先生に聞いてみた!

【先生に聞いてみた!】男性の薄毛治療、ウソほんと

しんじ

あ〜!!また髪が薄くなってる。
シャンプーのたびにごっそり抜けていくんだよ。

さとみ

毎月そういっているけど、本当に抜けてるなら、あなたそろそろ総ハゲよ。

しんじ

やめてくれ。1本1本が貴重なんだ。

さとみ

「壮年期の薄毛の特長は、前頭部と頭頂部の脱毛が進むこと」ですって。ドンピシャね。それから、シャンプーやヘアセットのときに抜け毛の増加を実感する人がほとんどですって。

しんじ

王道パターンか!

さとみ

いい歳なんだし、仕方ないと諦めたら?

しんじ

いや!諦めない!
食事にもっとワカメを出すとかさ、もっと協力してくれよ。

登場人物
しんじ
健康診断の結果と、ラクにできそうな健康情報に敏感な会社員。
メタボが気になりだして最近ジョギングを始めた。
情報源はネットニュース。ラーメンとTVドラマが好き。
さとみ
何より無駄遣いが嫌いな、計画的しっかり主婦。
週に3回、英会話教室の講師をしている。
趣味は温泉旅行とワイン。子どもはいない。

「ワカメは薄毛予防に効果的」という噂は本当でしょうか。否定する専門家もいますし、効果があったという声も上がっているため、どちらを信じていいか分かりません。まずはワカメと薄毛の関係性について、調べてみましょう。

教えて先生!

小西康弘Yasuhiro Konishi

医療法人全人会 理事長 / 小西統合医療内科 院長

2013年より 小西統合医療内科 院長 総合内科専門医 / 医学博士

さとみ

(ちまちまワカメを食べるくらいでは、毛なんて生えないわよ…)
先生、どうしたら薄毛対策ができるでしょうか。

先生

一般的な男性が悩みとする「薄毛」は、AGAと呼ばれる、思春期以降の男性の進行性の脱毛症だと思います。ストレスによる脱毛など一過性でない場合は、その多くが男性ホルモンの作用が原因となっています。

ジヒドロテストステロンという男性ホルモンの作用で、毛包自体が縮小してしまうのですね。この症状に対しては、毛根の男性ホルモンに対するレセプターをブロックする治療が確立しています。これはエビデンスのある、しっかりした治療です。

しんじ

治療法があるのは、聞いたことがあります。
でも、日常的にワカメを食べることにも意味はありますよね…?

先生

そうですね、ワカメや昆布を食べることの意味は、あるともいえますし、ないともいえます。

まず、「意味がある」から考えていきましょう。

海藻類は、その表面がネバネバぬるぬるしているものが多いと思います。その正体は「多糖体」という物質で、ワカメ、昆布、モズクなどの多糖体から抽出された物質は「フコイダン」と呼ばれています。フコイダンは「IGF-1」という物質を増やします。IGF-1は萎縮していた毛母細胞を刺激し、脱毛休止期を短くする作用を持ちますから、海藻類が発毛サイクルを正常化させるというのは、機序としては正しいといえるでしょう。

しんじ

フコイダンは、サプリメントでも見たことがあります!

さとみ

それが果たして効くの?…私には疑問しか浮かびません。

先生

では、次に「意味がない」を見ていきましょう。

海藻類にフコイダンが含まれ、IGF-1が発毛サイクルに作用すること自体は客観的事実ですが、問題はその先です。「ワカメを食べたら髪が生える」までには、そこまでに何段階も仮説を実証しなくてはいけません。

しかしネット情報や商品PRには、起承転結ではなく、「起承結」のような論法が散見されます。極端な例では「起→結」な、論理の飛躍が見られることもあります。

もし本気でワカメを食べ続けていらっしゃる方がいたとして、「効果があった」という声もあるから、ネット上でそのような情報が流れてしまうのでしょうが、気を付けていただきたいのは、さもエビデンスのあるような商品広告文に踊らされないことです。

しんじ

ついつい、生えてきたという話に引きずられてしまうんだよなあ。

先生

しかし「1日何グラム食べたら、どれくらいの日にちで生えてくるか」がデータ化され、再現性が確かめられなければ、フコイダンを摂る意味はありません。たとえば、発毛に必要なフコイダンの量をクリアするため、「毎日2キロの海藻を2年間、食べなさい」といわれたとして、それは現実的でしょうか。

さとみ

そんな食生活は無理ですね…。

先生

だから、「ワカメ食べる=毛が生える」は論理が飛躍していると申し上げています。味噌汁に入ったワカメを食べたくらいで、髪が生えるなら、誰も苦労しません。

それから、「動物実験で効果が認められました!」というのも、信じてはいけませんよ。動物実験で効果があったものをすべて認可していたら、えらいことになってしまいます。人との効果は違いますから。

本当に治そうと思ったら、エビデンスに基づいた男性ホルモンの治療が必要でしょうね。脱毛自体は誰にでもある生理的現象ですが、薄毛はストレスの元となりますしQOLにも影響を与えます。治療に取り組むことはおすすめできます。

しんじ

そうなのか…。
ワカメくらいじゃ、意味はないことが分かったよ。

さとみ

もうスーパーで無駄な海藻サラダを買い続けるのは、やめてちょうだいね!

先生

海藻類にはミネラルが豊富ですから、日常的に食べることはいいことですよ!
毛髪だけではなく、身体のさまざまな機能によい影響を及ぼす食材ですから、食べることはお続けください。

しかし、かつらに頼るしかなかった昭和時代と違って、今はよい治療法が確立されています。まずは食生活のバランスを取り、身体を整える。そのうえで、AGAの専門家に相談することが、具体的な策ではないでしょうか。

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