正しい知識

糖質制限の結果に個人差があるのはなぜ?

白ごはん、パン、麺類、甘いジュースやお菓子だけを食べて暮らしていませんか?少ない予算でおなかを満たし、甘いもので心を満たし…という生活で、その場の幸せは得られるかもしれません。しかしそれは、ある意味「栄養失調」の状態です。

昔の栄養失調は、食べ物がなくて栄養状態が悪く、ガリガリに痩せることを意味していました。しかし現代には別な意味での「栄養失調」が蔓延しています。食べるものはふんだんにあっても栄養的な偏りが激しく、質的な栄養失調が問題になっているからです。

その「質」のバランスの中で、多くて問題となっているのが糖質。砂糖だけではありません。いも類、ごはんやパン、麺類などの炭水化物に含まれる糖質は、私たちの食事の中で予想以上に大きな割合を占めています。

糖質の摂り過ぎは病気の元とされ、最近では糖質制限を行う方も増えてきました。しかし「効果があった」「いや、かえって不健康だ」という両方の意見があり、自分に糖質制限が向いているのかどうか、見極められない方も多いようです。

糖質制限に個人差があるのはどうしてでしょうか。
そのヒントは、分子栄養学にありました。

\\\ 分子栄養学の専門医に、糖質制限の考え方を聞いてみました ///

教えて先生!

小西康弘Yasuhiro Konishi

医療法人全人会 理事長 / 小西統合医療内科 院長

2013年より 小西統合医療内科 院長 総合内科専門医 / 医学博士

「糖質制限」「ローカーボ」などの単語が一般化しました。主にダイエットや健康管理を目的に、一般の方たちが日常の食事から糖質を控え始めています。

これは悪いことではありません。しかし全員が同じ方法で成果を出せるか、というと、決してそうではないでしょう。本当にその人の体質に糖質制限が必要なのか、むしろしっかりととった方がいいのかを正確に見極める必要があるはずです。

これまでの栄養学では、摂取カロリーや栄養素のバランスを重視し、 推奨摂取量を食事から摂るという方法が行われてきました。「欠乏しない」ということに重点が置かれ、たとえばビタミンも「最低、これだけを摂ってくださいね」というアドバイスがされてきました。しかし、すべての栄養素において、万人にちょうどいい量というものありません。ビタミンだって、摂取量に応じて身体に及ぼす作用が変わります。

分子栄養学とは 「細胞の中にある遺伝子を最大限に活動させるために必要な栄養素と、その量を科学する栄養医学」です。推奨摂取量や欠乏しない量ではなく、個人差や、そのときの健康状態における必要量を考え、 身体機能をベストな状態にもっていく栄養条件を求めていきます。

分子栄養学では「60 兆個ある細胞が、全体として調和のとれた活動をしている状態」、つまり全身のバランスが取れた状態を、健康と呼んでいます。

どのタイミングでのバランスを取るか

糖質制限をネガティブに捉えている方は、「栄養バランスは大丈夫なの?」という疑問をお持ちかと思います。ひとつの栄養素を絶ったり、多く摂ったり…ということは、日本では「してはいけない」とされてきましたから、そのイメージはまだまだ定着しているはずです。

しかしバランスという言葉にも、さまざまな角度があります。

これまでの栄養学でいわれてきたバランスとは「口に入れるときの栄養素のバランス」で、分子栄養学でいわれるバランスとは「栄養素が体内で結果を出した後のバランス」とでもいえるでしょうか。

そのため分子栄養学に基づいたアドバイスには、「糖質をカットする」「高濃度のビタミンCを注入する」など、少しびっくりするものもあります。

栄養状態は個人差がある

同じ糖質制限の本を読み、同じような食事を摂った人が、必ず同じ結果を出すかと言うとそうではないのは、よくご存じだと思います。

分子栄養学の医師が糖質制限のアドバイスを行うときは、個人個人の栄養状況や、その先にある酵素の反応効率の違いを見て判断します。糖質をカットすることで、その人の体内でどのような反応が起き、その反応は細胞のバランスを整えるかどうかを調べる必要があるからです。

最近は、うつや子どもの発達障害でも栄養療法を行う人が増えています。栄養は吸収されてエネルギーになるだけではなく、全身の細胞に影響します。「腸脳相関」といって、腸の状態が脳にも影響を与えることも分かってきました。うつや発達障害の改善に栄養学を用いるときも、個人個人の状態が重視されます。必要摂取量を守るだけでは、治療効果が出にくいからです。

安易な糖質制限より、全身のバランスが大切

とにかく、なんでもかんでも糖質をカットすればいいわけではありません。中には糖質が必要な状態の方もいらっしゃいます。

単なるダイエットではなく、本当に病気改善を考えての糖質制限なら、分子栄養学の専門医のアドバイスの元に行うことおすすめします。体の状態を把握した上で、本当に糖質制限が必要かどうかを判断してくれる専門医の存在が重要だと思います。

ただし一般的な現代の食事に、質のよくない糖質があふれてることは、事実です。
精製された砂糖や小麦粉を摂る機会を減らし、良質なタンパク質や野菜を食べましょう。目指すべきは摂取カロリーのバランスではなく、「あなたの身体を支える、60兆個の細胞が元気に働けるバランス」です。

冒頭に出てきた「現代の栄養失調」は、まさに分子栄養学で改善できる領域です。食べるものを選べる時代だからこそ、自分の体内の結果を求めて食事ができると思えば、日々の食事に対する意識も上がるのではないでしょうか。

専門医に気になる症状を相談してみませんか?以下ボタンよりお気軽にお問い合わせください。

人気記事

新着記事