先生に聞いてみた!

【先生に聞いてみた!】新型コロナ、うがい薬買い占め騒ぎはなぜ起きた?

さとみ

ドラッグストアに行くけど、何か必要なものある?

しんじ

イソジンがあれば買ってきてよ。
買い置きがなくなってしまったから。

さとみ

イソジンでなくても、ポビドンヨードのうがい薬でいいわよね?

しんじ

イソジンはイソジンだろう?

さとみ

イソジンは商品名よ。同じ成分、同じ効能で、他社からもたくさん出ているから。
とにかく目的は、新型コロナ予防のためにうがいをしたいってことでOKかしら?

しんじ

全然よく分からないけど、効くならそれでいいよ!

さとみ

(この人、濃いめの麦茶でうがいさせても効果を感じるんじゃないかしら…)

登場人物
しんじ
健康診断の結果と、ラクにできそうな健康情報に敏感な会社員。
メタボが気になりだして最近ジョギングを始めた。
情報源はネットニュース。ラーメンとTVドラマが好き。
さとみ
何より無駄遣いが嫌いな、計画的しっかり主婦。
週に3回、英会話教室の講師をしている。
趣味は温泉旅行とワイン。子どもはいない。

イソジンはムンディファーマがライセンスを持つ商品名。ムンディファーマが販売を委託している塩野義製薬やシオノギヘルスケアから販売されている。主成分は殺菌力の強いポビドンヨード。

新型コロナ騒ぎの渦中に、大阪府の吉村知事が「ポビドンヨードのうがい薬をすることで、このコロナにある意味、打ち勝てるんではないかとすら思っている」などと発表したことが波紋を呼んだが、予防効果の真偽は分かっていません。


教えて先生!

小西康弘Yasuhiro Konishi

医療法人全人会 理事長 / 小西統合医療内科 院長

2013年より 小西統合医療内科 院長 総合内科専門医 / 医学博士

さとみ

先生、ポビドンヨードが急に注目を浴びましたが…。

先生

私も大阪に住んでいますから、2020年8月の吉村知事の会見は驚きました。「ポピドンヨードがコロナ感染予防になる可能性がある」という会見のニュアンスが、不安の多い社会に過大に伝わり、「知事がポピドンヨードが効くと断定した」とみなされて騒ぎが大きくなったのではないでしょうか。

新型コロナは風邪ウイルスのひとつで、一般的な風邪やインフルエンザと同じように気道感染します。ウイルスがいきなり体内に入るのではなく、のど、つまり咽頭の粘膜に付着し、そこから細胞内に侵入するというルートを取るわけです。

さとみ

だから、こまめなうがいが推奨されているんですね。

先生

そうです。飛沫感染でのどや鼻腔にウイルスが付着したからといって、すぐに感染が成立するわけではありません。ウイルスが体内に入り込むまでには、何十ものバリアがあるのです。ウイルスがまだ体内に侵入していない段階で殺菌すれば、感染は成立しません。帰宅後や食事前のうがいが大切なのは、ここに理由があります。

そこで、うがい薬の出番です。不安を煽るような情報が多い時期でしたから、少しでも感染を防ぎたいと思う方々が、効果がありそうな「医薬品」に興味を持つのは当然のことでしょう。

イソジンに代表される、有効成分ポビドンヨードを含むうがい薬に、口中と咽頭のウイルスに対する殺菌・消毒効果があるのは事実です。実際、風邪やインフルエンザの感染リスクが低くなることは以前から知られていました。新型コロナが風邪の一種である以上、イソジンも同等の効果は発揮するでしょう。ただし、それ以上に効くかどうかは、当然分かりません。吉村知事の発言に含まれたこのようなニュアンスが、あの短い会見の中で世間に短絡的に受け取られたことが、イソジン買い占めなどの騒ぎの原因かもしれませんね。

しんじ

そうなのか…。
騒ぎの最中にイソジンを検索したら、数万円もしていたから驚きましたよ。

先生

人は情報に左右されます。不安な情勢なら、なおさらです。有力者の発言であれば信じてしまう人が増えるのも、ある程度仕方がないことかもしれません。

しかし情報の丸呑みはいけません。もし「このうがい薬で新型コロナを完全に殺菌できます」など書かれていれば、ちょっと危険です。それはどういうことかな?と自分で情報を咀嚼する力が必要です。

さとみ

ポビドンヨードのうがい薬には、デメリットもあるといいますよね。どのような薬にしても、過信は禁物ということでしょうか。

先生

ポビドンヨードにはヨウ素が含まれています。通常の使用量では問題はありませんが、ヨウ素の過剰摂取は甲状腺などに悪影響を与えます。また、ポピドンヨードでのうがいでは、咽頭の正常な細菌叢を殺してしまい、ウイルスに対する抗力を低下させるという研究もあります。

新型コロナを恐れるあまりにうがい薬を使い過ぎれば、他の部分で健康を損ねるかも知れません。ひとつの商品を盲目的に信じる先には、デメリットもあることを忘れないようにしてください。

しんじ

何を信じていいか、難しいですね。

先生

イソジン騒動の前、春の自粛要請があった時期には、トイレットペーパーの買い占めも起きましたよね。社会的反応として、ある程度のパニックは仕方ないことです。しかし「新型コロナでトイレットペーパーが店頭から消えるのはなぜ?」という疑問に、冷静に情報収集ができれば、非合理な騒ぎに巻き込まれずに済んだと思いませんか。

今はネット社会です。たいていの疑問に対する回答は、調べることができるでしょう。「コロナ感染 うがい」「コロナ感染 イソジン」と検索し、公的機関や信頼できる医師の見解を読み、自分で情報咀嚼を行いましょう。ニュースやSNSの情報を受け身で読むだけではなく、能動的に考えることが大切です。

今回のイソジン騒ぎで、買い占めや知事のバッシングなどが起きた裏側には、人の恐怖心があると思います。人は、未経験のできごとに圧倒されると、恐怖心からパニックを起こすものですから。

さとみ

フェイクニュースも多い時代ですから、私たちが賢くなる必要がありますね。

先生

情報が氾濫して、本当とウソの区別が付かない時代です。自分だけで単純に考えず、正しい情報源にアクセスしてほしいですね。そして今ほど、適切な検索キーワードで検索し、正確な情報を取捨選択する能力が試されている時代はないかもしれません。フェイクニュースを発信するような人たちとも簡単にSNSでつながってしまう世の中ですから、踊らされないようにしてください。

特にこのサイトを読んでくださっている方には、ぜひとも「情報強者」になっていただきたいと思います。

あと、うがい薬でのうがいと水でのうがいで、感染の予防効果には有意差はないという研究もあります。うがい薬を使わない、水だけのうがいでも十分に予防効果はありますよ。うがい薬が買い占められて手に入らなくても、水でうがいしましょうね。

しんじ

それを先に教えてくださいよ!

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