正しい知識

もしかして隠れ貧血?
いつもの血液検査では調べないフェリチン値とは

「隠れ貧血」の症状で悩む方が増えているといいます。一見貧血とは関係がなさそうな不調であっても、その原因には鉄分の欠乏があるかも知れません。

  • 日常的な頭痛や肩こり
  • 立ちくらみ・めまい、とにかく疲れやすい
  • のどがつかえる不快感
  • シミやアザができやすくなった
  • イライラする、うつ症状がある
  • 生理時の出血量が多い、PMSがつらい
  • 力が弱くなった気がする

これらの隠れ貧血の症状は、加齢や生活習慣の乱れで出る症状と似ているため、多くの方が「最近仕事が忙しかったから」「歳のせいかな」と軽視し、根本原因を探ることをしていません。最近多いメンタル不調も、よくよく検査をしてみると「隠れ貧血」であるケースもあるようです。

「健康診断の血液検査で、特に鉄分が少ないといわれていないけど…」という方も要注意。なぜなら、隠れ貧血は一般的な血液検査では発見できないからです。

そこで今回は、隠れ貧血を調べるときの指標となる「フェリチン」について調べてみようと思います。

\\\ 本当のところを、専門医に聞いてみました ///

教えて先生!

小西康弘Yasuhiro Konishi

医療法人全人会 理事長 / 小西統合医療内科 院長

2013年より 小西統合医療内科 院長 総合内科専門医 / 医学博士

「隠れ貧血」は、なかなか発見に至りません。それは、一般的な血液検査ではヘモグロビンや赤血球の値を調べるに留まるからです。

隠れ貧血は、鉄貯蔵タンパクである「フェリチン値」から判断する必要があります。フェリチン値は体内の貯蔵鉄量を表し、ヘモグロビン値が正常であっても、フェリチン値が低ければ隠れ貧血が疑われます。

フェリチンは鉄分の貯金分

フェリチンとは、鉄を蓄積する働きを持つタンパク質で、血中をはじめ全身に存在します。人間の体内には約3gの鉄が存在しますが、うち6〜7割はヘモグロビンの成分として赤血球内にあり、残りの一部はフェリチンと結合して脊髄や肝臓などに「貯蔵鉄」として蓄積されます。

鉄不足が起きると、身体は緊急手段として貯蔵鉄から鉄を運び出して使います。このように、血液中ではまだ貧血は起きていないのに貯蔵鉄が減ってしまう状態が、隠れ貧血(潜在性鉄欠乏)です。

どうして隠れ貧血になるのか

鉄は生命維持に欠かせないミネラル分で、コラーゲン生成、メラニン分解、皮膚や骨、粘膜の代謝にも必要不可欠です。しかし鉄分は酸素運搬を最優先に使われます。そのため、鉄不足になるとそれ以外の機能が低下し、身体にさまざまな不調を引き起こします。

鉄不足は現代人の大きな課題です。まず食材に含まれる鉄量が昔より減っており、食事から鉄を補う機会が減りました。過度なダイエットや、栄養バランスの悪い食事も鉄不足を招きます。鉄分はミネラルですから、汗や皮膚からも失われていきます。女性は月経や分娩などで血液量が減る時期もあるでしょう。だからこそ、意識して鉄分を補う必要があります。

隠れ貧血の予防

厚生労働省が推奨する鉄の1日の推奨量は、成人男性で7.5mg/日、成人女性では10.5mg/日です(日本人の食事摂取基準(2015年版)/厚生労働省)。これは、かなり意識しなければ摂れない量といえるでしょう。

さらに、鉄分の吸収を阻む食材もあります。たとえばコーヒーや紅茶・緑茶などのタンニン、海藻類の食物繊維、大豆などのフィチン酸などは、植物性食品の鉄の吸収を妨ぐため注意してください。

サプリメントの活用

鉄分の補い方には、非ヘム鉄で摂る方法と、ヘム鉄で摂る方法とがあります。非ヘム鉄というのは、鉄分がそのまま製剤化されているものです。一方、ヘム鉄はタンパク質とくっついた状態で製剤化されています。

保険薬にも鉄剤はありますが、これは非ヘム鉄で刺激が強く、胃腸障害などの副作用が高い傾向があります。一方、サプリメントの鉄剤はヘム鉄のことが多く、胃腸障害の副作用が低く吸収率が高いというメリットがあります。しかし、逆に過剰摂取の危険性があり、安易に飲めばいいというものではありません。鉄分が体内に過剰に溜まると活性酸素を増やす原因にもなるため、注意してください。

個人で海外からサプリメントを取り寄せる方も増えていますが、既往症があったり、別のサプリメントを服用している場合は医師に相談しましょう。薬剤との相性もありますし、過剰蓄積を防ぐためにも専門家の判断は必要です。

鉄分を軽視してはいけない

何度もめまいなどを起こしているのに、体質のせいなどにして根本解決をされない方が多くいますが、鉄分は生命維持に欠かせない成分です。不足を放置すれば、心身にさまざまな不調を引き起こします。

貧血で悩んでいる、隠れ貧血に思い当たる…という方は、一般の血液検査以上に詳細に検査ができる、分子栄養(オーソモレキュラー)療法を提供しているクリニックなどで、フェリチン値について一度相談してみることをおすすめします。

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