正しい知識

大人のカルシウム摂取
過不足が招く健康被害

日本人のカルシウム摂取量は、欧米人の約3分の1だといわれています。
欧米の硬水にはカルシウムがふんだんに含まれていますし、チーズなどの乳製品食べる習慣もあるため、「カルシウムを摂ろう」と努力しなくても必要量は補えています。

軟水を飲み、和食を食べてきた日本人は、意識的にカルシウムを摂取する必要があります。それは子どもだけではなく大人も同じです。

「日本人の食事摂取基準」によると、推奨される大人の1日のカルシウム摂取量は以下の通りです。

【12歳〜14歳】男性 1000mg / 女性 800mg
【18歳〜29歳】男性 800mg / 女性 650mg
【30歳〜49歳】男性 650mg / 女性 650mg
【50歳〜69歳】男性 700mg / 女性 650mg
【70歳以上】男性 700mg / 女性 650mg

人生で一番カルシウムが必要とされる12歳〜14歳と、50歳以上を比べてみても、推奨摂取量は3割程度しか下がっていません。

しかし実際の年代別カルシウム摂取量は、40〜49歳で456mg、50〜59歳で496mgと、推奨量よりも少なくなっています。年齢を重ねると次第に少食になり、腸でのカルシウムの吸収が悪くなるためです。

大人のカルシウム不足はどのような健康リスクを招くのでしょうか。摂取するときには、何に気を付ければよいのでしょうか。

\\\ 本当のところを、専門医に聞いてきました ///

教えて先生!

小西康弘Yasuhiro Konishi

医療法人全人会 理事長 / 小西統合医療内科 院長

2013年より 小西統合医療内科 院長 総合内科専門医 / 医学博士

カルシウムは、体中にもっとも多く存在するミネラルです。カルシウムの99%は歯や骨などの硬組織に、残りの1%は、筋肉や血液、神経などの軟組織に存在しています。「カルシウムが不足すると骨が弱くなる」といわれる理由です。

幼少期のカルシウム不足は骨の発達障害などに直結しますが、大人の心身にも大きな影響を及ぼします。たとえば高齢女性(特に閉経後)なら、骨粗しょう症やアルツハイマー病、変形関節症などのリスクが高まりますし、動脈硬化、高血圧、糖尿病などの生活習慣病も招きやすくなります。

カルシウム不足では神経の興奮が高まりやすくなるため、てんかんの原因となったり、筋肉のけいれんなども起きやすくなるといわれています。

働き盛りだからこそのカルシウム

身体が資本である働き盛りの大人にとって、カルシウムは大切な栄養です。

「カルシウムが不足するとイライラする」といわれますが、実際にカルシウム不足だけが原因で精神が不安定になるとは考えにくいでしょう。しかしカルシウム不足は神経伝達物質に悪影響を及ぼすため、「イライラする・うつになる」という神経過敏状態を招くことは分かっています。

ダイエット中の方や、ジャンクフードばかりの女性は特に注意が必要です。食事からのカルシウムが不足しますし、ダイエットや偏食のストレスの影響でカルシウムが尿に溶け出し、骨の量が減ってしまいます。

大人のカルシウム不足はメンタル不調の一因にもなり、健康に働き続けるだけの体力が失われる可能性も出てきます。子どもと違い、自分で食べるものを選べる大人だからこそ、カルシウムが不足しないような食生活を送るべきでしょう。

カルシウムは日常の食事で口にする食材に広く含まれるため、バランスの取れた食生活を送っている限り、まったく不足するということはありません。

カルシウムパラドックス

カルシウムパラドックスとは、サプリなどでカルシウムを取りすぎると、骨などからカルシウムが溶け出して、骨中のカルシウム濃度がかえって低下する現象をいいます。

細胞や動脈、血管壁などにカルシウムが沈着している場合、カルシウムの摂取過剰が疑われます。しかし実はこの状態は、カルシウム不足のため骨や歯からカルシウムを溶かして補った結果であることから、「矛盾している(パラドックス)」といわれるのです。

過剰摂取のリスクを知る

カルシウム不足も問題ですが、過剰摂取にも注意が必要です。

カルシウムの過剰摂取は、

  • 高カルシウム血症、高カルシウム尿症
  • 鉄分や亜鉛など、他のミネラルの吸収を阻害してしまう
  • 泌尿器科結石、軟組織の結石化
  • 前立腺がん
  • 便秘

などの健康障害の原因となる可能性があります。

とはいえ厚生省の定めたカルシウム摂取量の上限値2300mgを、普通の食事で超えることはまずあり得ません。過剰摂取に気を付けてほしいのは、カルシウムをサプリメントで補給している方です。先ほど述べた、カルシウムパラドックスにも気をつけないといけません。

健康のために飲んでいるサプリメントが逆効果になっては意味がありませんから、自己判断で飲み過ぎることのないようにしてください。

病気予防や、具体的な効果を求めてカルシウムを摂取するのなら、専門医のアドバイスを受けるという選択肢もあります。健康維持のためのカルシウム摂取は、何より過不足なく、適切量であることが大切だからです。

専門医に気になる症状を相談してみませんか?以下ボタンよりお気軽にお問い合わせください。

人気記事

新着記事