先生に聞いてみた!

【先生に聞いてみた!】標準治療とトンデモ医療のはざまにあるもの

しんじ

風邪をひいたかもしれないな…

さとみ

熱は?明日の仕事、大丈夫?
いまは単なる風邪も、神経質になる時期だから…

しんじ

昔は、卵酒でも飲んで、おでこに梅干し貼ってりゃ風邪なんてあっという間に治ったもんだけどな…

さとみ

やだ、あなた、いつの時代に生きてた人?

しんじ

おばあちゃんが、「これで治るから」って貼ってくれたんだよな〜。
そしたら本当に熱が下がってさ…。

さとみ

それは気持ちの問題だと思うわよ。
そんな純真な子どもが、どこかが痛いといっては、市販薬を飲みまくる大人になってしまったわけね…。

しんじ

おまえこそ、日頃は「薬は怖い」なんていいながら、風邪ひいたら病院に行くじゃないか。

さとみ

私は、薬の飲みすぎと同じくらい、迷信もNGだと思うわよ!

登場人物
しんじ
健康診断の結果と、ラクにできそうな健康情報に敏感な会社員。
メタボが気になりだして最近ジョギングを始めた。
情報源はネットニュース。ラーメンとTVドラマが好き。
さとみ
何より無駄遣いが嫌いな、計画的しっかり主婦。
週に3回、英会話教室の講師をしている。
趣味は温泉旅行とワイン。子どもはいない。

病気を治すとき、標準的な西洋医学を選ぶ人もいれば、それを拒み、民間治療に走る人もいます。民間治療にはおばあちゃんの知恵袋のようなものから、明らかにトンデモ医療といえるような、突拍子もないものもありますが…

教えて先生!

小西康弘Yasuhiro Konishi

医療法人全人会 理事長 / 小西統合医療内科 院長

2013年より 小西統合医療内科 院長 総合内科専門医 / 医学博士

さとみ

先生、風邪をひいたとき、おでこに梅干しを貼るのは…まあ、おまじないの一種でしょうけど、命にかかわるような病気でもトンデモ民間療法に心惹かれてしまう心理って、どう説明すればいいのでしょうか。

先生

「おでこに梅干し」は、庶民に医学知識がない時代にしては、頑張った行動だと思いますよ。梅肉エキスの健康効果は認められていますし、 干しの匂いで唾液や食欲を誘発することができれば、「しないよりまし」な民間治療といえるでしょうね。

しかしこの現代において、科学的エビデンスがある治療ではなく、おまじないのような民間治療を選ぶ人は、単純に情報弱者なのではないでしょうか。

しんじ

情弱…までいい切ってしまわれますか。

先生

医療情報がなかった数百年前ならいざ知らず、今の時代に「聞いたまま、いわれたまま」を信じて、頭を使って検証しない方は…医療情報に限らずダマされやすい方といえるでしょうね。

逆に、標準的な考え方が刷り込まれている方は、必死に民間治療を否定します。今までの考えと違う意見を見聞きすると、自分が守ってきた価値観が破壊されるかのような恐怖心を覚え、とにかく反対してしまうのではないでしょうか。

しんじ

だから、両極端な意見が生まれるのか。

先生

ダイエット情報を例に取りましょうか。

「〇〇を食べたら痩せる!」というネット情報に、自分の頭で考えることなく飛びついてしまう方もいれば、かたや、その食材に本当にダイエット効果があるかもしれないのに頭から否定して受け付けない方もいます。

どちらも極端です。

私から見れば、人のいっていることをすぐに盲信してしまう人も情報弱者ですが、自分の理解できないことを、確認できない人も情報弱者です。情報の真偽を見極めることができない、という意味では同じだと思います。

しんじ

ダイエットならまだしも、ガンが治るとか、ウイルスが殺せるとか…。いろいろありますよね。

さとみ

微妙なラインですね。エビデンスがなくても心身にプラスの影響を及ぼすプラシーボも、人体にあり得る反応です。ただし被害を受けたり、大金をつぎ込んでだまされるということもある。この切り分けってすごく難しいなと思うわけです。

先生

こう考えたらどうでしょう。

治療にはふたつある。
ひとつはオーソドックスで、多くの経験とエビデンスがあり効果が分かっている治療。もうひとつは、論外なトンデモ医療。

その中間に、「今の臨床ではまだエビデンスが分かっておらず、有効性も証明されていないけれど、将来的に科学が進歩してエビデンスが積み上がったときには新しい治療になり得る領域」があるとすれば…?

しんじ

そうか、新しい治療がどんどん生まれているのか。

先生

そうです。その中間領域に対し、一生懸命取り組んでエビデンスを積むからこそ、科学・医学は進歩してきました。

保守的な方々は、この「中間領域」をも否定します。しかし、何をいわれてもめげない先進的な方たちが結果を出すことによって、保守的な人たちも「そうなのか…」と理解し始め、その結果の積み重ねが10年20年後の標準治療となるのです。

さとみ

私たちにはその過程が見えないので、両極端な意見が目に入るのかもしれませんね。

先生

確かに医療研究の現場は、一般の方には見えませんからね。

僕は消化器が専門ですが、早期ガンの内視鏡切除など、当初は外科の先生からは「とんでもない」といわれたものでした。しかし今は、1cm以下の早期ガンなら内視鏡ですっきり切除できて、再発防止も可能です。

よしとされる治療は、時代によって変わります。今「トンデモ医療」といわれているものの中にも、ひょっとしたら、未来の標準治療があるかもしれません。

さとみ

希望もあるお話ですね!

先生

保守的な方からすると、「先進的なチャレンジ」なのか「いかさま」なのか分からないため、受け入れられない気持ちも分かります。しかし否定しかしないのであれば、医学の進歩を止めることにもなります。

同様に、まだエビデンスのない治療を「治る」と煽り、金儲けに走ることも言語道断です。皆さんにはもっと賢くなっていただき、広い視野で見極めてほしいと願いますよ。

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