正しい知識

レシチンのサプリメントは、身体にいいのか悪いのか

レシチンとは、卵黄や大豆などにも含まれるリン脂質の一種。
私たちが通常の食事の中で摂取している、身体に欠かせない成分です。

ところで、サプリメントコーナーでこの「レシチン」が単体で販売されているのを見たことはないでしょうか。

「ビタミン」「カルシウム」のような、馴染みのある栄養素ではありませんから、効果を知る人以外は手に取らなさそうですね。とはいえ、大手サプリメント会社が単体販売するくらいですから、身体に悪いことはなさそう…?

レシチンは、学習能力や記憶力、アルツハイマー型認知症の予防に役立つといわれています。もし自分の身体にレシチンが不足しているのなら、飲んでみたいですよね。

そこで今回は、レシチンのサプリメントのメリット・デメリットについて考えてみたいと思います。

教えて先生!

小西康弘Yasuhiro Konishi

医療法人全人会 理事長 / 小西統合医療内科 院長

2013年より 小西統合医療内科 院長 総合内科専門医 / 医学博士

レシチンは、体内にあるリン脂質としては最も多く、私たちを構成する全細胞の細胞膜の主成分でもあります。役割は広く、副交感神経の刺激伝達や、脂質代謝、肝臓保護などに役立ちます。神経伝達物質であるアセチルコリンの材料でもあり、記憶や睡眠にも関係するとされています。

そう聞くと、身体のためにレシチンのサプリメントを飲みたくなると思いますが、安易な摂取にはデメリットがあることも知っておく必要があります。

レシチンとサプリメント

レシチンのサプリメントが販売されているのは、食事からの摂取が難しいとされているからです。

レシチンのパッケージを見てください。おそらく「頭脳によい」「健脳」または「高脂質症の方へ」などと書かれているのではないでしょうか。いつまでも健康な脳を維持したいと思う方に、「食事にレシチンを足してみましょう」と宣伝しているのです。

健康食品としてのレシチンの摂取目安は、1日100~250mg程度といわれています。
レシチンは、卵黄、大豆に多量に、含まれています。肉類・穀類にも含まれますから、普通の食事を食べていれば、サプリメントで摂取せずとも十分な量が得られていると考えられます。

レシチンは卵黄と大豆

もちろん、レシチンが身体に不足してることが明確であれば、食事もしくはサプリメントから補う必要はあるでしょう。

前述の通り、レシチンは卵黄と大豆に多く含まれます。

・大豆レシチン
血中に長く留まり、高脂血症や心臓病、動脈硬化、脳卒中など予防に優れてるとされます。
・卵黄レシチン
大豆レシチンよりも、神経系に働きかけるホスファチジルコリントという成分の含有量が多く、脳機能改善に効くとされています。

ただし、どちら由来であっても、効果や働きに大差はありません。サプリメントとして販売するときは目的別に記載する方がよく売れるため、「大豆由来」などとアピールされることが多いようです。

市販のチョコレートに入っているレシチン

レシチンは、食品添加物としても広く活用されています。身近なところでは、市販のチョコレートでしょう。パッケージの原材料欄を見ると、乳化剤としてレシチンが使われてることが多くあります。乳化剤は油と水をスムーズにつなぐ役割をする添加物で、チョコレートの口どけをなめらかにするために使われています。

一般的に物質は脂溶性と水溶性に分けられます。しかし大豆レシチンは水にも油にも溶けるという特徴を持つため、乳化剤として食品にも利用されているのです。

摂り過ぎはNG、アレルギーの可能性も

食品添加物には人工のものと、自然由来のものがあります。これらを混同し、「添加物は悪いもの」と思い込むのはよくありません。人工添加物の中でもレシチンは安全性が高いとされ、大きな健康被害や副作用のニュースは報告されていません。いくら健康によいからといって、極端に摂取すれば、身体に悪影響を及ぼす可能性は否定できないでしょう。

また、レシチンで食物アレルギーを起こす方もいらっしゃいます。実際にはこちらの方が問題になることが多いと思います。ご自身でアレルゲンを特定するのは難しいと思いますが、乳化剤の含まれる食品を食べたあとに不調が起きるようなら、アレルギーの可能性も考えてみてください。

脳はひとつの栄養素で変わったりはしない

健康のためのサプリメント活用は、予防医学としてもよいことです。しかし、脳の仕組みはレシチン摂取で改善するほど単純ではありません。大豆レシチンが認知症を予防するのではないか、という研究も行われていますが、現状の研究報告は治療効果をほとんど認めていません。

もし、物忘れが激しい、集中力や記憶力を上げたい、というニーズから脳に効くサプリメントを飲もうと思うなら、まずは専門医のアドバイスを受けてみてください。宣伝文句をそのまま信じて、飛びつくのは危険です。

あなたの「物忘れ」が本当にレシチン不足のせいなのかは、ご自身では分からないはずです。せっかく飲むサプリメントを逆効果にしないためにも、食生活改善とともに正しい判断を得てから飲んでほしいと考えています。

予防医学.jpでは、専門医によるサプリメントのご相談を受け付けております。

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