正しい知識

LDLコレステロールは本当に「悪者」なのか

とかく悪者に思われがちなLDLコレステロールですが、最近ではその摂取基準が見直されるなど、以前の常識とは違う扱われ方になってきました。

…と聞くと、驚く方も多いのではないでしょうか。

昭和時代にはコレステロールは悪だ!といわれ、卵は1日2個まで…などと指導されたものですが、研究の進歩とともにその頃の常識は大きく変化しています。

ご存じの通り、コレステロールには、悪玉(LDL)と善玉(HDL)があります。健康診断で、LDLコレステロールの数値が高い・低いと一喜一憂する人がいますが、悪玉か善玉かは単に脂質の働きの違いであり、LDLコレステロールが高いからといって、すぐに健康被害が出るわけではありません。

脂質であるコレステロールは液体ではないため、血液の中を自由に動き回ることができません。そのため、水と親和性の高い「リポタンパク」と呼ばれるタンパク質と結合して、血中を流れていきます。

LDLや、HDLとは、コレステロールと結合するリポタンパクの名称です。LDLはコレステロールを運ぶ途中に血管の壁に蓄積されやすく、逆にHDLは血管の壁からコレステロールを引きはがし、回収することから、「悪玉・善玉」と便宜的によばれているのです。

なるほど、「悪玉」という言葉に惑わされてはいけなさそうですね。
では、動脈硬化との関係はどうでしょうか。LDLコレステロールの数値が高くてヒヤヒヤしている大人は、何に気を配ればよいのでしょうか。

\\\ 本当のところを、専門医に聞いてきました ///

教えて先生!

小西康弘Yasuhiro Konishi

医療法人全人会 理事長 / 小西統合医療内科 院長

2013年より 小西統合医療内科 院長 総合内科専門医 / 医学博士

コレステロールは体内で合成できる脂質であり、私たちの身体にとって必要不可欠な物質です。

コレステロールはリン脂質とともに、細胞膜の原材料になります。細胞膜が油でできているおかげで、水溶性物質が細胞に出入りできないようになっています。細胞ごとの役割を成立させるためにも細胞膜には一定の強さが必要ですし、細胞膜が弱くなると、脳卒中のリスクが高くなるともいわれています。

全身の細胞が常に入れ替わっていることは学校で習ったかと思います。コレステロールの不足は、細胞膜を弱めるだけではなく、新しい細胞の材料不足につながります。

以前は「とにかく下げろ」といわれていたコレステロールですが、上記のような不足リスクも分かってきたため、2015年には、厚生労働省が日本人の食事摂取基準からコレステロールの上限値を撤廃しました。

気を付けるべきは活性酸素

これまでは、血管の壁にへばりついたLDLコレステロールが動脈硬化の原因になるといわれてきました。しかし近年では、動脈硬化を進めるのは「酸化したLDLコレステロール」であることが分かりはじめました。

酸化とは、体内の活性酸素によってLDLコレステロールがサビついた状態を指します。サビて血管に癒着したLDLコレステロールが、血管を詰まらせる原因となっているのです。

活性酸素とは、体内に入ってきたウイルスや細菌などから身体を守るために白血球からつくり出される物質です。しかし数が増えれば、周りの元気な細胞までもをサビつかせ、内臓や骨、皮膚など身体のあらゆる場所に悪影響を与えていきます。

細胞のサビは「老化」そのものです。動脈硬化などの病気だけではなく、美容の観点からも活性酸素を増やさない生活が推奨されています。

LDLコレステロールの数値が高い=動脈硬化ではない

体内に活性酸素が少なければ、LDLコレステロールは正常値内の働きをします。しかし活性酸素により酸化したLDLコレステロールが増えると、動脈硬化の可能性が高くなるでしょう。

実際、LDLコレステロールの数値が高くても、動脈硬化にならない人はたくさんいます。気にするべきはLDLコレステロールの数値ではなく、活性酸素の量なのです。

いい油を摂る重要性

動脈硬化を防ぐためにも、活性酸素を減らすことと、良質な油を摂ることの両面に気を配ってください。

コレステロールは体内で合成できますが、そのうち20〜30%は食事から摂取しなくてはいけません。このとき、体内に炎症を起こすような悪い油をなるべく控える必要があります。たとえばオリーブオイルや亜麻仁油などは炎症を抑える良い油ですが、酸化した油やマーガリンなどは、身体の炎症の元となります。

油は大きくは、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分かれます。できるだけ「オメガ3・6・9」といった不飽和脂肪酸を中心に摂り、細胞膜に良質な原料を届けるようにしてください。

活性酸素を増やさないことが、病気予防の要

活性酸素は生活習慣病の90%に関係しているといわれます。動脈硬化だけではなく、さまざまな病気予防の根本策でもありますから、増やさない努力が必要でしょう。

「LDLコレステロールの数値が高いのに、病気せずにピンピンしている」という人は、そもそも体内の活性酸素が少ないと思われます。逆に活性酸素が多い人は病気にかかりやすく、「健康診断では大きな問題がないのに、いつも病気がち」という状態かと思われます。

LDLコレステロールの数値は、ある程度の目安にはなりますが、とらわれ過ぎてはいけません。体内のトラブルメーカーである活性酸素を増やさず、健康な身体を維持することが、予防医学の観点からも必要といえるでしょう。

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