正しい知識

高濃度ビタミンC療法でガン細胞が消えるメカニズム

ビタミンCが、ガンに効く!?
トンデモ話のように聞こえますが、そのような治療は実際に存在します。

どうしてビタミンCがガン治療に役立つのかを知るためには、活性酸素の話からスタートしなくてはいけません。

活性酸素とは、物質を酸化させるパワーの強い酸素です。本来は体内の細菌・ウイルスや有害物質を撃退する、役に立つ物質でもあるのですが、増え過ぎると正常な細胞をも攻撃し、酸化させてしまうのです。

細胞の酸化は、身体の老化を早めます。そのためアンチエイジングや健康維持の観点から、活性酸素を増やさないような食生活や健康習慣が提唱されつつあります。

しかし活性酸素が100%悪いのか…というと、そうはいい切れません。今回解説するガンのビタミンC療法は、活性酸素の働きを逆手にとった画期的な治療法です。

ビタミンCがガン細胞を攻撃するメカニズムは、どうなっているのでしょうか?
活性酸素の働きを活用するとは、どのような方法でしょうか?

\\\ 本当のところを、専門医に聞いてみました ///

教えて先生!

小西康弘Yasuhiro Konishi

医療法人全人会 理事長 / 小西統合医療内科 院長

2013年より 小西統合医療内科 院長 総合内科専門医 / 医学博士

なにかと悪者扱いをされる活性酸素ですが、外部から侵入する菌を殺す働きを持っています。身体から完全になくなってしまっては困るのです。

活性酸素にも善玉と悪玉があります。

殺菌や消毒の機能を持ち、身体に必要なのは、善玉の活性酸素です。
増やさないよう努力をすべきなのは、悪玉の活性酸素です。

炎症症候群という概念があります。これは「病気をひとことでいうと、炎症である」という考え方で、標準的な医学でも受け入れられ始めました。

悪玉の活性酸素が増えると、炎症が起きやすくなります。その状態が放置されると活性酸素はどんどん増殖するため、炎症の消火は追いつきません。結果、体内が大火事になってしまった状態を、いわゆる「病気」というのです。

カタラーゼ活性と過酸化水素

活性酸素は単一の物質ではありません。数多くの種類が存在し、スーパーオキシドアニオンラジカル、一重項酸素、ヒドロキシルラジ、過酸化水素の4種類は狭義の活性酸素といわれています。この中でも過酸化水素は善玉の活性酸素で、体内に入った菌を殺菌してくれます。

活性酸素の毒性を抑える物質に、カタラーゼがあります。カタラーゼは唾液などにも含まれる酵素で、過酸化水素を中和し、増加を抑える機能を持っています。普通の細胞にはこのカタラーゼという酵素があるため、過酸化水素の持つ毒性に抵抗力を発揮できます。これを「カタラーゼ活性」といいます。

活性酸素による殺菌効果は、悪い細胞にだけ働き、カタラーゼ活性がある普通の細胞は死にません。

ちなみに過酸化水素を水に溶かしたものの3%水溶液が、オキシドールです。薬局でも購入でき、外傷の殺菌・消毒に広く使われる、馴染みのある物質です。オキシドールで殺菌するとき、菌と一緒にまわりの細胞も消毒されて死んでしまうのでは?という疑問が湧くかも知れませんが、そうはならないのはカタラーゼ活性の作用によるのです。

高濃度ビタミン療法

ガン細胞には、カタラーゼ活性はありません。つまり過酸化水素が大量に体内に発生する状況を作れば、普通の細胞は障害を受けず、ガン細胞だけを死滅させることが可能になるのです。

このカタラーゼ活性を持たないというガン細胞の特性が、「高濃度ビタミンC療法」に利用されています。

ビタミンCはとても面白い働きをもっており、低濃度、つまり普通のサプリメントやドリンクで飲んでいる間は、ビタミンCは活性酸素を消去します。しかし高濃度のビタミンCを点滴で一気に体内に注入したとき、過酸化水素を発生させるのです。

カタラーゼ活性のないガン細胞は、発生した活性酸素のおかげで死滅します。この治療法は、「副作用のない抗ガン剤」といわれています。いくら高濃度のビタミンCで活性酸素を増やしても、他の元気な細胞には影響を与えないからです。

血流のないガンには効果が薄い

とはいえこの治療法は、完全ではありません。

高濃度ビタミンCをガン細胞に届けるには、そのための道が必要です。本来は血流がその役目を果たしますが、ガン細胞は血管が乏しいことが多く、血流がありません。そのためガンがある程度以上の大きな塊になっていると、ビタミンCはガンの内部にまでたどり着くことができないのです。

一方、血液のガンは塊を作ることがありません。そのため高濃度ビタミンC療法は、白血病や悪性リンパ腫などには効果が出やすいといえるでしょう。

予防としての高濃度ビタミンC療法

高濃度ビタミンC療法は、ガンが大きくなって塊を作ってからではなく、予防の一環として利用する方が効果的です。ガン細胞がまだ若くバラバラに存在している間は、ビタミンCを血液に乗せてガンを攻撃しやすいからです。

予防的な意味で高濃度ビタミンC療法を行うクリニックも増えています。しかし残念ながらまだ費用も高く、保険も効きません。もちろん、点滴を打ったからといってガンを完全に予防できるとは限りません。

予防医学の観点から

予防医学の観点からは、まずは活性酸素ができにくい身体を作りましょう、とお伝えしています。ガンは身体の炎症であり、その炎症の犯人が活性酸素である以上、生活習慣を正して悪玉活性酸素を増やさないことがまずは重要です。

そのうえでカタラーゼ活性の仕組みを利用し、予防としての高濃度ビタミンC療法を活用できれば、ガンの悪化を食い止めることができるかも知れません。

まだ一般的ではない治療法ですが、病気のメカニズムを知れば、治療を選ぶときのヒントが生まれます。

活性酸素の抑制と高濃度ビタミンC療法については、当院でも相談が可能です。臨床経験の豊富な医師に、まずは相談してみてください。

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