正しい知識

感染危険度はどう考える?感染症を防ぐ、免疫の働き

新型コロナウイルスの流行で、あらためて耳にすることの増えた「免疫力」という言葉。どうやら免疫力が高ければ、新型コロナウイルスをはじめ、感染症にかかるリスクを下げられるとか…

免疫力とは、私たちの身体が、感染症やウイルスに対して抵抗力を獲得することを指します。免疫力が高ければ、外部から体内に侵入してくるウイルスなどの異物に対してブロックが働き、病気になるのを防いでくれるのです。

免疫力の強弱は、身体の免疫細胞がうまく機能しているかどうかで決まります。
お年寄りが病気にかかりやすいのは、単純な体力低下に加え、免疫細胞の働きが弱まったからなのです。

風邪やインフルエンザなどの身近な感染症も、かかる人とかからない人の違いは「免疫力が高いか」どうかによって決まります。

免疫力は、特定の感染症に対して高めるものではなく、健康維持のためのトータルパワーといえるでしょう。

いま気になる、感染症と免疫力の関係。身近な感染症を予防するためにも、詳しく知っておきたいですね。

\\\ そこのところ、専門医に聞いてみましょう ///

教えて先生!

小西康弘Yasuhiro Konishi

医療法人全人会 理事長 / 小西統合医療内科 院長

2013年より 小西統合医療内科 院長 総合内科専門医 / 医学博士

感染症の危険度は「感染力×免疫力」で考える必要があります。

たとえばインフルエンザは、決して特別なウイルスではありません。くしゃみや咳から飛沫感染するというメカニズムは、風邪も、風疹も、インフルエンザも一緒です。

しかし、普通の風邪よりもインフルエンザが騒がれるのは、感染力が強いからです。ヒトからヒトに移りやすいため、流行が広まりやすく、そのとき免疫力の低い人が感染してしまえば命にもかかわります。

2020年に流行している新型コロナウイルスも、その感染力の高さから、他の感染症以上に対策が必要とされています。

ヘルペス症状が出るかどうかは免疫力にかかっている

一方で、例えばヘルペスウイルスは、風邪のウイルスのように外から入ってくるわけではありません。もともと人間の身体にじっと潜んでいるウイルスです。

ヘルペス症状が出るのは、風邪を引いた・メンタルが弱っているなどの理由で免疫力が落ちたときです。免疫力が低下すると、ヘルペスウイルスの動きを止めることができず、帯状疱疹や口唇ヘルペスを引き起こします。

帯状疱疹はヒトからヒトへは感染しにくいのですが、単純ヘルペスは感染力が強いため注意が必要です。直接的な接触だけではなく、ウイルスがついた食器などを介して感染する可能性もあります。

しかし、やはり免疫力が強ければ、感染しても発症せずに終わるケースも多いでしょう。一生ヘルペス症状が出ないも人も、たくさんいるのです。

大病を患って免疫力が激しく低下したときは、自分でヘルペスウイルスを抑え込むことができなくなるのです。そういう時には、ヘルペスウイルスを殺す薬を使うこともあります。必要なときに、必要な薬を正しく投与することが、身体全体を強く保つ秘訣です。

エイズの原因菌(HIVウイルス)の感染力は弱い

ウイルスが原因となる感染症には、AIDS(エイズ)もあります。

エイズウイルス(HIVウイルス)は、実は感染力のとても弱いウイルスです。必要以上にネガティブイメージがついていますが、その感染力は風疹やインフルエンザよりはるかに弱く、不必要に恐れる必要はありません。

エイズウイルスを持っている人と直接的な交渉があっても、免疫細胞が正しく機能していれば、発症する確率は高くはありません。そこそこ健康な人の免疫細胞にとって、エイズウイルスは弱い敵なのです。

発症せずに終わることの多い、C型肝炎

エイズウイルスと同じように恐いイメージを持たれているC型肝炎も、とても感染力が弱く、たいがいは一生キャリアのままで終わります。

万が一血液中にC型肝炎ウイルスが入っても、発症する人はごく一部です。さらに、そこから肝硬変・肝ガンにかかる人はほんの数%です。

C型肝炎ウイルスに感染したからといって、即、肝硬変・肝ガンになるわけではありません。健康な免疫力を持っている人であれば、不必要に恐れる必要はないでしょう。

つまりHIVウイルスにしてもC型肝炎ウイルスにしても、感染力は弱いですが、免疫機能が低下した人に感染すると、慢性化し重篤な疾患を来すということです。

「感染力×免疫力」を考え、適切な予防を

私たちは、目には見えない多くのウイルスと共存しています。今後も、新型コロナウイルスのような未知の感染症に出会う可能性も否定できません。
しかし、やみくもに怖がるのではなく、

「そのウイルスの感染力は高いか、低いか」
「人に移さないためにはどうしたらよいか」

という正しい知識をもって、リスクに対応していきましょう。

それと並行して、何よりも自分自身の免疫力を高めることが重要です。感染力の強いウイルスが侵入してきても、自分の免疫力で退治できれば、病気知らずのまま年を取ることも不可能ではありません。

免疫力に不安があれば、相談を

残念ながら、今の段階では、免疫力の数値化は難しいとされています。免疫細胞自体を調べることはできますが、コストがかかりますし、病気予防に直結はさせにくいでしょう。

ただし、身体を総合的に検査し、免疫力を高めるための生活習慣を身につけることは可能です。私たちはこれからも多くの感染症と共存していかなくてはいけません。

免疫力について不安があれば、専門医に相談するという選択肢もあります。感染リスクを下げるため、自身の免疫力について考えてみてはいかがでしょうか。

専門医に気になる症状を相談してみませんか?以下ボタンよりお気軽にお問い合わせください。

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