先生に聞いてみた!
【先生に聞いてみた!】マスクで、体内の酸素量は下がるのか
最近、身体がだるいんだよな。やる気も出ないし。
テレワークが増えたからって、朝晩ゴロゴロしているからじゃない?運動でもしたら?
いや、このうっすらした体調不良はマスクのせいではないかと疑っている。
確かに、毎日息苦しいわよね。
そう考えると、私の頭痛もマスクのせいかしら…?
出勤日だけじゃなく、買い物や散歩だってマスクをして、毎日数時間は呼吸を制限されているんだぞ。脳に酸素が十分に行き渡っていないんじゃないかな。もしかして最近の肩こりや目の疲れもマスクのせい…
そこまでマスクに罪をきせてはかわいそうでしょう。
でも酸素不足については気になるから、先生に聞きに行きましょう!
健康診断の結果と、ラクにできそうな健康情報に敏感な会社員。
メタボが気になりだして最近ジョギングを始めた。
情報源はネットニュース。ラーメンとTVドラマが好き。
何より無駄遣いが嫌いな、計画的しっかり主婦。
週に3回、英会話教室の講師をしている。
趣味は温泉旅行とワイン。子どもはいない。
教えて先生!
小西康弘Yasuhiro Konishi
医療法人全人会 理事長 / 小西統合医療内科 院長
2013年より 小西統合医療内科 院長 総合内科専門医 / 医学博士
先生、マスクで酸素不足になることはあるのでしょうか?
ネットには低酸素血症になるという説も書かれていますが…。
マスクで、酸欠からくる低酸素脳症にはなりませんよ。単純に「苦しい、酸素をもっと吸いたい」という感覚的な話ではないですか?
でも、酸素不足でフラフラしたり、苦しくて集中できないような感覚があるのは事実だと思いますが…
呼吸しにくいのは確かでしょうね。これまで当たり前に吸っていた空気量が減るわけですから。
たとえば高地など空気の薄いところでは、空気中に酸素が少ないた高山病になります。しかし平地で空気を吸っている限り、マスクをつけた程度では、低酸素血症には絶対なりません。ビニール袋を頭からかぶせて窒息させる場合は別ですけどね。そんなことしたら、殺人罪で捕まってしまいますね。
そうなんですね…。
酸素飽和度を測ってみれば、一目瞭然ですよ。
体内の酸素飽和度を測る「パルスオキシメータ」という機器がありますが、あれは動脈血の赤みを測定して、酸素をしっかり取り込めているかを確認するものです。
血が赤く見えるのは、赤血球に「ヘモグロビン」という色素が含まれるためです。ヘモグロビンは酸素とくっつく性質を持っており、呼吸で取り込んだ酸素とくっついて血液を赤くします。
体内酸素が本当に減っているかどうか、測定できるんですね!
ヘモグロビンは、空気中の酸素がかなり低くならない限り、酸素をくっつける力を保っています。いくらマスクをしていようと、健康な肺を持っている人の酸素飽和度は下がりませんよ。
医学的にみた「酸素欠乏」とは、この酸素飽和度が下がった状態をいいます。マスクをつけて息苦しいことを「酸素欠乏」というのは、一般の会話レベルでは構いませんが、科学的に正しい表現かと聞かれたら、間違った表現だということですね。
少し安心しました。
もちろん肺気腫など、肺に疾患を持っている方は別です。酸素とヘモグロビンがくっつく場所である肺がダメージを受けていれば、それこそ純度の高い酸素を吸わせてあげなければいけません。
だからコロナの重症患者は、酸素マスクをしているわけですね。
コロナに限らず、重症肺炎では酸素とヘモグロビンが結合する「肺胞」という部位で炎症が起こり、酸素交換がうまくいかない状態になります。高濃度の酸素を投与しないと、血液中の酸素飽和度を維持できない状態です。
今、コロナにかかっているわけでもない健康な方は、マスク程度で健康被害は受けません。もっとご自身の身体を信じてあげてはいかがでしょうか。
急に呼吸が楽になってきました!
いつもいうことですが、不正確な情報がさも本当であるかのように発信されるネット情報には注意してください。必要のない不安感や恐怖心を煽る傾向があります。
特にコロナについては、皆さん敏感になっているので余計にです。
そして不正確な情報ほど、人々の好奇心を刺激して広がります。デマほど広がりやすい構造があることを、知っておいてほしいと思います。
他にも、マスクによって免疫力が下がる…という説もあるようです。こちらも気にしなくてよいでしょうか?
まったく気にする必要はないですね。コロナによるさまざまなストレスで免疫力が下がることはあり得るかもしれませんが。
分かりました!大げさな健康被害はないと分かったら、ストレスが減った気がします。
マスクが息苦しいのは確かですが、社会的にマスクを外せない以上、タイミングを見て、マスクを外して呼吸すればいいだけではないかと思います。
それに関係して、息苦しくないマスクは「通気性がよいマスク」ですから、感染防御の意味では意味がないことも知っておきましょう。息苦しさを避けるためにスカスカのマスクをしていたのでは、本末転倒ですよ!