正しい知識

感染症に対抗するには?ワクチンと免疫力の重要性

2020年、新型コロナウイルスの大流行により「感染症」や「ワクチン」という言葉が日常的に聞かれるようになりました。

新型コロナウイルスに限らず、インフルエンザや2018年に流行した風疹など、感染症は常に私たちの身近にあります。

感染症では、ウイルスや細菌などの病原体が体内に侵入し、発熱や下痢、咳、発疹などの症状が引き起こされます。人から人への感染だけではなく、日本脳炎や破傷風など傷口から感染するものや、昆虫・動物から感染するものも含まれています。

怖がってばかりいては生活ができませんが、2020年の私たちは、無神経な生活は感染リスクを引き上げるということ学びました。

新型コロナウイルスのワクチンはまだ発明されていません。命にかかわることですから、感染リスクを下げる行動を取った上で、「感染症にかかりにくい」身体を作ることも大切です。新型コロナにかからなかったといって、他の感染症がなくなったわけではありませんから…

まずは感染症とワクチン、そして重症化のリスクを下げるための免疫力について詳しく知り、今後に備える必要がありそうです。

\\\ 感染症について、専門医に聞いてきました ///

教えて先生!

小西康弘Yasuhiro Konishi

医療法人全人会 理事長 / 小西統合医療内科 院長

2013年より 小西統合医療内科 院長 総合内科専門医 / 医学博士

感染症は、身体が未知のウイルスに出会うことによって引き起こされます。一度感染すると体内に抗体ができるため、種類によっては再感染しなくなります。
そのメカニズムを応用したのがワクチンの予防接種です。少量のウイルスや死んだウイルスの死骸を体内に少量入れて抗体を作り、感染を予防する方法です。

ワクチン接種は、人類の歴史で見ると「最近の対策」です。昔は風疹やはしかなどは定期的に流行するのが当たり前で、多くの人が「自然感染」により抗体を得てきました。

しかし自然感染に任せていれば、元気な人・免疫力がある人は回復して抗体を手に入れますが、弱い人はどんどん亡くなっていきます。だからこそ近代では、感染者を減らすために子どものうちからワクチン接種が行われるようになりました。

ワクチンの危険性 打つ?打たない?

「感染症のワクチンは危険だ、打たない方がいい」という意見もあります。

100%安全なワクチンはありませんから、一定の割合で有害事象が起こる可能性はあるでしょう。しかし人類全体で打たないリスクと打ったリスクを比べると、皆が打った方が感染症の発生や流行を抑えられるのは確実です。

以前、ワクチンの有害事象が取り沙汰され、風疹ワクチンの接種が控えられた時期などもありました。しかし抗体を持っていない世代が社会に出たことで、流行を引き起こす…という悪循環が起きています。

特に風疹については、大人の方が重症になるリスクが高いため、結局大人になってワクチン接種をすることになります。それならば、一番感染のリスクが低い子どものうちに予防接種をしておく方がよいといえるでしょう。

打たなくてもかからないのは、免疫力のおかげ

予防接種をしてもかかってしまう人と、どれだけ流行してもかからない人がいます。インフルエンザでは、A型に罹ったあとにB型に続けて罹るような人も見受けられます。

私をはじめ医療従事者は、リスク回避のためインフルエンザのワクチンを打ちますが、これだけでは感染リスクを完全回避できたとはいえません。しかし、インフルエンザの患者さんに多く接しても、かからない年もあります。

感染するかどうかには、流行度合いではなく、その人の免疫力や自然治癒力が関係しています。

免疫力と体力は違う

「免疫力」は医学用語です。れっきとした、根拠のある、人の持つ大切な力です。
混同しがちですが、免疫力は体力とは違います。筋肉質で体力があっても、毎年インフルエンザにかかる人がいますが、それは体力があっても免疫力が弱い人といえるでしょう。

免疫力はトレーニングで高まるようなものではなく、もっと総合的なものです。食事、睡眠、またメンタルヘルスなどの諸条件がよく整っている人は、免疫力が高い傾向にあります。そこに、腸内環境、個人の体質、考え方のクセなども加味され、トータルで全身を司っているのが、免疫力なのです。

今回の新型コロナウイルスは未知のウイルスですから、治療法はまだ分かりません。ただし免疫力が落ちている方の死亡率が高いことは、他の感染症と同じです。

ワクチン

本当は、免疫力を何らかのかたちで数値化し、「あなたの免疫力は低下しています。感染リスクが高いのでワクチンを打ちましょう」「あなたはワクチンを打たなくてもリスクは低いですよ」と、振り分けられたらいいのでしょう。

しかしそれは不可能です。すべての人の免疫力の計測にはコストもかかります。だから検査で振り分けるのではなく、一律にワクチンを打ち「皆で予防する」と決まっているのです。

残念ながら、感染症に関しては、人間側が防御するしかありません。適切な時期のワクチン接種で「感染リスク」を一気に下げること、そして並行して自分自身の免疫力を高めることが、さまざまな感染症と共生せざるを得ない現代人の生存戦略だといえるでしょう。

人気記事

新着記事