先生に聞いてみた!
【先生に聞いてみた!】ヴィーガンは本当に不健康なの?
あ、ここのカフェにもヴィーガン対応のランチプレートがある!
最近、急に増えてきたね。ゆきはそれにするの?
私は和牛のローストビーフ丼にしようかな〜。
う…うん。
私もローストビーフにしようかな…。
無理しなくていいのよ!自分の好きなものを食べてね。
うーん、カレイの唐揚げ黒酢あんかけ定食も捨てがたい…
なんかいじわるしてる!?
私だって、和牛もカレイの唐揚げも食べたいよ〜
食べたらいいじゃない!
どうせ大した信条もなく、ファッションで菜食主義してるんでしょう?
そ、そんなことないよ。肉や魚を食べなくても、きっと栄養は取れるし…たぶん健康になるし…長生きしたいし…
歯切れ悪いわね!
残念ながら、ヴィーガンをはじめとするベジタリアンの人が長寿とは限らないみたいよ。
え、ええ〜!?そうなの?
とってもヘルシーで健康的な食事だと思っていたのに…。
美容と健康情報が大好きな会社員。
新しいものに飛びつきがちだが、たいてい3日坊主。
スイーツ、パン、パスタと演劇、ドラマが好き。
分からないことは調べたいライター。
いつも取材に飛び回っている。
お酒と旅行とファッションが好き。
私だって健康で長生きしたいです。
だからちょっとまじめに考えてみましょうか。
ヴィーガンとベジタリアンは短命?
ファッション感覚ではなく、深く栄養について知り、バランスを取りながらヴィーガン食を実践している方も多くいます。結果、健康を手に入れた方もいるでしょう。しかし「ヴィーガンをはじめ、ベジタリアンは短命」という説があるのも事実です。
有名なところで、スティーブ・ジョブズ氏の例があります。惜しまれて世を去ったジョブズですが、ベジタリアンで、ガンになったあとも果物と野菜しか食べない生活を徹底していたといいます。もちろん彼の死因を「ベジタリアンだったから」に求めるのは乱暴ですが、食生活はそれほどに人の人生を左右します。
ジョブズは厳格なヴィーガンだったわけではなく、魚介類は食べていたようです。お寿司が好きだったことは知られていますね。
ヴィーガンやマクロビの食事に潜むリスク
SNSやネット記事には「ヴィーガン食で健康になりました」という情報が多く存在します。気を付けたいのは、その「健康になった」という結果情報だけを信じてしまうこと。健康とは画一的なものではありませんから、たとえ本人が元気だと主張しても、人体の仕組みとしてバランスが崩れている可能性はあります。
野菜や果物、大豆などでカラフルに調理された食事は、とてもヘルシーな見た目で私たちを誘いますが、本当に健康にいいのか…という部分を置き去りにしてはいけません。
見た目のいい食事が、必ずしも栄養的にばっちりではないということですね…
たとえばマクロビオティックでは、食材を陰と陽に分類し、バランスよく食べることが大切とされています。しかしその分類は、栄養素という基準で分けられたものではありません。陰陽のバランスがよくても、人体に必要な栄養のバランスが崩れている可能性はあるでしょう。
野菜中心の食事は、鉄分やビタミン不足につながり、疲労や貧血の原因に直結します。肉を食べなければ「トリプトファン」という必須アミノ酸も不足し、セロトニンの生成が阻害されます。もし最近イライラする、精神が安定しない…という方がいれば、食事のせいかもしれません。
お肉を食べたあとの幸福感は、気のせいじゃないのか…。栄養スゴイ!
ヴィーガンに不足しがちな栄養素は、やっぱり肉や魚に入っている
摂取栄養素には個人差があるため一概にはいえませんが、ヴィーガンや菜食主義者に不足しがちな栄養素として、タンパク質、オメガ3脂肪酸、ビタミンB12、ビタミンD、カルシウム、亜鉛、鉄分などがあげられます。これらは、肉や魚などの動物性タンパク質を食べていれば、ある程度補える栄養素です。
代替肉として使われる大豆や豆腐に含まれるタンパク質は、実は意外と少ないことも知っておくべきです。
特に豆腐は80%以上が水分ですから、十分にタンパク質を摂ったとはいえないようです
短命かどうかは、歴史が判断する?
人々の健康意識が上がったことは、よいことです。現代の食事には不健康なものがたくさんあることも事実。しかしほんの100年前の食事を考えてみましょう。日本人は玄米と菜食が中心の食生活を送っていました。戦後になり食事は欧米化しましたが、結果、寿命と平均身長はどんどん伸びました。これは明確な事実です。
いまヴィーガンを徹底している方たちの寿命について、データが出揃うのは、もう少し先になるでしょう。どうしてもヴィーガン食を続けたい…という方は、「自分にとっての健康とは、何だろう」ということを、一度考えてみてはいかがでしょうか。
教えて先生!
小西康弘Yasuhiro Konishi
医療法人全人会 理事長 / 小西統合医療内科 院長
2013年より 小西統合医療内科 院長 総合内科専門医 / 医学博士
先生、現代的な食事には栄養過多というデメリットもありますが、寿命という観点で見ると、栄養はしっかり摂った方がいいということでしょうか。
ベジタリアンブームは、野菜類をしっかりと摂るメリットもさることながら、ジャンクフード、ファーストフードが好まれる現代社会に対しての一種の「アンチテーゼ」という意味合いもあるような気がします。「このままの生活ではダメだ!」という危機感のあらわれかもしれませんね。
極端に肉食やファーストフードに偏るのはもちろん有害で、生活習慣病の原因になることは明らかです。しかし、逆にベジタリアンに偏りすぎるのも栄養不足の原因になるように思います。
大切なのは、極端な肉食でも極端な菜食でもなく、それぞれの栄養学的な長所は短所を知って、バランスよく、楽しく食事をを摂ることではないでしょうか。