正しい知識

自己免疫疾患の原因は腸にあり!免疫寛容のメカニズムとは

「免疫寛容」という言葉があります。あまり馴染みのない言葉ですが、その人の免疫力を決める大切な機能です。

免疫寛容とは、はじめて接する食べ物などの異物に対して「これはOK」と認識する機能です。しかし免疫細胞にエラーが起きると、それまで「OK」としていた物質に対し攻撃を始めてしまいます。自己免疫疾患とは、体内でこのような「内部戦争」が起きた結果の病気です。

免疫寛容とは、どのような仕組みなのでしょうか。アレルギーや感染症、自己免疫疾患などの病気を防いでくれる免疫細胞は、どうして急にエラーを起こしてしまうのでしょうか。

免疫寛容と腸内環境の関係からは、さまざまな病気予防のヒントが見えてくるはずです。

\\\ そこのところ、専門医に聞いてみました ///

教えて先生!

小西康弘Yasuhiro Konishi

医療法人全人会 理事長 / 小西統合医療内科 院長

2013年より 小西統合医療内科 院長 総合内科専門医 / 医学博士

免疫力とは、私たちの身体が感染症やウイルスに対して抵抗力を獲得することをいいます。

免疫細胞は、入ってきた異物に対し「これは危ないから攻撃しよう」「これは身体に必要なものだから攻撃しないでおこう」と、それぞれについての情報を記憶します。しかし記憶機能がうまく働かなければ、身体に必要なものまで攻撃したり、排除すべき対象をスルーしてしまい、病気になる可能性が高まってしまいます。

ではその「記憶」はいつされるのかというと、生まれてから3歳くらいまでの、免疫寛容の時期だといわれています。

免疫寛容について

生まれた子どもは少しずつ未知の食材に出会い、自分の身体にはない栄養素を取り込んでいきます。

食べ物も本来は異物ですが、免疫寛容により、その頃までに身体に取り込んだ物質は免疫細胞が記憶します。そして「これは今後入ってきても大丈夫」という区分がなされます。

免疫寛容の時期に形成された腸内環境は、体外から入ってきた菌も含めて、自分の身体の一部として免疫に記憶されます。幼児であっても腸内環境に個体差が生まれるのは、このためです。

自己免疫疾患は、免疫細胞の記憶エラー

免疫は、免疫寛容の時期の記憶をもとに自分を守り続けますが、記憶プログラムにエラーが起きることがあります。本来は「問題ない」と記憶していたはずの体内物質に対し、攻撃をしかけ始めるのです。

そうして起こる「自己免疫疾患」のひとつ、関節リウマチを例にとって説明しましょう。関節リウマチは、免疫細胞が関節軟骨の一部のタンパク質に対し、「これは異物だ」と認識することから始まります。関節の軟骨は生まれたときからあったもので異物ではありませんが、何らかのエラーにより免疫細胞が暴走を起こすのです。

このとき、軟骨全体が攻撃されるわけではありません。軟骨に含まれる一部のタンパク質の抗原に対して攻撃が行われ、結果、関節リウマチが引き起こされます。

免疫がタンパク質を敵として認識するメカニズム

関節リウマチのほかにも、甲状腺に関する病気などさまざまな自己免疫疾患がありますが、「免疫細胞の記憶エラー」が原因であることは共通です。

生まれたときからある関節や甲状腺は免疫寛容の状態にあって、本当なら免疫細胞から敵として認識はされないはずです。

甲状腺が敵として認識されるのは、甲状腺に原因があるわけではありません。
原因は、腸に入ってきたタンパク質の一部が、甲状腺の一部のタンパク質と共通性を持つことにあります。

腸に入ってきたタンパク質が免疫細胞から異物として認定されると、「このタンパク質と同じものが、甲状腺にもある」と認識されるため、甲状腺をも攻撃されてしまうのです。

自己免疫疾患の原因は腸内にあり

つまり、体内の一部を異物として認識するトリガーは腸にあるのです。

腸に入ってきた、甲状腺と共通性もつタンパク質も、もとは身体の中にあったはずで、本来は敵として認識されないはずです(そうではないと、何か新しいものを食べるたびに体内攻撃が行われてしまいます)。

ところが腸内環境の悪化により免疫バランスが崩れると、免疫細胞のエラーが起き、体内攻撃が始まってしまいます。

この考え方はフードアレルギーでも一緒です。アレルギーを持つ方は「卵アレルギーだから、卵を食べない」という発想になりがちですが、本来は卵が悪いわけではありません。そうではなく、攻撃する方がエラーを起こしているのだから、まずは腸内をメンテナンスする必要がある、と認識してください。

腸内環境と免疫疾患

最近では免疫疾患に関する治療法も、とても進化しました。分子標的治療といいますが、攻撃型に変わってしまった免疫を特定し、ピンポイントで治療を行い、元の状態に戻すこともできつつあります。

しかしそれは、暴れている免疫疾患をなだめるための治療です。暴走を根本から止めるためにも、まずは腸内環境の改善が求められます。

分子栄養学の分野では、腸内細菌が免疫疾患に大きく関係していることはすでに常識です。あくまで私の治療経験の範囲のことですが、カンジタ菌というカビを腸内から除菌すると、関節の痛みが治る人もいます。

自己免疫疾患やフードアレルギーにお悩みの方は、自分の免疫システムが食べ物や物質に対してこれ以上暴走を起こさないよう、腸内環境に目を向けてみましょう。思わぬアプローチで、症状が改善するかも知れません。

専門医に気になる症状を相談してみませんか?以下ボタンよりお気軽にお問い合わせください。

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