正しい知識
トクホは効くの?効かないの?
「結局、トクホは効くの?効かないの?」
ネット上にはさまざまな評価や口コミが流れています。
「気休めに飲んでいる」という方もいらっしゃいますが、気休め効果しかないものがトクホに認定されるほど、日本は甘くはありません。トクホマークの取得は、私たちが想像する以上に大変です。メーカーも大きなお金が必要ですし、認可されるまでは相当な時間もかかります。
それでも各メーカーがトクホの取得に向けて力を注ぐのは、それなりのメリットがあるから。
トクホマークの付いた食品では、原則として国が認めた表現を使えば、他の食品ではできない効果アピールが可能です。「糖の吸収をやわらげる」「脂肪の吸収をおさえる」という効果を明確にうたった表示ができますから、健康を気にするユーザーの心を捉え、多少割高であっても「よく売れる」のでしょう。
購入する側の私たちも、ほんの少しお金を足すだけで生活習慣病のリスクが減らせるのなら、活用しない手はありません。
でもやっぱり気になる、「効く・効かない論争」。果たして医師から見たトクホ商品とは、どのようなものなのでしょうか。
\\\ 本当のところを、専門医に聞いてみました ///
教えて先生!
小西康弘Yasuhiro Konishi
医療法人全人会 理事長 / 小西統合医療内科 院長
2013年より 小西統合医療内科 院長 総合内科専門医 / 医学博士
トクホとは「特定保健用食品」の略語で、有効性、安全性などの科学的な根拠を示し、消費者庁の許可を受けた食品を指しています。トクホが制定されたのは1991年ですから、すでに20年近くの歴史を持ち、「バンザイマーク」で一般的に知られています。
同じ食材の商品であっても、片方にトクホマークがあり、片方になければ、マークがついている方が選ばれやすくなるのはある意味当然です。しかしトクホはあくまでも「食品」です。医薬品ではありませんから、当然、病気は治せません。
健康食品の4つの分類
トクホを含む健康食品には、4つの分類があります。
①トクホ
有効性、安全性などの科学的根拠を示して、国の審査のもとに消費者庁の許可を受けた食品。
②栄養機能食品
消費者庁が定める、特定の栄養の補給のために利用される食品。たとえばビタミンやミネラルなど、過去に多くの研究が行われ「体内での働き」が分かっている栄養素が決められた分量入ることで、パッケージに「栄養機能食品」と記載できる。現在では20種類の栄養成分が対象となっている。
③機能性表示食品
メーカーの責任範囲で、効果があるという科学的根拠をパッケージに表示し、それを消費者庁に届け出た食品。届け出された情報は、消費者庁のサイトで公開されている。
④いわゆる健康食品
上記に当てはまらない、医薬品成分を含まないが健康の保持促進に役立つとされている食品。
トクホにある「脂肪の吸収をおさえる」といった表記は、いわゆる健康食品では法律上絶対に書けません。だからこそ、消費者のニーズに直接応えるためにも、トクホの認可申請をするメーカーが多いのです。
ただし使える表現には厳しい規制もあります。他の健康食品のように「個人の感想」や「体験談」を宣伝に使用してはいけない、という決まりもあります。
トクホは商品ベース。賢く選ぶことが大切
トクホは、安全性や機能性において国の認可があるという面では、安心できるでしょう。ただしトクホは医薬品ではありませんから、薬と同じ効果は期待できませんし、飲んでいるからといって暴飲暴食をしてもいい理由にはなりません。
知っておいて欲しいのは、トクホはあくまで「マーケッティング上の戦略」であることです。トクホを取るために最初に多少お金がかかっても、他社の製品と差別化することで、よく売れるようにするという会社側の事情ということです。ここまで言ってしまうと身も蓋もありませんが。。。
たとえばA社とB社がまったく同じ成分の商品を開発したとします。A社はトクホを取得し、B社は申請をしなかった場合、A社の商品だけが「トクホ」として販売されますが、内容はまったく一緒…というケースもよくあるのです。
まずは生活習慣の見直しを
トクホを取得するかどうかは、メーカーの自由です。トクホを取得していなくても、同じくらいの効果が期待できる商品も存在します。トクホ活用で必要なのは、メーカーの努力だけではなく、購入する側の「賢く商品を選ぶ目」でしょう。
医師としては、「これを飲んだら健康になる」という即効性のある食品などない、とお伝えしたいです。本当に健康に気を使うなら、トクホの「効く・効かない」よりも、自身の生活習慣の見直しをすべきではないでしょうか。不健康な食生活の人がせっせとトクホ商品を飲んだって、それこそ気休めにしかなりませんから。