食事

【医師に聞く】 延びる日本人の平均寿命 抗生物質や環境汚染と向き合い、リテラシー向上を

電球の中の木

織田信長が生きた時代には、「人生50年」といわれていた、日本人の寿命。
しかし現代の50代はまだまだ元気。
セカンドステージでもうひと仕事できそうなミドル層が、どんどん増えています。

日本人の平均寿命が大きく延びた要因に「環境」があります。
今回の記事では、寿命と生きる環境、そして医学とのかかわりについて、医師に聞いてみたいと思います。

長寿記録を更新し続ける日本人

厚生労働省が2018年に公表した簡易生命表によると、2017年の日本人の平均寿命は男性81.09歳、女性は87.26歳となっています。

この数字は、過去最高。
他国と比較しても、日本女性は香港(87.66歳)に次いで第2位、男性は香港(81.70歳)、スイス(81.5歳)に次いで第3位と、長寿国家としての地位を確立しています。

ここ数年で「人生100年時代」という言葉もよく聞かれるようになりました。
それは夢物語ではなく、私たちは今まで経験をしたことのない「長寿社会」を迎えようとしています。

シニアこそ栄養バランスが大切

日本人の寿命がここまで延びている一番の要因は、栄養です。

昔に比べ公衆衛生の状態が良くなったなど、他の要因もありますが、こんなにも全体的に寿命が延びているのはそれだけでは説明できません。
最近では、シニアほど粗食ではなく高栄養のものを食べた方がいい、という説も出てきています。

食事から摂るエネルギーが不足すると、エネルギーの不足分は、本来は身体をつくるために蓄えられてきた脂肪やタンパク質を燃やしてエネルギーに変えるようになります。また、腸管の機能も低下し、体に必要なタンパク質を十分に吸収できなくなってくるのです。
その結果、高齢になると血液中のコレステロール値や総蛋白やアルブミンの値が低くなって来やすいのです。

さらに、総コレステロール値が低く赤血球の数が少ない、またアルブミン値が低いといった低栄養の高齢者ほど、認知症のリスクが高まることも分かってきました。
また全身の筋肉量は、身体機能と密接にかかわっています。
小さいときから高栄養の食事を摂ってきた年代が、高齢になってきたからこそ、全体的な寿命がどんどん延びているのでしょう。

ただし気を付けたいのは、高栄養の食事=欧米的な肉食というわけではないことです。
食の欧米化にともない、日本人には少なかった生活習慣病や大腸ガンが増えたのは事実だからです。

感染症の克服と、抗生物質の功罪

寿命が延びたもうひとつの要因に、感染症の克服があります。
抗生物質が使われるようになり、感染症で死ぬ人が激減しているのです。

たとえば、結核はほんの少し前までは「死ぬ病気」でした。しかし現代では、結核で死ぬ人はほとんどいません。

抗生剤を敵視し、飲まないことを信条としている方もいますが、人類は抗生物質の多大な恩恵を受けています。
これは医学の歴史を紐解けばすぐに分かることです。

抗生物質は風邪ウイルスには効かない

しかし最近では、抗生物質を安易に処方しすぎるという弊害も生まれています。
ちょっと風邪ひいた、のどが痛いというだけで、すぐに抗生物質に手を出す人が増えているのです。

抗生物質を過剰に服用し続けると、「薬剤耐性菌(=薬に対して抵抗性を備えてしまった細菌)」が生まれます。すると、身体自体の自然治癒力がどんどん下がってしまうため注意も必要です。

抗生剤をすぐに処方する医師の意識も、まだまだ低いといわざるを得ません。

そもそも抗生剤は細菌に対する薬であり、ウイルス性の風邪には効きません。
なんでもかんでも、風邪ををひいたと感じたら抗生剤…という治療法は大きな間違いです。

処方されるがままに抗生物質を飲む時代は終わっている

今どき、風邪で抗生物質を処方されるのは日本くらい。
それは、昭和の保険診療の弊害がいまだに残っているからです。

かつて、とにかく抗生剤を出せば医師が儲かっていた時代がありました。
今のように医薬分業ではなかったので、薬をたくさん出せば出すほど、儲けになっていたのです。

しかし今はどんな薬を出そうが、処方箋料しかもらえない仕組みができ上がり、そのおかげで本来はムダな薬の処方も減りつつあります。

もちろんそのような悪習の原因は医療業界にあります。
しかし未だ意識が古いままの医者を責めても仕方ありませんし、不要な薬を飲まされて困るのは、患者さん自身です。

だから、患者さんの方もリテラシーを上げ、
正しい知識を持って自分の身体を守る時代だと認識することが大切です。
そうしないと、せっかく抗生物質の発見や医学の進歩で延びた寿命も、違う要因で縮まってしまうでしょう。

