先生に聞いてみた!
【先生に聞いてみた!】メタボはどうして身体に悪い?脂肪細胞の「悪玉と善玉」とは
もっとこう、キュッと、おなか周りを引き締めたいよなあ。
そうね、放置するとどんどん脂肪がつくしね。でもこの前、脂肪にも役割がある…みたいなニュースを聞いたけど?
いやいや。脂肪は完全に悪者だろう。そうでなければ健康診断でわざわざメタボの測定なんてされないはずじゃないか。
そうだけど、じゃあメタボが身体に悪い理由を明確にいえる?
そりゃあ、太ったら生活習慣病になりやすいってことじゃないか?
どんなメカニズムで?
そういわれると具体的には分からないけどさ…。しかし今日は妙に脂肪の肩を持つね。
だって完全に悪者だなんて思ったら、私のおなかの脂肪がかわいそうじゃないの…。
健康診断の結果と、ラクにできそうな健康情報に敏感な会社員。
メタボが気になりだして最近ジョギングを始めた。
情報源はネットニュース。ラーメンとTVドラマが好き。
何より無駄遣いが嫌いな、計画的しっかり主婦。
週に3回、英会話教室の講師をしている。
趣味は温泉旅行とワイン。子どもはいない。
教えて先生!
小西康弘Yasuhiro Konishi
医療法人全人会 理事長 / 小西統合医療内科 院長
2013年より 小西統合医療内科 院長 総合内科専門医 / 医学博士
先生、脂肪が身体に悪い理由をもう少し詳しく教えてください。
脂肪は、単なるおなか周りのブヨブヨした無駄肉だと思われてきました。しかし最近は研究が進み、ホルモン様物質を分泌する内分泌臓器としての働きが明らかになってきています。
脂肪細胞がホルモンを分泌するというと驚きでしょう?
びっくりしますね。聞いたことがありません。
脂肪細胞は、「アディポサイトカイン」という生理活性物質を分泌します。アディポとは脂肪、サイトカインとはホルモン様物質のことです。つまり、脂肪細胞が分泌するホルモン様物質ということですね。
このアディポサイトカインに、善玉と悪玉があるわけです。通常の脂肪細胞は善玉のホルモン様物質を分泌するのですが、脂肪を摂りすぎると、脂肪細胞が脂肪成分を取り込んで巨大化します。すると悪玉化して、悪玉のホルモン様物質を分泌するということです。
脂肪細胞はみんな悪者だと思っていましたが、善悪両方の細胞があるんですね。
善玉アディポサイトカインには、インスリン感受性を上昇させ血糖値を下げやすくするアディポネクチン、食欲を抑えエネルギー消費を進めるレプチンなどがあります。
悪玉アディポサイトカインには、高血圧症のリスクを高めるアンギオテンシノーゲン、インスリンを抵抗性を増大させ血糖値を上げやすくするTNF-α、血液を固め動脈硬化などのリスクを高めるPAI-1などがあります。
うーん、難しくなってきましたね。
脂肪と炎症って、まったくイメージが結びつかないのですが…。
そうだと思います。しかしこれまでもこのサイトでは、活性酸素などが体内の炎症を誘発し、その炎症がおおよその病気の原因になることを発信してきましたね。
同様に、脂肪も炎症の原因であり、脂肪細胞自体が病気リスクになり得るということを知ってほしいと思います。
メタボリック症候群が、どうして身体に悪いのかよく分かっていませんでしたが…細胞レベルで健康に影響するんですね。
このあたりの研究はどんどん進んでいますよ。たとえば脂肪肝も、昔は単に肝臓に脂肪が溜まるだけだと思われていましたが、今は「脂肪性肝炎」と呼ばれ、肝臓で脂肪細胞が炎症を起こすメカニズムが明らかになってきました。
肝炎はアルコール性がほとんどだというイメージでした。
そうですね。しかしアルコールや肝炎ウイルス以外でも肝硬変になることは実証されています。痩せていても肝臓の数値が高い人もいますよね。脂肪肝にはお酒が好きで暴飲暴食をする人のイメージが付いていますが、お酒を飲まない、または1日に1合未満の飲酒をする方の「非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD:ナッフルディー)」も増えています。
おなか周りも、肝臓も、脂肪が大敵な理由が具体的に分かりました。
脂肪がない人間はいませんからね、あまり極端になってはいけません。脂肪自体がダメなのではなく、必要以上についた脂肪によって、悪玉の脂肪細胞が増える可能性があるということです。
対策としては、もちろん規則正しい食生活や運動が一番ですが、脂肪が炎症を誘発することを知るだけでも、健康意識が高まるのではないでしょうか。