正しい知識

東洋医学と西洋医学の違いと、併用のすすめ

東洋医学では「同病異治(どうびょういち)」という考え方が重視されます。人にはそれぞれ違う体質があり、症状のあらわれかたも異なるため、同じ病気であっても治し方は異なりますよ、という考え方です。

東洋医学と西洋医学の違いを簡単にいいあらわすと、
「体質を診る東洋医学」
「症状を診る西洋医学」
ということになるでしょう。

しかし私たちが病気になったとき、総合病院やクリニックで受ける投薬や手術は、ほとんどが西洋医学の治療です。症状に対する検査を行い、風邪なら咳やくしゃみに対して、その症状をおさえる薬が処方されます。

それで治ればいいのですが、病気は「インフルエンザ」「胃がん」などの分かりやすいものばかりではありません。原因不明の胃腸炎、自律神経のせいと思われるめまいや頭痛、休むほどではないけど辛い心身の不調…名前の付かない症状に苦しんでいる方は多いでしょう。

そんなときに気になるのが東洋医学や漢方治療です。どうやら、西洋医学では治りにくい症状を和らげてくれると聞きますが、それは本当でしょうか。東洋医学と西洋医学は、いったい何が違うのでしょうか。

\\\ 本当のところを、専門医に聞いてきました ///

教えて先生!

小西康弘Yasuhiro Konishi

医療法人全人会 理事長 / 小西統合医療内科 院長

2013年より 小西統合医療内科 院長 総合内科専門医 / 医学博士

東洋医学では、かかりやすい病気の傾向を知るための区分として「虚証(きょしょう)」の人と、「実証(じっしょう)」の人に分けて治療を行います。同じ風邪の症状が出ていても、虚証と実証の人では、出す漢方薬の種類は変わります。

虚証の人に実証の薬を出してしまうと、体質に合わないため治りにくく、最悪、副作用が出てしまうこともあります。

一方西洋医学では、体質に関係なく症状にフォーカスした治療が行われます。どのような症状で、熱は何℃あるのか、重篤な合併症を起こしていないか…などを検査し、症状に合わせた薬を出し、必要ならば外科的治療を行います。

病気の診断方法の違い

東洋医学で、体質や病気を見立てるときに重要視されるのは、舌診や脈診です。
西洋医学の脈診では脈の速さしか取りませんが、東洋医学では脈の速さだけではなく、リズムや強さなどまでが診断の対象となります。

西洋医学での一番の判断基準は、血液検査などの科学的検査です。科学的データに基づいた数値や状態から、その人の症状の程度や病名を見立てます。

東洋医学でも西洋医学でも、共通する重要な要素は問診です。最先端の西洋医学であっても、検査データには出てこないことは山ほどあるからです。

検査と治療が得意な西洋医学だけど…

しかし肺炎など感染症にかかったときは、体質などといっていられません。胸部レントゲン検査を行い、重篤な合併症を起こしていないかを即時に判断しなければいけません。そして、適切な抗生剤投与が行われます。

近年では内視鏡やエコー、CTスキャンなどの医療機器の発展はめざましく、以前は命を失っていた病気も、早期発見、早期治療ができるようになりました。製薬技術も西洋医学の大きな功績です。

このように、具体的な病気発見と治療に関しては、西洋医学に軍配が上がるケースが多いでしょう。

しかしそれは、あくまで「病気にかかったあと」の話です。現代日本では、まだまだ病気予防の意識が高いとはいえず、病気になってから病院に行くことがほとんどです。しかし投薬や手術で完治しない病気も多くありますし、そもそも検査を繰り返しても病名や原因がはっきりしないケースも、稀ではありません。

俗にいう「医者にさじを投げられた」状態になってはじめて、東洋医学の門を叩く方が多いのですが、本当はもっと早く、病気予防として活用することが求められます。

原因不明の慢性疾患は、併用を

実際、西洋医学がいくら進歩しても、治せない慢性病に苦しむ方が後を絶ちません。東洋医学的には「未病」といいますが、病名は付かないけれど、発病には至らないものの軽い症状がある状態です。
これには、軽いうちに異常を見つけて病気を予防するという考え方が大切でしょう。肩こりや生理痛、軽い不眠など、命には関わらないため重要視されない症状もQOLを下げますし、いずれ大きな病気につながる可能性を秘めています。

さらには、慢性疾患、アレルギー疾患などは、単に症状を和らげるという観点だけではなく、根本的な体質を整えるという視点からの治療が必要だと思います。

東洋医学と西洋医学のそれぞれ良いところを取り入れましょう。西洋医学で症状を和らげながら、東洋医学で根本的な体質改善を行うというのも一つの医学の在り方かも知れません。

東洋医学と西洋医学のどちらか一方を、過信したり否定しないことも大切です。得意分野をうまく使い分けられる医師も増えています。原因不明の慢性疾患だからと諦めず、専門家のアドバイスを聞いてみてください。

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