正しい知識
グルタミン・グルタミン酸の栄養学
筋トレをする人や、アミノ酸サプリメントを探している人は「グルタミン」という栄養素を見かけたことがあるはずです。
「アミノ酸の一種なので身体にはいいはず。具体的なメリットが知りたいな…」
そう思ってネットで検索をした人が必ず混乱するのが、グルタミン関連で「グルタミン酸」というとてもよく似たキーワードが出てくること。
「グルタミン酸って、調味料の原料だっけ…」
「グルタミンとグルタミン酸は、そもそも同じじゃないの?」
「グルタミン…グルタミン酸…?混乱してきた!」
混同しがちな2つの栄養素。名前こそ似ていますが、当然ながら作用はまったく違います。ただし、どちらも腸内環境やアンチエイジングに効果を持つ、健康には欠かせない存在です。
そこで今回は、「グルタミンの必要性と働き」について解説し、グルタミン酸との違いについても触れてみたいと思います。
\\\ 本当のところを、専門医に聞いてきました ///
教えて先生!
小西康弘Yasuhiro Konishi
医療法人全人会 理事長 / 小西統合医療内科 院長
2013年より 小西統合医療内科 院長 総合内科専門医 / 医学博士
グルタミンは、生体内に一番多く存在する遊離アミノ酸です。注意してほしいのは、グルタミンは「グルタミン酸」とは違うことです。両方とも非必須アミノ酸の一種ですが、働きはまったく異なります。
【グルタミン】
非必須アミノ酸。生体で一番多い(約60%)。筋肉中に多く存在し、腸や免疫細胞など生体維持に必要な機能に役立つ。
【グルタミン酸】
非必須アミノ酸。食品に遊離の形で含まれ、旨味の元となる。昆布だしの成分。
グルタミン酸ナトリウムは、だしの素などのうま味調味料の原料として使われる。
この記事では、グルタミンについて詳しく見ていきます。
グルタミンの働き
グルタミンは、主に以下のような作用を持ちます。
- 筋肉タンパクの合成
- 創傷治癒
- 胃腸機能や粘膜機能のサポート
- 膵臓の修復
- 免疫の活性化
- 抗うつ作用
- 腸粘膜の修復
この中で注目したいのは、腸粘膜の修復機能です。
腸の働き
腸内環境が健康維持の役に立つことは、よく知られています。では腸が元気に活動するためには?というと、まさにグルタミンが必要なのです。
グルタミンは、大腸・小腸のエネルギー源です。
【小腸】
消化吸収を行う器官。エネルギー源はグルタミン。
【大腸】
腸内細菌の宝庫。小腸で消化吸収できなかった食べ物は大腸で腐敗・発酵され、体外に排出されていく。エネルギー源はグルタミンと、短鎖脂肪酸。
単純にいえば、腸が弱まっているときにグルタミンを供給すれば、改善が期待できます。医療現場でも、ガンの放射線治療や切開手術後、骨髄移植や生命にかかわる火傷やケガの治療過程で、グルタミンを投与することがあります。大きな手術後は体内のアミノ酸の消費量が増え、胃腸が弱まり、免疫力も著しく低下しているからです。
腸と免疫とグルタミン
病後ではない方でも、腸へのグルタミンの供給をおろそかにしてはいけません。
小腸が健康になれば、自然と免疫力も上がります。免疫細胞の7、8割は小腸に存在していますが、その中でもリンパ球、好中球、マクロファージなどの免疫細胞は、グルタミンをフル活用して活動しています。
腸は強くも脆い器官です。ストレスや内毒素が溜まれば、腸壁に炎症が起き、透過性が高くなります。その腸壁を修復するためには、タイトジャンクション(Tight junction)と呼ばれる部位で、細胞同士を接着しなくてはいけません。
タイトジャンクションの形成には亜鉛やタウリン、ビタミンDなどが必要ですが、中でも重要なのが、グルタミンです。グルタミンはタイトジャンクションの原料になって積極的に腸の粘膜を修復し、細菌侵入や絨毛萎縮を防ぎます。
腸壁に穴が開き血中に不要物が漏れ出す「リーキーガット」の改善にも、グルタミンは役立ちます。当医院でも、リーキーガットの治療にはグルタミンを含んだ医療用サプリメントを使用しています。
グルタミンのデメリット
グルタミンは小麦粉や大豆、卵や肉・魚などのタンパク質食品に多く含まれていますが、加熱調理するとごく少量しか残りません。そのためサプリメントで摂るケースが多い栄養素です。
ただしグルタミンの過剰摂取は危険です。前述の通り、グルタミンはその一部がグルタミン酸に変換されます。グルタミン酸は脳の興奮を高め、睡眠障害や神経障害の原因となる可能性があり、実際に自閉症や発達障害のある患者さんの治療ではグルタミンは禁忌とされています。
またグルタミンはガン細胞の増殖を促す可能性もあるため、ガン患者の利用は慎重に行うべきでしょう。
どう摂る?グルタミン
いま健康な人が、一生懸命にグルタミンのサプリメントを飲む必要はありません。バランスのよい食事ができているならば、摂取量は十分なはずです。
ただし、リーキーガット の治療を行う場合や、病後のケアが必要なときは別です。非必須アミノ酸は体内で生成できますすが、これは逆に考えると「体内で合成されないと問題が起きる」欠かせない存在でもあるということです。
グルタミンを一定量飲むときは、必ず専門医のアドバイスの元、摂取してください。せっかくのサプリメントですから、効果的に、そしてデメリットが起きないように飲みたいものですね。
予防医学.jpでは、専門医によるサプリメントのご相談を受け付けております。