正しい知識
リンパ球と腸内環境の、不思議な関係
「熱が出てリンパが腫れた」
とはよく聞きますが、なぜ熱でリンパが腫れるのでしょう。
それは、リンパ節やリンパ液などのリンパ系が、全身の免疫機能に関係しているから。一時的なリンパ節の腫れは、風邪やインフルエンザウイルスや、体外から侵入してきた病原菌と、リンパ系が戦ってくれている証拠です。
「なるほど、では身体のあちこちにあるリンパ節を大切にしよう」と思った方、ちょっと待ってください!
実は、リンパ系の「元締め」ともいえる大切な場所があるようです。それは、免疫細胞でもあるリンパ球の70%が存在する「腸」だというのですが、どういうことでしょうか。脇の下や首のリンパ節の腫に、腸が関係しているなんて…何だかイメージしにくいですよね?
今回は、リンパ球の働きと、腸内環境との関係について調べてみようと思います。
\\\ 本当のところを、専門医に聞いてきました ///
教えて先生!
小西康弘Yasuhiro Konishi
医療法人全人会 理事長 / 小西統合医療内科 院長
2013年より 小西統合医療内科 院長 総合内科専門医 / 医学博士
リンパ液が体内を十分に巡ることは、健康維持にとても重要です。
デトックス機能の低下などによりリンパ液の流れが滞れば、首や脇の下などのリンパ節が腫れることがありますが、これは身体からの分かりやすいSOSといえるでしょう。
リンパ節には白血球が多く存在し、体外からの侵入者を除去する働きを担っています。リンパ球も、この白血球のひとつに当たります。
リンパ球の働き
リンパ球はさらに「B細胞(Bリンパ球)」「T細胞(Tリンパ球」「NK(ナチュラルキラー細胞)」などに分けられます。NK細胞はウイルスやガン細胞に侵された細胞を見つけて破壊するため、体内を巡回している免疫細胞です。B細胞とT細胞は、病原菌などを排除する働きを持っています。
リンパ球の正常値は、健康な成人で血液1マイクロリットルあたり1500個以上とされます。極度の栄養失調やエイズなどのウイルス感染があるとき、リンパ球は大幅に減少し、免疫力は低下します。リンパ球が少なくなるとウイルス感染だけではなく、寄生虫や真菌の感染に対する抵抗力も低下します。リンパ球の減少により感染を制御できなくなれば、命にかかわることもあるので注意が必要です。
リンパ球が最も多くあるのは、実は腸
「免疫細胞・リンパ球」は血液細部の一種類なので、骨髄に一番多くあるとイメージされがちです。白血球や赤血球が骨髄でつくられることが、広く知られている証でしょう。しかし実はリンパ球は骨髄ではなく、リンパ節で生産されます。そして腸管にはリンパ節の塊のような組織(パイエル板)が存在します。
実に、リンパ球の約70%は腸に存在しているのです。
では、なぜ消化管に一番リンパ組織が多いのでしょうか。それは、食事などを通じて外からの異物に接する機会が最も多いのが、消化管だからです。いつ異物やウイルスが入ってきても対抗できるよう、免疫力を消化管に結集させているとイメージしていただけば、分かりやすいでしょうか。
ちなみに消化管の次にリンパ組織が多いのは、咽頭部や肺組織です。これは呼吸をするときに入ってくる異物をブロックするためです。
パイエル板の働き
前述の「パイエル板(リンパ小節が結集した組織)」は、腸管特有の免疫組織です。パイエル板はM細胞という特殊な細胞を持ち、侵入してきた細胞を捕獲し、抗体をつくったり感染を防いだり、という重要な働きをしています。
リンパ球やM細胞と連携し、働きを維持しているのが、100兆個以上あるともいわれる腸内細菌です。あなたの腸内細菌の種類が豊富で、善玉菌・悪玉菌・日和見菌がバランスよく腸内フローラを形成していれば、リンパ球をはじめとする免疫細胞が活性化し、外部から侵入した病原菌やウイルスから身体を守ってくれるでしょう。
腸内環境と免疫
「免疫力を高めたければ、腸内環境をととのえましょう」といわれる理由は、まさにここにあります。
腸内環境のため乳酸菌を飲む人が増えていますが、乳酸菌の細胞壁にある免疫増強因子は、腸内のTリンパ球・Bリンパ球を刺激し活性化します。だからシンバイオティクスなどの「腸活」は、健康維持にとても大切です。
まずは腸内環境をととのえ、リンパ球を減らさないこと。腸内環境が改善されれば、花粉症やアトピー性皮膚炎などはかなり改善します。実際に、当院で治療中の方で、おまけで花粉症が治ったという方もたくさんおられます。
もし慢性的なアレルギーに悩んでいるなら、腸内環境と、免疫力向上を視野に入れた対策を取ってみてください。身体のあちこちの不調が、一気に改善するかもしれません。
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