先生に聞いてみた!
【先生に聞いてみた!】活性酸素を除去する?水素水のからくり
この記事は小西先生のYoutubeチャンネル「サクッとわかる機能性医学」でもご覧いただけます。
おいおい、うちの浄水器って、水素水が出るやつだったよな?
水素水「も」出るわよ。
水素水って怪しいらしいぞ。
買うときに「水素水が出るやつにしよう」っていったの、あなたじゃなかったっけ?
いや、ネットで「水素水ビジネスの闇」って記事を読んじゃってさ。
まいったなぁ、怪しいとは思わなかったよ。
何にでも裏と表はあるけどね。
なんだよ、不安じゃないのか?
この機種、俺たちは騙されたんじゃないのか?
私は浄水器フィルターの性能で選んだし、その機種にたまたま水素水機能が付いているだけっていう認識よ。身体にいいエビデンスがないことなんて買う前から承知だし、まあ少なくとも、効果ゼロでも、マイナスにはならないんじゃない?信じて飲むものは救われるわよ〜
そうか…てっきり飲めば飲むだけ健康になると思っていたよ。
健康診断の結果と、ラクにできそうな健康情報に敏感な会社員。
メタボが気になりだして最近ジョギングを始めた。
情報源はネットニュース。ラーメンとTVドラマが好き。
何より無駄遣いが嫌いな、計画的しっかり主婦。
週に3回、英会話教室の講師をしている。
趣味は温泉旅行とワイン。子どもはいない。
教えて先生!
小西康弘Yasuhiro Konishi
医療法人全人会 理事長 / 小西統合医療内科 院長
2013年より 小西統合医療内科 院長 総合内科専門医 / 医学博士
水素水を「健康効果あり」としている人は、水素水が体内の活性酸素を除去することをアピールしていますが、先生、それは本当なのでしょうか。
確かに、水素の働きで活性酸素が減ることに対してはエビデンスがあり、一定の効果が認められています。ただしそれは、正しい経路で体内に入り、ちゃんと吸収されたときの話。「水素が活性酸素を減らす」ことと、「水素水を飲んだ人の活性酸素が減る」ことの間には、かなり論理の飛躍があります。別次元の話なのに、「とにかく飲めばいい」と思っている方が多いのが残念です。
活性酸素って何だっけ?
身体に悪いものだったよな。
活性酸素とは、「電子を失って不安定になった酸素分子」のことです。細胞を酸化させ、シミやしわなどの肌の衰えや、歯や毛髪の老化を進めます。老化だけではなく病気の原因にもなり得ますから、活性酸素はできるだけ減らす方がいいでしょう。
ただし市販の水素水が、活性酸素をどんどん殺していけるのかというと疑問ですね。水素は一番小さな分子です。水分中に閉じ込めても、容器の蓋があいて空気に触れた瞬間、空気中に逃げてしまいます。その後に飲んだとしても、その水分の中には水素はすでに存在しません。
では、自宅の浄水器で出した水素水も、汲み置きしたら意味がないということですね。
水素は減っていますね。アルミパウチ商品だって、開封してしまえば水素はどんどん消えていきます。だから「水素が活性酸素を減らす化学的エビデンスと、水素水を飲んだ人の活性酸素が減ることの間には、論理の飛躍がある」と申し上げているのです。
あえていうなら、飲む直前に水素発生器で水素水をつくり、直後に飲むしかないでしょう。
スポーツジムの水素水サーバーから、マイボトルに詰めて飲んでいるけど、意味ないのか…。
そのような、消費者の方が一番知るべき「意味があるかどうか」のエビデンスが、そもそも商品に示されていないのが問題ではないでしょうか?
