正しい知識

腫瘍マーカーと、「疑陽性・偽陰性」

ガンにかかると、タンパクや酵素の急激な増加やホルモン値の変化など、通常ではあらわれない変化が体内で起こります。

その目印となる物質を追跡してガンの可能性を見つけ出し、治療の手がかりにできるのが「腫瘍マーカー」。ガン細胞から血液・尿中に漏れ出したマーカー量を測定する、とても簡単な検査です。わざわざCTスキャンやMRI検査を受けなくてもよいので、受ける側のメリットは大きいでしょう。

一時期、ガンの早期発見に役立つということでよく使われた腫瘍マーカーですが、近年では結果の正確性に疑問が持たれ、以前ほど使われなくなっています。

では検診先の医院などで「腫瘍マーカーはどうされますか?」と聞かれたら、私たちはどうすればいいでしょう。

ガンの早期発見がしたくても、不正確な検査に意味はありません。これは最近話題の新型コロナウイルスにおけるPCR検査と同じです。安心のために検査を受けても、検査結果を信じることができないのであれば、かえって不安は増してしまいますから…

一般人にはイマイチ分かりにくい、検査の正確性。今回は腫瘍マーカーのからくりと、受けるときに知っておきたい知識について調べてみましょう。

\\\ 本当のところを、専門医に聞いてきました ///

教えて先生!

小西康弘Yasuhiro Konishi

医療法人全人会 理事長 / 小西統合医療内科 院長

2013年より 小西統合医療内科 院長 総合内科専門医 / 医学博士

腫瘍マーカーを測れば、一定数のガンの発見は可能になります。しかしデメリットもあります。

まず腫瘍マーカーは、ガン早期発見には役立ちません。腫瘍マーカーの数値に異常が出るのは、ガンが体中に広がった「進行ガン」のケースがほとんどです。ガンの治療効果を測定したり、再発防止の目安にはできますが、早く発見して早く治そうという最近のガン予防の考え方には、あまり合致しないのです。

もうひとつ、大きなデメリットがあります。
それは「偽陽性」「偽陰性」の結果が多い、ということです。

疑陽性と偽陰性

ガンではないのに腫瘍マーカーが異常値を出すことを「偽陽性」といいます。ガンではありませんから、何度精密検査を繰り返しても、当然ガンは発見されません。

ガンでないのはいいことなのですが、患者さんの不安は決して払拭されません。「どこかにガンがあるのでは…」と、疑心暗鬼のまま生活を送る羽目になります。

この逆の「偽陰性」はもっと大変です。

本当はガンなのに腫瘍マーカーが陰性(正常値)を示せば、「よかった、ガンではない」と安心してそのまま放置してしまうでしょう。安心感から健康診断や人間ドックをおろそかにして、気が付いたときには末期ガン。手の付けようがなくなったというケースも、実際に起こっています。

そのため医療の現場では、腫瘍マーカーを重要視する風潮は消えつつあります。

検査結果があいまいであることの怖さ

腫瘍マーカーは良性のガン細胞からまったく出ないわけではありませんし、数値が高くても、喫煙や生活習慣、加齢や糖尿病などに原因がある場合は、ガンとは関係がありません。逆に低いからといって「ガンではない」と言い切れない、あいまいな怖さを持つ検査です。

不確実な判定は、実際にガンが見つかること以上に恐ろしいものです。医師に「偽陽性です」といわれても、その数値に翻弄されて何度も検査を繰り返し、セカンドオピニオンを取りに走り回る人もいます。

部位ごとに検査するしかないガン検査

今現在、ガンかどうかを正確に診断するには、部位別に検査をするしかありません。

胃ガンの早期発見には胃カメラが最適です。かなりの高確率で、ガンか、そうではないかがハッキリ分かるからです。胃透視検査もよく使われてきましたが、胃透視検査はもはや時代遅れの検査といってもよいでしょう。すでに数ミリの胃ガンが発見できる時代になっていますから、あまりおすすめはできません。

肺ガンを早期で見つけようと思ったら、CTスキャンを撮るしかありません。胸部レントゲン検査では不十分です。このように、部位別に調べて初めて具体的な結果にたどり着けるのがガン検査です。

全身のCTスキャンでは、頭の先からつま先までをスライス状に撮影するため、全身の検査が可能です。しかし、それでも見つかりにくいガンはあります。だからこそ、CTスキャンで撮ったデータを元画像診断や病理検査など複数の検査と組み合わせ、不安部位について徹底的に検査をするのです。

簡単だからといって、腫瘍マーカーという体内物質の変化だけでガンを見つけるには不確定要素が大き過ぎることを、イメージしていただけたでしょうか。

不安要素を排除し、本当の意味での検査を

ガンの根本原因はひとつではありません。腫瘍マーカーはあくまで「参考」に留め、生活習慣を含めて総合的なアドバイスをしてくれる医師を探しましょう。

もし、以前受けた腫瘍マーカーの数値に不安要素があるならば、本当の早期発見のためにも、専門の医療機関で部位別検査を受け直してください。

医療技術の発展、検査の進歩は喜ばしいことですが、私たちの健康的生活に逆効果であれば、「健康のための検査」とはいえません。数値におびえながらの生活では、治るガンも治らなくなってしまいますよ。

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