正しい知識

お味噌汁を煮立ててはいけない本当の理由

お味噌汁を煮立ててはいけません。
和食を習うとき、そう教わりましたよね。

「お味噌汁を煮立ててはいけません」といわれる理由には、

  • 旨味や風味が失われ、まずくなる
  • 味噌の香りが飛んでしまう

という、味に関することが知られています。

しかし煮込みで失われるのは、風味だけではありません。一緒に、乳酸菌や酵素も殺されてしまいます。

お味噌汁の中の菌は、食べる直前に溶かしてこそ生きたまま摂取できます。何度も火が通された、定食チェーンのお味噌汁では、菌はことごとく死滅しているでしょう。煮込んだお味噌汁を飲むくらいなら、キュウリや人参スティックにつけて生のまま食べる方が、お味噌を発酵食品として活用できるようです。

「発酵食品だからと思うからこそ、外食時にお味噌汁を飲んでいた」という方は、盛大にがっかりしてくださいね!

本日は、発酵食品の菌を有効活用するためのマメ知識をお届けします。そして今日の夕食から、「お味噌は飲む直前に溶かし入れる」をしっかり守るようにしてください。

\\\ 発酵食品について、専門医に聞いてきました ///

教えて先生!

小西康弘Yasuhiro Konishi

医療法人全人会 理事長 / 小西統合医療内科 院長

2013年より 小西統合医療内科 院長 総合内科専門医 / 医学博士

発酵とは、「酵母・細菌・カビなどの微生物によって物質が変化し、それぞれ特有の最終産物をつくり出す現象」です。もっと簡単にまとめると「菌によって、ある素材が違う食品に変化すること」といえるでしょう。

たとえば納豆は、大豆が納豆菌によって変化した食品です。大豆が原料とは知っていても、もはや同じ食品とは思えないくらいの「変身」を遂げています。この例から分かるように、菌の力は絶大です。そして菌によって発酵させられた「最終産物としての食べ物」は、栄養価が高まったり、味わいが深まったり、消化吸収しやすくなったり…と、私たちの健康に役立ってくれています。

発酵食品をうまく食生活に取り入れよう

味噌の中には多くの善玉菌がいますが、熱に弱いのが残念なところです。乳酸菌や麹菌は50~60℃、酵母菌は70℃以上で徐々に死滅するといいますから、一度高温で煮立ててしまった味噌汁には、有益な菌はほとんど残りません。やはり味噌を入れる前に火を止めて粗熱を取り、飲む直前に味噌を溶かし入れる方法がよさそうです。ただし失活した菌がまったく役に立たないかというと、そうではありません。腸内の善玉菌のエサとなるなど、多少の有効性は残ります。

外食やコンビニ食が多い方も、健康のためには発酵食品をプラスしたいところです。そのときは食べ方を工夫してください。納豆も、添加物たっぷりのタレをかけていては効果半減です。せっかくのヨーグルトも、砂糖が入っていてはかえって腸に負担をかけてしまいます。酵母菌や乳酸菌が入っているはずのぬか漬けも、市販商品には着色料や食品添加物が大量に使用されています。

毎日の料理に使う味噌や醤油などの基本調味料や、チーズやキムチ、ヨーグルトなど市販食材は、なるべく添加物が入らず、昔ながらの製法でつくられた商品を選んでみましょう。それだけで健康効果は大きく向上するでしょう。

和食を有効利用

日本人の免疫力の高さや長寿の秘訣は、和食とそのメニューに含まれる多くの発酵食品に見ることができます。

「バランスのよい食生活を」とは聞き飽きたセリフですが、日本人にとってのバランスのよい食生活とは、質の良い発酵食品を利用し、腸内の善玉菌のエサとなるオリゴ糖や食物繊維をしっかり食べましょう…というところに落ち着くでしょう。そのためにも、菌を殺さず、不要な添加物を加えずに摂取することが望まれます。

シンバイオティクスの考え方を取り入れる

腸内環境に関していえば、最近では「シンバイオティクス」という考え方が浸透してきました。これは「腸内に善玉菌を届ける(プロバイオティクス)」と、「善玉菌のエサとなるオリゴ糖などを摂る(プレバイオティクス)」を組み合わせて行い、効果を狙う方法です。たとえば味噌を塗ったコンニャクなどは、まさしくシンバイオティクスの考え方に合った食べ方です。プロバイオティクスとして善玉菌が豊富な味噌を、プレバイオティクスとしての食物繊維が豊富なコンニャクと一緒に食べれば、相乗効果が期待できます。

最近ではシンバイオティクスのサプリメントなども買えるようになってきました。発酵食品を有効利用したいなら、まずはお味噌汁は煮立てて飲まない。そのうえでシンバイオティクスを取り入れた食事やサプリメントで、腸内環境のバランスを取るようにすることをおすすめします。

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