先生に聞いてみた!
【先生に聞いてみた!】私たち世代も知っておきたい、インフォームドコンセント
おばあちゃんのお見舞いに行ってきた。
あら、大丈夫?
うん、今すぐ命にかかわるわけではないんだけどね、ガンだっていうことを本人には隠していて…もう話を合わせるのに必死!
告知しないの?
告知するための相談を、お父さんたちとドクターがしている間、私がおばあちゃんと2人きりよ…そんな大事な場面、私に任せる!?
親御さんから信頼されてるじゃない。
私にそんなストレスかけないでほしいわ。
あれがドラマなら、何かの偶然が重なって、本人にバレて場面転換してたよ。
で、おばあさんは何ガンなの?
えーと何だっけな…?
そもそも聞いたかな?
インフォームドコンセントの現場に、こんな危なっかしい人を入れてはいけませんね!
美容と健康情報が大好きな会社員。
新しいものに飛びつきがちだが、たいてい3日坊主。
スイーツ、パン、パスタと演劇、ドラマが好き。
分からないことは調べたいライター。
いつも取材に飛び回っている。
お酒と旅行とファッションが好き。
インフォームドコンセントって何?
おばあちゃんに関係あった?
インフォームドコンセントとは
インフォームドコンセント(informed consent)とは、医療現場での「説明を受け、納得したうえでの同意」をさす言葉。ガンに限らず、患者さんがどのような病名で、自分の身体に何が起きているかなどを理解し、検査や治療方針を選択することをいいます。
調剤薬局で薬剤師さんからお薬を受け取るとき、副作用や成分を説明されますよね。あれもインフォームドコンセントです。自分の治療について正しい理解と納得を求められます。
聞いても覚えられないから、聞き流していたけど…大切なことだったんだ。
インフォームドコンセントの重要性
たとえばガンも20年前は「不治の病」であり、選択肢も少なく、ほとんどが切開手術でした。しかし現代では医療技術も進歩し、同じガンであってもその治療法は多岐に渡ります。
抗ガン剤や放射線治療にも多くの種類があり、その効果や副作用について本人が知らなければ、長期的に治療に励むこともしにくいでしょう。
乱暴ないい方ですが、昔のガンは「ほぼ死ぬ病」だったので、告知や治療の必要性も低かったということです。対して現在は、ガンも「生きられる病」。治った先のことを考えても、本人の理解と納得は必須です。
インフォームドコンセントが行われないケース
インフォームドコンセントは「何でもかんでも本人に伝える」ことではありません。
たとえば乳幼児への予防接種や、未成年の病気の場合は、保護者が治療を判断します。救急搬送で一刻を争うなど、説明をしている時間がないときも、治療を優先して説明を事後に行うことも多くあります。
本人に意識がない、認知症、また本人の精神状態により告知が状況悪化を招きそうなときは、家族や代理人の同意の元に治療が行われます。
確かに、交通事故で救急車で運ばれているときに、薬の理解と判断なんてできない!
インフォームドコンセントは、信頼の上に成り立つ
重病のときのインフォームドコンセントは、つらい時間をつくることになるかもしれません。しかし医師や薬剤師と話し合い、信頼関係を築き、自分の病気と向き合う機会でもあります。不安は病状悪化を招きますから、メンタルを安定させるためにも治療方針を理解することが大切といえるでしょう。
昔はよく分からないまま、もらった薬を飲むことが当たり前でしたが、それがナンセンスな時代が来ていますね。
また、複数の治療法があるとき、両方について説明を受けた後に治療方法を選択することをインフォームドチョイスといいます。すでに、医師が勝手に治療法を決める時代ではなくなっています。現代は「患者さん主体の医療」であることを理解し、自身や家族の病気に向き合っていきましょう。
初めて聞く話ばかりでした!
おばあちゃんがよく分かってなかったら、説明してあげられるようにしよう。
教えて先生!
小西康弘Yasuhiro Konishi
医療法人全人会 理事長 / 小西統合医療内科 院長
2013年より 小西統合医療内科 院長 総合内科専門医 / 医学博士
先生、まだまだ元気な私たちですが、インフォームドコンセントについてもう少し知っておきたいと思います。
日本でも権利意識が成熟し、知らないままでは済まない時代になりました。病名を告知しないと、患者さんから訴えられてもおかしくないような社会になってきたといえます。
「インフォームドコンセント」という概念も、国民の権利意識で変わってくるということですね。たとえガンであっても、本人やあるいは家族にきちんと伝える必要が大切なのはいうまでもありません。昔のようにはいかないのです。
先生のこぼれ話…
インフォームドコンセントは、そもそも西洋から輸入された概念で、日本には存在しなかったといってもいいでしょう。「医者にかかったら、すべてを主治医に任せる」のような雰囲気が日本にはありました。
西洋は、よい悪いは別にしても契約社会ですから、相手に病状を知らせないという発想がそもそもないわけです。その裏には、相手に病状を伝えることによって、自分にかかってくる責任を回避しているという面もあります。
それに対して日本はとてもウェットで、お互いに気遣いしあう社会です。医者も患者さんに辛い気持ちを味あわせたくないという「気遣い」から、ガンなどの病名を知らせないまま最期を看取ることが許されてきたわけですね。