正しい知識

ストレスは、本当に体調不良の原因なのか

身体の不調が気になって病院へ行くも、「ストレスですね」「自律神経ですね」という診断で帰されたことはありませんか?

「ストレスが関係しているのは分かっている。しかしストレス環境からすぐに抜け出すことはできないため、とにかく体調不良だけでも何とかしたい…」
「そもそも、心理的なストレスがこんなにも身体に直接影響を与えるなんて、おかしい。やはり具体的な原因があるのでは…?」

忙しく過ごす私たちは、とにかく目先の対処法を知りたがります。そして自分に都合のよい考えに固執し、自身の心身に向き合う時間が取れていません。

しかしストレスが実際に病気を引き起こすことは、医学の世界では常識です。

心が受けたストレスは、脳を通じて神経系やホルモン系に影響を与え、具体的な身体への影響として現れます。ストレスを単に気持ちの問題として片付けてしまうことは、原因に蓋をすることにもつながるのです。

では、ストレスや自律神経の乱れによる症状が「気のせい」ではない理由を、もっと詳しく調べてみましょう。

\\\ そこのところ、専門医に聞いてみました ///

教えて先生!

小西康弘Yasuhiro Konishi

医療法人全人会 理事長 / 小西統合医療内科 院長

2013年より 小西統合医療内科 院長 総合内科専門医 / 医学博士

まず、私たちが外部からのストレスを受けると、脳の中の視床下部という部分がそのストレスを受けて、下垂体という部分にネガティブな指令を下します。

下垂体は、副腎などのホルモン臓器に「もっとホルモンを出しなさい」もしくは「ホルモンの量を減らしなさい」と指令を出す役割を担っています。そのため、視床下部がストレスを感じると、副腎皮質ホルモンの分泌量が減ったり、逆に増えたりするのです。

副腎皮質ホルモンの分泌バランスの乱れは、身体の免疫力に影響を与え、原因不明の体調不良が起きることも分かっています。

「ストレスが原因」と診断されるような体調不良は、決して気のせいではありません。ストレスを起因とする、ホルモン系のバランスの乱れが要因のひとつであると考えられます。

「ホルモン系」と「神経系」

身体バランスを整えている仕組みには「ホルモン系」だけではありません。ホルモンの分泌バランスの乱れについては前述の通りですが、もうひとつ大切な身体機能に、「神経系」、つまり自律神経があります。

ホルモン系と神経系はお互いに密接に連携しながら、身体に受けた刺激に対し、さまざまな形で反応を続けています。

たとえば、緊張すると顔が赤くなったり汗が出るのは自律神経の仕業です。異変を察知するとサーッと冷や汗が出たり、鳥肌が立つのにも自律神経が関係し、秒単位で身体を変化させています。

自律神経は、一時的な緊張や異変だけではなく、「上司に怒られた」「失敗をして悩んでいる」「家族関係がめちゃくちゃ」などの外部ストレスにも敏感に反応します。

嬉しい、リラックスできるなどのプラスの反応ならよいのですが、常に緊張し、気を張るような生活を続けていては、自律神経はますます過敏になり、バランスを崩してしまうでしょう。それが、「自律神経失調症」といわれる状態です。

ストレスが動悸を起こすメカニズム

大きなストレスを抱えた人が「いつも動悸がする、心臓が痛い」と訴えるケースがあります。不安を覚え、心電図を取って徹底的に調べたけれど、心臓はまったく悪くない。医師からは「動悸の原因はストレスですね」といわれてしまう。

では、心臓に器質的な問題がないのに、どうして動悸を覚えるのでしょうか。

ここにも、自律神経がかかわってきます。ストレスを受け、脳に緊張が伝わると、交感神経が異変を察知し「もっと早く脈を打ちなさい」と心臓に指令を出すのです。

ホルモン系である副腎も関係しています。副腎からはさまざまなホルモンが分泌されていますが、ストレスを感じた副腎は、アドレナリン、ノルアドレナリンなどを大量分泌します。それらのホルモンには、脈を速くする機能が備わっているため、急に動悸が激しくなるのです。

「自律神経がどれほど緊張しているのか?」とか、「ふくじんからどれくらいのほうるもんがでているか?」という点は、通常の検査では知ることができません。

免疫細胞への影響

自律神経系とホルモン系のバランスの乱れは、免疫細胞の活動にも影響を与えます。激しいストレスを受けている人がなんども風邪を引いてしまうという現象には、免疫力の低下も関係しているでしょう。

免疫力の低下は、風邪などの感染症リスクを上げ、ストレス耐性を弱めます。自律神経が先か、免疫が先か…という答えは出ませんが、「体調不良の原因は自律神経」という病院の診断は、あながち間違いではありません。

心のストレスを取り除くことが大切

心のストレスは、身体のストレスにもつながり、神経系やホルモン系のバランスも崩れ、芋づる式に状況を悪化させていきます。

ストレスの原因に思い当たるのなら、ストレス環境の改善が第一でしょう。しかしそれができないから、辛い思いをしている人が大半ではないでしょうか。

そして、心臓の検査で「問題はない」といわれたとしても、動悸が続けば不安は増し、余計にストレスが溜まるはずです。

そのような場合に注意したいのは、ドクターショッピングを繰り返さないことです。医師の返答がいつも「ストレスですね」「自律神経ですね」である以上、何か所のクリニックを巡っても、不安は解消しません。

自分の不調と向き合い、メンタル面からもアプローチすること。免疫力を上げてストレス耐性のある身体をつくること。そのための総合的な機能改善に取り組んでいる医師に相談することが、何よりの近道ではないでしょうか。

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