健康維持と環境要因

ペットボトル

栄養状態が良くなり、感染症などで命を落とす人が大幅に減りましたが、これから先はどうなるのでしょうか。

内閣府公表の高齢社会白書「平均寿命の将来推計」によると、日本人の平均寿命は今後も伸びると予想されています。
今から約40年後の2060年には、男性は84.19歳に、女性は90.93歳になると予想されますから、驚きです。

しかし、私たちをとりまく環境は悪化要因が多いため、注意も必要です。

たとえば最近、海洋プラスチック問題が取り沙汰され、海に廃棄されたプラスチックゴミが生態系に大きな影響を与えていることが報道され始めました。

海洋プラスチックが未来の人体に与える影響は未知数

廃棄されたプラスチックは、紫外線や波の影響を受け、いずれ小さなプラスチックの粒子になります。

そして、マイクロプラスチックと呼ばれるその粒子は海底に沈殿し、魚の体内に入り、それをまた人間が食べ…と、目に見えない形で循環しているのです。

プラスチックは近代につくられ始めた物質です。
それが長期的に体内に溜まることで、人体にどのような影響があるかはまだ分かっていません。

危機感を覚えたさまざまな団体が、環境的な対策の必要性を訴えていますが、残念ながら海のマイクロプラスチックをすぐに除去することは不可能です。
国や企業のエゴ、利便性、経済的理由などさまざまなハードルがあり、解決はまだまだしないでしょう。

しかし、最終的にはマイクロプラスチックのような新しい体内蓄積物が、人類を滅ぼす要因にもなるかも知れません。
そうなると、世界的に延びた寿命がまた縮まる可能性も否定できません。

健康で長生きをするために、何ができるか

寿命は、延びればいいというものではありません。
人間が長く幸せに、健康に生きられなければ、数字上の平均寿命に意味などないからです。

それでは、私たちに何ができるのでしょうか。

個人レベルで考えると、何より健康に対するリテラシーを上げることが大切です。
適切に薬を選べること、そのメリットデメリットを自分で見極められること、そして、体内をできるだけクリーンな状態に保つことが重要でしょう。

科学や文明が進んで便利になった反面、現代だからこそ起きている問題もたくさんあります。
その問題から、自分の健康を守る必要があるのです。

女性のヘルシー志向をお手本に

そもそも、日本人女性の寿命が男性より長い理由には、「健康リテラシーが男性よりも高いから」という理由もあります。

女性は、ダイエットやスキンケアなどの美容や、月経・出産・更年期などの身体の変化を通じ、自身の体と向き合う機会が多く、食事やライフスタイルを見直し始める年齢が男性より早いといえます。

女性の持つヘルシー志向が「日本人の寿命」というデータに大きな影響を与えていると推測できるなら、
意識変革と毎日の積み重ねこそが、健康と長生きのポイントといえるのではないでしょうか。

まとめ

人生100年時代を迎えるにあたって、その健康を人任せにすることはおすすめしません。
長寿社会は、誰にとっても未知の領域だからです。まずは健康意識を高め、正しい知識を取ることを心がけましょう。
また、生活の中で体内に入ってくる化学物質・汚染物質をなるべく少なくすることも大切です。
日本人が、世界で一番「元気で長生き」といわれる時代が来るといいですね。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

関連記事

  1. 予防医学とは?遅れている日本の健康意識
  2. 減塩商品はイメージ戦略? お味噌汁の功罪と、食べ物の「多面性」に…
  3. リーキーガット症候群を改善する方法
  4. 「自己治癒力」を高める!川の下流で症状に悩むより、中流に目を向け…
  5. 善玉菌を増やす!発酵食品「ぬか漬け」を冷蔵庫でつくろう
  6. 最近話題のスーパーフードとは?効果ってあるの?  
  7. 健康な身体をつくる「デトックス」の意味と取り組み方
  8. 【医師に聞く】東洋医学と西洋医学の「考え方の違い」とは

特集記事

なぜ腸内環境が悪化すると肌が荒れる?原因と改善策を知ろう!

男女問わず、肌荒れやニキビに悩んでいる方は多いですね。また単なる肌荒れではなく、慢性的なアトピー性皮…

医師監修記事

  1. 子供
PAGE TOP