普段からできること
市販の栄養ドリンクに意味はあるのか
栄養ドリンクとは、疲れたときの栄養補給などを目的として販売されているドリンクです。最近ではエナジードリンクという呼び方も定着してきました。疲労時だけではなく、風邪などで栄養を摂りたいときにも飲まれます。
市販の栄養ドリンクは、含まれる成分とその含有量によって、以下のように分類されています。(特定保健用食品は除く)
- ①医薬品(※医療用医薬品ではないため、医師の処方箋は不要)
- ②医薬部外品
- ③清涼飲料水(※食品衛生法に基づいて運用される食品の一種。効果効能や、用法・容量を表示できない)
コンビニや薬局で気軽に購入できるメリットがありますが、効果効能や医薬品に関する知識はあくまで自己判断です。効果を実感できたのならいいのですが、もしかしたら、知識なく飲み続けることで逆効果を招いているかも知れません。
果たしてあなたが飲んでいるその栄養ドリンク、本当に、いま飲む必要があるのでしょうか…
\\\ 栄養学の専門医に、本当のところを聞いてみました ///
教えて先生!
小西康弘Yasuhiro Konishi
医療法人全人会 理事長 / 小西統合医療内科 院長
2013年より 小西統合医療内科 院長 総合内科専門医 / 医学博士
今の日本で栄養失調状態になることは、ほとんどあり得ません。本当にそのような状態なら、頼るべきはドリンクではなく医療機関です。
高価な栄養ドリンクには、タウリンやビタミンなどの必須アミノ酸や、カフェイン・漢方由来成分などが凝縮して入っていますから、栄養失調状態の人が飲めば、緊急対応としての効果はあるでしょう。しかしそれ以上でもそれ以下でもありません。
食事が一番
皆さんが栄養ドリンクを購入するときは、栄養失調状態からの回復ではなく、「もう少し仕事を頑張りたい」「寝ずに試験勉強をする」という、身体に負荷をかけるときの補助的役割を期待していると思います。
しかし栄養ドリンクに配合されている栄養は、日々の食事から摂ることが可能です。決して、そのドリンクにしか含まれていないというわけではありません。本当にあとひと踏ん張りしたかったら、主食・主菜・副菜・汁物が揃った和定食を食べる方が総合的には効果的なはずです。
栄養ドリンクの成分
飲む前に、栄養ドリンクの成分表を見てください。
栄養ドリンクには主に
- タウリン
- カフェイン
- アルコール
- アルギニン
- 糖類
- ビタミン類
などが含まれていますが、これらは決して魔法の栄養素ではありません。人工的に化合された、「一時的な対処」のためのものです。
もちろん日本が認可した飲み物ですから、一定の危険性は排除されています。しかし化学物質や添加物が凝縮したものを、体内にあえて入れる必要があるのか、今一度考えてみてください。
さらに、飲みやすい商品には糖質が多く含まれています。糖分の多い飲み物は一時的に元気にはなりますが、急激に血糖が上がる可能性があるため、注意が必要です。
栄養度ドリンクの過剰摂取リスク
栄養ドリンクは、飲み過ぎたときのリスクが大きい商品です。
【栄養ドリンクの飲み過ぎによるリスク】
- アルコールやカフェインの依存症になる可能性がある
- アルコールやカフェインが、今飲んでいる薬との飲み合わせが悪い可能性がある
- カフェイン過剰摂取で、不整脈、心拍数増加、嘔吐、睡眠障害や頻尿などの症状 が出やすい
- 肝臓への負担が大きく、効果が切れたあと疲労感が増すことが多い
- 糖分が含まれている商品が多く、毎日飲むことで糖尿病や肥満のリスクがある
- アメリカでは過剰摂取での死亡事故が確認されている
特に若い世代は注意が必要です。瞬間的な元気のために将来の健康を損なってしまっては、飲む意味はないでしょう。
カフェインの覚醒効果に注意
たとえばエナジードリンクをはじめ、多くの栄養ドリンクに含まれているカフェイン・アルコールですが、「飲むと目がさえて、体力が回復した」と感じる理由は、決して疲労のもとが消えたからではありません。カフェインの覚醒作用やアルコールの気分高揚効果で、疲れを感知できない状態にしているだけです。
カフェインは一時的に脳血管を収縮させ、鎮痛作用を持つため「元気になった」と錯覚しやすいのですが、カフェインが切れると脳血管は拡張し、痛みや不調を感じやすくなります。
自分で自分の疲れを認識できない、という状態はとても危険です。服用は「ここ一番」というときだけに留め、栄養ドリンクの日常飲用を控えてみてはいかがでしょうか。
ドリンクよりも、マルチビタミンミネラルのサプリメントを
疲労回復や健康のためには「食習慣を改める・ゆっくり睡眠を取る」ことが大切だと、頭では知っているはずです。しかし「そんなことができないから、栄養ドリンクを飲んで頑張っているんだよ!」という方が多いのも事実です。
疲れを取る目的ならば、栄養ドリンクよりも、マルチビタミンミネラルのサプリメントがおすすめです。栄養はバランスが重要ですから、瞬間的な効果よりも身体のためを考えてください。ドリンクよりもコストがかからないという利点もあります。
ただし、サプリメントの品質には注意が必要です。長期的に服用するなら、ドクターズサプリメントなども検討してください。
栄養ドリンクに頼らなくていい身体を
医師がどうして「規則正しい食生活を」と口を揃えていうのかを、今一度考えてみましょう。栄養は健康の基本中の基本です。栄養ドリンクに頼らなくてもいい身体は、日常生活の中で十分に作れます。
忙しい人こそ栄養ドリンクに頼らず、「自己治癒力の高い身体づくり」を意識してください。将来的に、病気になりにくく「健康負債」の少ない身体を作ることが、今頑張っている勉強や仕事を活かす元となるはずです。