正しい知識
効率よく腸内環境を整える、シンバイオティクスとは?
健康のベースとしての「腸内環境」に大きな注目が集まっています。
単にヨーグルトを食べればいいのではありません。腸内環境を本当に改善しようと思うなら、「これ以上悪くしない」ことと、「さらに良くする」ことの両面からのアプローチが必要です。
【腸内環境をこれ以上悪化させない】
・ジャンクフードや添加物たっぷりの食事など、腸に負担をかける食事を避ける
・ストレスをなくす(腸内環境は精神的不安やイライラなどでも悪化します)
【腸内環境をさらに良くする】
・食生活を見直し、腸内環境改善に役に立つものを食べる
・適度な運動や、規則正しい生活を送り、自律神経のバランスを整える
どうでしょう。上記がすべてできている方は、いらっしゃらないのでは?
そもそも自分の腸内を見ることはできないので、「これ以上」とか「さらに」といわれたって具体的なイメージはしにくいですしね。
そこでおすすめなのが、シンバイオティクスという考えに基づいたアプローチです。「どうせ手間をかけるなら、しっかり腸内の善玉菌を増やしたい」という、コスパと効率重視なあなたにピッタリの方法ですから、ぜひ取り組んでみてください。
\\\ シンバイオティクスについて、専門医にきいてきました ///
教えて先生!
小西康弘Yasuhiro Konishi
医療法人全人会 理事長 / 小西統合医療内科 院長
2013年より 小西統合医療内科 院長 総合内科専門医 / 医学博士
シンバイオティクスは、「腸内環境をさらに良くする」ための手段です。
シンバイオティクスの「シン」は協力してという意味の接頭語である「Syn」、シンフォニーの「シン」です。シンバイオティクスは1995年に英国の微生物学者Gibsonによって提唱された比較的新しい考え方ですが、有効性が認められ急速に一般化しています。
プロバイオティクス+プレバイオティクス=シンバイオティクス
腸内環境の改善には、これまでも多くの方法が提唱されてきました。
すでに身近な方法には
- ヒトにとって有用な生きた善玉菌を摂取する(プロバイオティクス)
- 善玉菌のエサになるオリゴ糖・食物繊維を摂取する(プレバイオティクス)
があげられます。
シンバイオティクスは、上記2つの「いいとこどり」をする方法です。プロバイオティクスとプレバイオティクスをバランスよく食べたり、あるいは双方を含む食事や機能性食品を摂取して腸内環境にアプローチすれば、さらなる効果が期待できるでしょう。
プロバイオティクスの役割:有用菌を届ける
善玉菌そのもの、または死んだ善玉菌を体内に数時間滞在させて、腸内環境を整えます。プロバイオティクスは「腸内フローラのバランスを改善し、宿主に有益な作用をもたらす生きた微生物」と定義されています。
日常で摂取する機会が多いプロバイオティクスは、乳酸菌とビフィズス菌です。サプリメントや飲料で手軽に摂れますが、安全性が証明された株菌であることが重要です。
プレバイオティクスの役割:有用菌を育てる
有用菌である善玉菌を増殖させ、活性化して腸内環境を整えます。消化・吸収されずに大腸まで到達し、そこで有用菌に利用されるものがプレバイオティクスと呼ばれます。ビフィズス菌などの有用菌のエサとなるオリゴ糖や、食物繊維がよく知られています。
プレバイオテクィクスに分類される食物繊維には、不溶性と水溶性の2タイプがあります。どちらの食物繊維も腸内の善玉菌のエサとなり、便通改善などに役立ちます。
食物繊維が変化してできる短鎖脂肪酸とは
近年の研究では、水溶性食物繊維は大腸まで消化されずに到達し、身体にとっていい影響を与えてくれる栄養素である「短鎖脂肪酸」に変わることも分かってきました。
短鎖脂肪酸のはたらき
- 免疫力を向上させる
- 血糖値上昇を抑制する
- 悪玉菌の増殖を抑え、善玉菌を増やす
- 炎症を抑える物質を発生させる
- 大腸内の有害菌増殖を抑える
- 肥満を抑制する
- 肝臓や筋肉・腎臓の栄養源として利用される
短鎖脂肪酸が増産されれば腸内環境が整えられ、病気リスクが軽減します。「短鎖脂肪酸」の役割が分かってきたのは1990年代と最近です。医学は日々進歩していますから、健康のためにも新しく正しい情報を得て、生活に活かしてください。
シンバイオティクスを考えたときに摂取すべき食べ物
シンバイオティクスで効果を実感するには、プロバイオティクスの食材と、プレバイオティクスの食材をバランスよく食べる必要があります。
プロバイオティクス
乳酸菌…ヨーグルト、酒かす、納豆
ビフィズス菌…ぬか漬け、味噌
プレバイオティクス
オリゴ糖…キャベツ、玉ねぎ、にんにく、ゴボウ
水溶性食物繊維…豆類、寒天、海藻類、
不溶性食物繊維…ブロッコリー、芋、きのこ類、とうもろこし、果物、バナナ、こんにゃく
どれも身近な食べ物ですから、今日の食事から取り入れてみてください。ただし特定の食材を集中的に食べても意味はありません。バランスを取りましょう。
進歩する腸内環境の研究
シンバイオティクスは、医療の現場にも応用されています。一例ですが、ガン手術後の感染性合併症に対する効果や、事故や感染症で全身に炎症が起き、重篤な状態で運ばれてくるSIRSの患者での効果も報告されています。症例が増えれば、今後ますます一般的にも有効性が知られていくでしょう。
シンバイオティクスのためのサプリメントを利用するのもひとつの手です。サプリメントはあくまで補助的なものではありますが、腸内のベースを効率よく整えるためには有用です。ただしサプリメントも自分勝手に選ぶのではなく、専門家のアドバイスの元で飲むことをおすすめします。
研究はどんどん進歩しています。シンバイオティクスの考え方を軸に腸内環境を整え、心身ともに健康な状態をキープしてください。