正しい知識

重金属の健康リスクとバイオロジカル検査

私たちが知らず知らずのうちに取り込んでいる汚染物質、気になりませんか?

たとえばPM2.5という大気汚染物質は、自治体や気象庁が「どれくらい飛ぶか」の予測を出し、ときに注意喚起がされるくらい、呼吸器系などへの悪影響が心配されています。

PM 2.5などの粒子状物質の発生源は、ほとんどが人工物。ばい煙を発生させる工場や、自動車、船舶などの排気ガスなど、人間が作った機械や施設から出るものが大半です。

人による汚染としては、海洋プラスチックの問題も無視できなくなってきました。
プラスチックは海に捨てられ、紫外線や波にさらされて劣化して微粒子となり、海底に大量に沈殿していきます。それらのマイクロプラスチックを食べた魚を私たちが食べ、目に見えない形で循環していることを考えると、ゾッとしますね。

しかし多少の危機感を覚えてたとしても、「便利さ」を捨てることはなかなかできないでしょう。いまさら、原始的な生活には戻れませんから。

それより今の私たちが知りたいのは、体内に蓄積される「毒」との付き合い方。そして、今の自分の体内にどれくらい「毒」が溜まっているかを把握する方法です。

\\\ そこのところ、専門家にじっくり聞いてみました ///

教えて先生!

小西康弘Yasuhiro Konishi

医療法人全人会 理事長 / 小西統合医療内科 院長

2013年より 小西統合医療内科 院長 総合内科専門医 / 医学博士

人体に悪影響を及ぼす毒性の高い物質は、人工のものばかりではありません。自然界にもたくさん存在します。

たとえばカビ。カビ毒にはアフラトキシン、オクラトキシンなどさまざまなものがありますが、この「トキシン」とは毒素を指します。トリカブトのような植物由来の毒や、ボツリヌストキシンのような致死性の高い毒も存在します。

人間の身体には、これらの毒素が入ってきたときに自力で排出する「解毒機能」があります。もちろん大量であれば死に至りますが、多少なら自力で毒素を排出できるのです。

しかし、自然界の毒に加え、人工的な毒素が日常的に体内に入ってくるとどうなるでしょうか。本来の解毒機能では間に合わず、病気の原因が増えるばかりです。

重金属とは

人工的な汚染物質として無視できないのが重金属です。重金属には、主に鉛・ヒ素・カドミウム・水銀などがあげられます。これらは汚染された大気や化学肥料、化粧品や洗剤、地中の鉱物が溶け出した地下水や、それを使った農作物などに入っており、完全には避けられません。

他にも、煙草や歯の詰め物(アマルガム)、日本人が好んで食べるマグロなどの大型の魚介類に含まれる水銀などを含めると、生活の中で重金属をシャットアウトすることは非常に困難です。最近では、魚は食べないのに水銀が体内に蓄積しているケースも少なくありません。

上記の重金属が体内に溜まり、デトックス機能が追いつかないと、さまざまな病気を引き起こすと分かってきています。

蓄積の放置は、慢性病の元となる

幸い日常生活の中で溜まる重金属では、余程の量がない限りすぐに死に至ることはないため、過度に恐れる必要はありません。

しかし蓄積を放置すると、アルツハイマー病やパーキンソン病、発達障害、慢性疲労症候群、アトピーや喘息などのアレルギー疾患などにかかる可能性が高まります。近年、自閉症スペクトラムが増えているのも、これらの重金属が体内に蓄積していることが関連しているという報告もあります。病気予防という観点から見ると、重金属のデトックスは非常に大切です。

問題は、一般的な診察の中では重金属検査が受けられないことでしょう。原因不明の体調不良の原因が重金属にあったとしても、発見されずに「気のせい」で片付けられているケースも少なくありません。

しかし慢性的で治る見込みがないとされてきた症状も、重金属を排出する治療、つまりキレーション治療を行えば、劇的に改善する場合があるのも事実です。

バイオロジカル検査
現時点で、身体にどれほどの重金属が蓄積しているのかを正確に判断する方法はありません。それは重金属は血液中ではなく、脂肪組織や肝臓、脊髄脳などの臓器中に蓄積するからです。

しかし、重金属が身体に影響している結果を検査で見つけることは可能です。それらはバイオロジカル検査と呼ばれ、それぞれに特徴があります。

  • 毛髪中重金属検査
    重金属を排出するための臓器には肝臓や腎臓がありますが、割合は少ないものの、重金属の一部は汗や髪の毛、爪にも排泄されます。毛髪を調べ、実際にどのくらいの重金属が排泄できているのか確かめる検査です。
  • オリゴスキャン検査
    手の平に吸光光度計という特殊な機械を当ててスキャンし、末梢組織に溜まっている重金属を調べる検査です。末梢組織に重金属が溜まっていれば、細胞の状態が悪くなっていると考えられるため、その状態を改善する治療法を考えます。
  • 尿中重金属排泄検査
    重金属蓄積の治療薬として用いられるキレート剤を内服後、尿の中にどれぐらいの重金属が排泄されたかを調べます。治療に対しての反応性を確認でき、治療前にどのくらい重金属が溜まっていたかを知る目安にもなります。

一般の病院で行われる検査が、「病気になった後の状態」を探すのに対し、バイオロジカル検査は自身の体内環境を把握するために役立ちます。

体内把握で、予防医学を

今現在、バイオロジカル検査は保険が効かず、自費診療になります。日本国内では受けられず、検体をアメリカに送り結果を取り寄せる必要があるため、まだまだ気軽な検査ではありません。

しかし最近「予防歯科」という概念が根付き、虫歯になる前に歯科でメンテナンスをする人が増えたように、「自分の身体のどこに目詰まりがあるかを先に知り、病気を防ぐアクションを取る」という予防医学の考え方も重視されるようになってきました。

同じ環境に住み、同じ量の排気ガスを吸っていても、人の解毒力には個体差があります。自分の身体の状態を客観視し、病気になる前に手を打つためのデータとして、バイオロジカル検査を活用しましょう。

健康な身体、いきいきした人生は、先回りの対策で手に入るからです。

専門医に気になる症状を相談してみませんか?以下ボタンよりお気軽にお問い合わせください。

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