた有益な情報を発信中。

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