先生に聞いてみた!
【先生に聞いてみた!】糖質制限でガンは消えるのか
糖質制限の食事にも、だんだん慣れてきたな。
あなたにしては、長く続いているわね!
頑張ってるだろ〜!ここらでちょっと、気合いを入れるために糖質制限の合宿に行こうかなと思うんだけど。ダイエットもできそうだし。
うーん。糖質制限なら生活の中で頑張ればいいんじゃない?
どうしてわざわざお高い合宿に行く必要があるのか、分からないけど。
誰かに気合い入れてもらわないと、できないことってあるだろう!
糖質制限は、ガンも予防できるんだし一石二鳥だよ。
それも聞いたことあるけど、本当なの?
よく分からないけど、糖質をカットすればガンが増えないらしいぞ。
糖質制限はいいことかもしれないけど、そういうあいまいなネット情報に乗って、
大金を使うのはやめてちょうだいね!
健康診断の結果と、ラクにできそうな健康情報に敏感な会社員。
メタボが気になりだして最近ジョギングを始めた。
情報源はネットニュース。ラーメンとTVドラマが好き。
何より無駄遣いが嫌いな、計画的しっかり主婦。
週に3回、英会話教室の講師をしている。
趣味は温泉旅行とワイン。子どもはいない。
教えて先生!
小西康弘Yasuhiro Konishi
医療法人全人会 理事長 / 小西統合医療内科 院長
2013年より 小西統合医療内科 院長 総合内科専門医 / 医学博士
先生、糖質制限がガンを防ぐというのは、信じていい説なのでしょうか…?
ガン細胞はブドウ糖を栄養源にして増殖しますから、糖質制限をした方がいいという説は間違いではないでしょう。たとえばガンのPET検査は、ブドウ糖にマーキングをしてガンを探す検査です。ガン細胞は糖代謝が激しいので、糖を異常に取り込んでいる部位はガン化している可能性があるということですね。
なるほど、ブドウ糖はガンのエサなわけですね!
ですから「断糖でガン細胞の栄養素を絶つ」という方法論は成り立ちます。しかし断糖をした方のガンが本当に消えるかというと、僕自身は経験がないので何ともいえません。実際にそのような治療法を取られている先生たちの治療成績を見ないと、分からないでしょうね。
治療法として本当に確立するかどうかというのは、まだまだ未来の話でしょうか。
ガン細胞とブドウ糖の関係性は事実であっても、断糖治療で「これくらいの症状の方は、こう改善した」といい切るまでには、まだまだ距離があると思っています。このようなことは、ひとつひとつ検証を重ねるべきだからです。
ただ、最初から筋道が分かっている治療法などありません。まずは大きな発見があり、そこまでの距離を、コツコツと埋めていく作業が必要でしょう。その距離が埋まれば、断糖が新しい治療法になる可能性は、十分にあります。
まだ健康な方が「糖質制限をしているからガンにはならない」と勝手に過信し、検査などをおろそかにするケースもありますが、それはとても危険です。そもそも糖質制限はガンを治すためだけの方法ではありません。
はい、ガン検診はちゃんと受けます…。
あと、ドクターによっては古い学説に固執される方もいますから、断糖のような極端な方法が臨床現場に受け入れらるまでは、相当時間がかかる気がしますね。
最近は糖尿病の治療でも、ある程度糖分は取らないといけないとされています。それは間違いではありませんが、少し前までの栄養学の考え方といえます。
どういうことでしょう。
これまでの栄養学に加え、新しい栄養学が生まれ始めているということです。
これまでの考えに従ってバランスよく糖分を摂るのではなく、「極端に糖分を減らし結果を出す」というのが、分子栄養学・機能性医学の捉え方です。驚かれる方もいらっしゃいますが、これまでの標準的医療の考え方と違うからといって全部トンデモかというと、そうではありません。断糖治療が今後成果を出す可能性は、十分にあると思っています。
しかしそれには、科学的な正しい知見の積み上げが必要です。「積極的に糖分制限したら、ガンが治る」という正しいデータが集まればいいのです。しかしまだエビデンスはありません。「効果がある」といってはいけない段階です。
問題は、距離が埋まっていないのに、さも「ガンに効く!」という宣伝してそれでお金を稼いでいる人がいることだと思っています。
残念ながら、そのようなことを商売にしている人もいますからね…。すぐにダマされる人もいるし。
俺の方を見るなよ!
まだ科学的にデータが積み上がっておらず、エビデンスがないのに、ファスティングなどの名目で素人のような人が糖質制限道場などを行っているのは、非常に悪質ですね。気を付けてください。
せっかくよい研究の芽が出ているのに、トンデモ系の人たちによってマイナスイメージが付くのは困りものです。
医療はどんどん進歩しますから、焦らず待つことも必要なのですね。
そうです。これまでも、古い医療の概念に囚われた方々にトンデモ扱いされた発想が、のちに大きな結果を出したことはあります。何年も何年もかけて、標準的医療になっていく。科学の進歩とは、そういうものなのです。
断糖によるガン治療は、最近出てきた説です。できればより多くの医師が、この説を頭ごなしに否定せず、大規模なコントロールスタディに取り組んでいければよいですね。それくらい可能性のあるテーマだと思っています。
医師は昔の医療に固執しないこと。そして一般の方は科学的エビデンスのない治療法をうたう商売に近寄らないこと。これを守れば、医療はもっと早く進歩するのではないでしょうか。