正しい知識

生活習慣病を防ぐ「一次予防」

保険制度が充実している日本では、「病気になってから、病院へ行けばいいや」「健康診断で引っかかってから対応するればいい」という、お気楽な考えの方が多くいらっしゃいます。

しかしいくら保険制度が使えても、役に立つのはあくまで「お金」の面だけ。病気の症状で苦しむのは自分ですし、できることが制限されてしまえば、生きる目的も見失ってしまうかも知れません。人生100年時代、寝たきりの老後は誰しも避けたいはずですし。

そこで注目を浴びているのが、「一次予防」という考え方です。

一次予防とは病気、主に生活習慣病を未然に防ぎ、健康増進を目指すことを指します。それに対し、二次予防とは早期発見のために健康診断や人間ドックを受けて、健康状態を把握することをいいます。

会社員の方は健康診断を受けているはずですから、二次予防はできていそうですね。しかし、生活習慣病のリスクを減らすためには二次予防だけでは片手落ち。まずは一次予防をしっかりと行い、その効果確認のために、定期的な健康診断を活用するほうが効率がよさそうです。

そう、「生活習慣病が見つかってから何とかすればいいや」というその考えは、一次予防でも二次予防でもありません!

今健康だからこそ、一次予防を意識した生活を送ってみませんか?

\\\ 病気予防の考え方について、専門医に聞いてきました ///

教えて先生!

小西康弘Yasuhiro Konishi

医療法人全人会 理事長 / 小西統合医療内科 院長

2013年より 小西統合医療内科 院長 総合内科専門医 / 医学博士

生活習慣病はおおまかに「ガン・心疾患・脳血管疾患」に大別されます。このうち、心疾患の多くと脳血管疾患は心臓や脳を栄養している血管の動脈硬化が原因で起こります。それ以外にも糖尿病、喫煙による慢性気管支炎や肺気腫などの呼吸器疾患も含まれますから、成人が気にすべき病気のほとんどは、生活習慣病に当てはまるでしょう。

上記の病気は、食習慣や運動不足、喫煙、飲酒、ストレスなどから引き起こされます。防ぎようのない病気と違い、個人の心がけで生活習慣を見直すことで、リスク回避は可能です。ガンも生活習慣病の一つというと、違和感を感じる人もいるかもしれませんが、現在ではガンも広い意味での生活習慣が原因の一つになっていることがわかっています。

現在の日本では、生活習慣病の治療だけで7兆5000億円もの医療費が使われているといいますから、税金の使い道を考える上でも個人の対策は必要でしょう。

一次予防とは

医学には、病気が発見されたあとに治療を行う「治療医学」と、病気を事前に防ぐための「予防医学」があります。本来の「予防医学」は一次予防と同義で、現代人の健康を守るため重要視され始めました。

いくら早期発見といっても、病気になってしまってからでは、本当の意味での予防になりません。本当の意味での予防医学は、病気の因子を取り除き、そもそも病気になりにくい身体を作ることを指します。

病気の因子を排除し、多少の病気は自力で治せる自己治癒力が手に入れば、ガンや動脈硬化などの大きな病気はもちろん、風邪やインフルエンザなどの感染症に対する抵抗力も上がるでしょう。

健康なうちに行うのが一次予防

具体的な一次予防には、健康教育・食生活改善、健康相談、環境の整備を行う「健康増進」と、予防接種や個人衛生を進める「特殊予防」があり、生活の中で広く意識する必要があります。

一次予防の先には、病気の早期発見や早期治療を行う二次予防、病気の治療を進め、重症化した人のリハビリテーションや介護ケアなどを指す三次予防があります。どれも大切ですが、何より一次予防の意識が求められています。

一次予防が重要視されるきっかけは、2000年に発表された国の「健康日本21」運動です。その中で一次予防は二次予防と比べて取り組みが不十分とされ、より国民の意識向上が必要とされました。

生活習慣を変えるのは大変だけど…

とはいえ一次予防の考え方は目新しいものではありません。食生活を正して運動をしなさい、タバコを止めましょう、このような指導は今までにも何度もされてきたことでしょう。

しかし生活習慣を変えることは、容易ではないはずです。特に食事には、地域による味の差や文化的土壌、また家庭や個人の価値観が関係していますから、医師が押し付けていいものでもありません。

だからこそ、個人が主体的に行動を変える必要があります。もはや、価値観やライフスタイルの多様化が進むことは誰にも止められませんから、健康は個人の責任において守らなくてはいけない時代がやってくるでしょう。

長寿時代の健康を守る

人生100年時代、少しでも健康寿命を伸ばすためには、中年になる前に生活習慣を正しておく必要があります。たとえば子どもに対する食育は、今後さらに重要視されると考えられます。栄養と健康の仕組みについての知識は、子どもの将来を守る大切な要素だからです。

今の10代は、私たちよりずっと長生きをします。病気に蝕まれた身体で長く生きることのないような教育体制の整備は、大人の義務でもあるはずです。

生活習慣の改善は小さな行動の積み重ねです。実際に健康の役に立っているのか、数日では効果も実感しづらいでしょう。だからこそ成績表としての健康診断結果があることを理解し、一次予防としての生活習慣改善に取り組んでみてください。

専門医に気になる症状を相談してみませんか?以下ボタンよりお気軽にお問い合わせください。

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