水素水に限りませんが、「製造時の含有量」と「時間経過後、口に入るときの含有量」は一緒じゃないはずです。いくら製造時に高濃度の水素が入っていても、実際に体内に入って作用しなければ、健康効果など生まれません。
実は浄水器を買う前に、国民生活センターの資料を参考にしました。公的な定義がなく、トクホや機能性表示食品として許可されたものはないということは、まあ、そういうことですよね。
> 国民生活センターサイト
> 参考資料
そうですね。
その商品を飲むことで本当に活性酸素が減るなら、そのエビデンスが公的に発表され、宣伝のため商品PRにも使われるはずです。そうではない商品は、「水素には効果がある」という化学的根拠だけを宣伝している可能性はありますね。科学的に根拠があるのは嘘ではありませんから、虚偽広告ではないのでしょう。ただ「その水素水を飲めば、体内の活性酸素が減る」と信じた一般消費者に対しては、勝手に勘違いしただけと言い訳できるので、厄介です。
水素水を飲む前後で体内の活性酸素量を調べ、もともと活性酸素の数値が高かった人が水素水を何ml飲むことで、どれだけ数値が下がるのかを調べるというのが、直接的なエビデンスです。ただし明確に調査している商品は、存在しなさそうです。そして、そこまではっきりしたエビデンスがあるのならば、もはやその水素水は治療薬です。医療の領域で扱うものになるでしょう。
もっと厳密にいうなら、プラシーボについても調べるべきです。効果を信じる人が飲めば、ただの水でも活性酸素が減る可能性があるからです。何も入っていない商品をコントロール群と比べて実験し、統計を出して比較することをコントロールスタディといいますが、一般の食品やサプリメントではそこまで効果を調べることは少ないでしょう。水素水についてのここまでのエビデンスがあれば、ぜひ教えていただきたいですね。
大手メーカーが出している商品なら、こっちは信じてしまいますよ。
ぜひ、賢い消費者になってください。
たとえば水素を確実に体内に取り込みたいなら、水素が濃縮された医療サプリメントが有効です。水素吸入という手もあります。その場で水素をつくり、鼻から吸って直接肺に入れる方法です。飲むよりも血液に取り入れやすいのでしょう。
水素水を買うことがダメといっているのではありませんよ。気休めで健康になることもありますし、それで幸せであればいい、という考え方もありますから。とにかく、コマーシャルを信じる前に、何が本来の目的かを考えてみてはどうでしょうか?というご提案です。
でも、身体に悪いものではないなら、継続して飲んでいいわけだな。やっぱり普通の水道水よりは何となく健康にいい気がするし。
イメージに惑わされないでね。パウチに入った水素水は高いんだから…飲むなら家の浄水器から出して、すぐに飲んでちょうだいね。
そこは問題ですね。普通のミネラルウォーターの2倍程度もする価格の、あくまで「水」を、わざわざ購入する意味はあるでしょうか。
水素水で本当に活性酸素が減るにしても、活性酸素はそれ以外の方法でも減らせます。抗酸化作用を持つビタミンやミネラルはたくさんありますし、活性酸素抑制にエビデンスのある治療もちゃんと確立していますよ。
確かに、活性酸素を減らすという目的に合致するのは、水素水だけじゃないですよね。
それから、「活性酸素を減らせば健康」という単純思考もやめるべきです。
たとえば当院のサプリメント治療でも、効果については納得するまで実験しますが、同じサプリメントでも患者さんによって効果レベルは変わります。それはどうしてかというと、その方の不調の原因は活性酸素以外にもあるからです。
活性酸素量が下がっても、体内の至るところで炎症が起きていれば、全身の健康は損なわれたままです。だから、身体が活性酸素を生む原因にまでフォーカスし、活性酸素が生まれない身体にする治療の方が必要だと思います。
納得できました。ありがとうございました。
健康イメージの強い商品を購入することと、実際の体内効果は別ということを消費者が理解できれば、健康食品市場はもっとよくなると思いますよ。
とにかく、せっかくお金を払うのですから、少しでも効果が欲しいはずです。そのためにも賢い消費者になり、コマーシャルだけを信用しないでくださいね。
この記事は小西先生のYoutubeチャンネル「サクッとわかる機能性医学」でもご覧いただけます。