正しい知識

健康診断で把握する、未来の病気のリスクファクター

皆さんは、健康診断にどのような印象をお持ちですか?

健康診断は希望者が受けるものではなく、「労働安全衛生法」という法律で義務付けられているとご存知の方は少ないかも知れません。しかし健康診断が法律上でも重視されているのは、大人の健康がそれほどに日本社会に影響を与えるからですし、個人の未来の病気リスクを知るための、大切な機会でもあるからです。

忙しいから、まだ病気にはなっていないから…という言い訳をして、生活改善できていない社会人も多そうですが、1つでも項目に異常値がある人は他の項目でも危険なケースが多く、動脈硬化や、心筋梗塞・脳梗塞につながりやすいともいわれています。

今年の健康が、ずっと続く保障はありません。そう考えると、会社で義務的に受けさせられる健康診断は、「いま病気ではない人」が自分の生活を改めるきっかけとして有効ではないでしょうか。

\\\ そこのところ、専門医にもっと詳しく聞いてみましょう ///

教えて先生!

小西康弘Yasuhiro Konishi

医療法人全人会 理事長 / 小西統合医療内科 院長

2013年より 小西統合医療内科 院長 総合内科専門医 / 医学博士

健康診断で行われる検査で病気をすべて発見できるかというと、そうではありません。

たとえば胸部X線検査を撮ってさえいれば、肺ガンが必ず見つかるわけではありません。実際に胸部X線検査で見つかる肺ガンは、全肺ガンのうちの30−40%程度だといわれています。それだけ健康診断で行われる胸部X線検査には死角が多いということです。

本気で肺ガンを見つけるならCTスキャンを撮る必要がありますが、すべての健診者にCTを受けさせるのか…という問題になると、費用や時間、X線被ばくのリスクなども出てくるため、現実的ではありません。

しかし「それなら健康診断に意味はない」と勝手に判断するのは早計です。健康診断の有効性についてはさまざまな議論がありますが、それは「健康診断が意味がない」ということではないからです。

リスクファクターとは

医師の立場から見る健康診断の目的は、リスクファクターの把握にあります。
リスクファクターとは、ある病気に関係する「危険要素」を指します。現状、病気ではなくても、「喫煙をする」「体重が増えた」「血圧が高い」などの個別の要素は、未来の病気に結びつく可能性があるため早期の把握が必要です。

データが示す、病気になるリスク

たとえば、脳梗塞のリスクファクターは「高血圧・糖尿病・喫煙・飲酒」など、多数に及びます。
もちろん、全リスクを抱えていても脳梗塞にならない人もいるでしょう。逆に、全くリスクがなくても脳梗塞になる人もいます。それが、健康診断が有効かどうかについて議論が起こる理由かも知れません。
しかし「脳血管疾患の約7割は血圧管理で予防できる可能性がある」というレポートが示すように、多大なデータから「高血圧の人が脳梗塞になる確率は、そうではない人より〇割高い」という統計的な判断を下すことは可能です。あくまで確率が高いかどうかを見るものであり、当てものではないと認識すべきでしょう。

健康診断の結果は中長期的な視点でみることが大切

健康診断で気になる項目があったら、リスクファクターを取り除く生活を送りましょう。その結果は、来年の健康診断で現れます。身体はすぐには変わりませんから、中長期的な視点での生活改善が必要です。

そのとき注意したいのは、極端な自己流の対策を取らないことです。

肝機能の数値が異常に高ければ、単純に「お酒を控えよう」と考えがちですが、肝臓を疲れさせるのはアルコールだけではありません。日常的に飲んでいる鎮痛剤や胃薬などの医薬品も肝臓で処理されるため、薬の飲みすぎは肝機能に影響を与えます。禁酒という対策が本当に効果的かどうかは、その方の生活を総合的に見なければ分かりません。

専門家のアドバイスを受ける重要性

自分のリスクファクターに対してどう行動したらいいか分からない場合は、ネットの情報や自己判断に委ねず、医師からアドバイスをもらってください。会社の健康診断では、結果によって産業医の診察機会があったり、生活習慣見直しのプログラムに参加できたりするはずです。

忙しい社会人が健康改善で成果を出すには、効率も必要です。あなたのとって優先順位の高い対策が運動なのか、禁煙なのか、ストレス環境からの脱却なのか…専門家に導いてもらえば、最短距離が見つかるでしょう。

診断結果を予防医学に生かす

健康維持は、仕事を含む人生全体の再重要項目です。

会社にとっても、健康的にで働いてくれる社員の存在は業績以上に大切なはずです。「面倒だから・若いからまだ大丈夫」と健康診断結果をおろそかにせず、自身のリスクファクターを認識し、来年の健康診断に備えた健康行動を取ってみてください。それこそが、予防医学の実践です。

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