正しい知識
ガンも生活習慣病も「身体の炎症」原因となる活性酸素をやっつけろ!
最新の研究で、「ほとんどの病気の原因は活性酸素である」と分かってきました。
病気になると、誰しもが「原因を知りたい」と考えます。そして、塩分の取り過ぎなんじゃないか、あの物質が悪いんじゃないか、ウイルスに感染したんじゃないか…と、必死に犯人探しをするはずです。
もちろん、ウイルスや細菌感染が原因だとはっきり分かっている場合は、ウイルスや細菌感染に対する治療が必要でしょう。しかし、ガンや脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病と言われる慢性的な病気の原因のほとんどは、活性酸素にその原因をたどることができます。
活性酸素が増える理由は、あなたの身体に炎症が起きているからです。
炎症症候群という概念があります。「病気をひとことでいうと、炎症である」という考え方で、標準的な医学でも受け入れられはじめています。糖尿病も炎症、ガンも炎症。症状を見ればまったく違う病気であっても、根本はすべて体内の炎症であるといいますから驚きです。
そのメカニズムからいうと、炎症を抑え込めば活性酸素も減らせます。では、私たちが活性酸素を防ぎ健康を維持するためには、どうすればいいのでしょうか。
\\\ 最新の研究結果について、専門医に聞いてきました ///
教えて先生!
小西康弘Yasuhiro Konishi
医療法人全人会 理事長 / 小西統合医療内科 院長
2013年より 小西統合医療内科 院長 総合内科専門医 / 医学博士
中年以降、気になる症状に動脈硬化があります。動脈硬化は脳梗塞や心筋梗塞の原因になります。
動脈硬化の原因としては悪玉コレステロール(LDLコレステロール)が一番有名です。LDLの数値に一喜一憂し、揚物や油物を控えている方も多いでしょう。しかし、LDLが高いだけでは動脈硬化は起きません。
動脈硬化を進行させるのは「活性酸素」なのです。LDLは活性酸素の作用で酸化LDLに変化します。この酸化LDLが血管に沈着して動脈硬化を起こすのです。私たちが気にすべきは、血液検査でLDLの数値だけではなく、その状態を悪化させる活性酸素の量であるということです。
LDLの数値が高い老人でも、何の病気もなく元気にされている方がいます。どうしてだろう?と思いますが、食事をはじめ、生活習慣がよく、活性酸素が増えないような生活を送っているのだと考えられます。
環境からのストレスが少ない、腸内環境が整っているなどの好条件が加わると、活性酸素を増やす炎症物質が身体の中に入りにくくなります。活性酸素が増えなければ、多少LDLの数値が高くてもそれが悪玉(酸化LDL)化しないと推測できるのです。
細胞を酸化させ、老化を進める活性酸素
活性酸素は物質を酸化させるパワーの強い酸素で、「スーパーラジカル」とも呼ばれます。本来は体内の細菌・ウイルスや有害物質を撃退し、体内の酵素の働きを促進する役に立つ物質です。ただ、増えすぎれば正常な細胞をも攻撃し、酸化させてしまうのです。
活性酸素が多く細胞が酸化した状態を、分かりやすく「体が錆びる」と表現する場合もあります。
細胞の酸化は、老化の原因とされています。そのため活性酸素の抑制は、アンチエイジングとして美容の観点から語られる機会が多いのですが、動脈硬化やガンなどの病気にも関連していることを忘れてはいけません。
活性酸素が増えるのは、「ミトコンドリア機能」の低下のせい
では、活性酸素はどこから発生するのでしょうか。その答えはミトコンドリアです。
ミトコンドリアは、細胞内にある「エネルギーの製造所」です。腸管から吸収された栄養素は血流に乗って全身の細胞に運ばれ、細胞内のミトコンドリアでエネルギーに変換されます。しかしミトコンドリアの機能が低下し、不完全燃焼を起こせば、ミトコンドリアから活性酸素が漏れ出てしまいます。
この漏れ出た活性酸素が、身体中に炎症を起こすのです。身体のあちこちに不調を抱え、常に体調が悪い…という方は、消しきれない火が至る所に飛び火している状態だとイメージしていただいたらよいでしょう。
病気になってから火消しに必死になっても、大火事になればなるほど、消火は難しくなります。だからこそ、予防医学では「活性酸素を増やさない」ための事前対策が大切とされています。
炎症防止にはまずは食習慣から
活性酸素を防ぐには、やはり生活習慣、特に栄養面の見直しが必要でしょう。
医師からいわれる「バランスの良い食事」とは、結局は身体に炎症を起こさない食事を指しています。そして炎症を起こさない食事とは、腸内環境を整えるもの・抗酸化物質が含まれているものが含まれた食事だと思ってください。
これは、たとえば「ヨーグルトを食べたから大丈夫」などという単純な話ではありません。身体にいい食材であっても、添加物が入っていれば腸の炎症の原因にもなり、本末転倒です。
現代社会で、完全に添加物を避ける生活は不可能ですから、必要以上に神経質になる必要はありません。多少の添加物が身体に入っても吸収されないよう腸内環境を整え、炎症物質をデトックスできるよう、全身のバランスを整えることが大切です。
活性酸素の状態は、検査で把握できる
活性酸素量は血液検査で調べることができます。検査で高数値が出た人には、抗酸化治療を受けるという選択肢があります。病院で行われる抗酸化治療・抗炎症治療では、アルファリポ酸やビタミンCなど、抗酸化効果が高い医療用サプリメントが使われています。
治療を受けるほどではないけれど、アンチエイジング・美容を気にして、抗酸化力の高い栄養素を摂っている方も多いでしょう。
たとえばポリフェノールには、活性酸素を消去する力があるといわれています。そのような食材を摂ることは、無駄ではありません。しかし赤ワインをたくさん飲んだからといって万人に効果があるわけでもありません。本当に活性酸素が気になるなら、まずは検査で調べてみることをおすすめしています。
活性酸素を減らすため、プロの力を借りる
残念ながら、すべての医師が「炎症症候群」に詳しいわけではありません。最新の知識に触れ、なおかつミトコンドリアの機能不全からくる活性酸素の増加を分子栄養学の観点から診察できる医師に相談してみてください。
活性酸素を抑制できれば、病気予防だけではなく、老化防止や美容の面にもよい影響が期待できます。本当の意味での「健康」のために、大きな病気になる前に対処してみてはいかがでしょうか。