正しい知識
チョコレートと健康
定期的にネットで流れる「チョコレートには健康効果がある」という説。日頃チョコレートを食べることに罪悪感を抱いている方にとっては、とてもポジティブに感じられるのではないでしょうか。
チョコレートのさまざまな風評は、チョコ好きを迷わせます。
【ポジティブな説】
- カカオにはポリフェノールが含まれていて、健康効果が高い
- カカオの食物繊維が、便秘や肥満を防いでくれる
- チョコの香りは、集中力や記憶力を高める。認知症の予防にもなる
【ネガティブな説】
- ニキビが増える、肌荒れの原因となってしまう
- カロリーが高く、食べ過ぎると肥満になりやすくなる
- 糖分が多く、血糖値が上がってしまう、糖尿病の原因になる
どうでしょう。どちらも「本当らしく」聞こえますよね。だからこそ私たちは、チョコレートの誘惑に惑い、健康のことを一時的に棚に上げたり、後ろめたさを感じながら食べる羽目になっているのです。
どんな食品にも多面性があり、ひとつの説を信じ切ってはいけないことは理解していますが…できるだけ上手にお付き合いをしていきたいチョコレート。さて、何に気を付けて食べれば健康被害を食い止められるのでしょうか。
\\\ 本当のところを、専門医に聞いてきました ///
教えて先生!
小西康弘Yasuhiro Konishi
医療法人全人会 理事長 / 小西統合医療内科 院長
2013年より 小西統合医療内科 院長 総合内科専門医 / 医学博士
チョコレートの原料であるカカオ自体に、糖分は含まれていません。そのままでは苦く、とても食べられたものではないでしょう。では市販のチョコレートがなぜ甘いのかというと、単純に大量の砂糖が加えられているからです。太る・肌に悪い・健康を損ねる…という風評の原因は、ほとんどが砂糖にあるといえるでしょう。
精製された白砂糖が、身体にあまり良くないのは有名です。白砂糖は血糖値を急激に上下させるため、脳のテンションが安定しません。疲れたときに緊急処置として白砂糖を含むスイーツを食べることは、悪くはありません。しかし日常的に、惰性で食べているのなら、それは危険です。
チョコレートに入っている食品添加物にも注意
市販のチョコレートのデメリットの一因は、白砂糖だけではなく、乳化剤や植物油脂といった食品添加物にもあります。「乳」とか「植物」とか聞くと、自然由来で安心できそうに感じますが、まったく違うとを知ってください。
植物油脂とはトランス脂肪酸のことで、身体に悪影響があるとして欧米では禁止されるほどの添加物です。レシチンという乳化剤が使われることもあります。乳化剤は油と水をスムーズにつなぐ役割をする添加物です。「くちどけなめらか」「とろけるようにクリーミー」といったキャッチコピーの商品は、乳化剤の力によってそのクリーミーさが出されてます。
大豆由来のレシチンは必ずしも身体に悪いとはいい切れませんが、あくまで人工的な添加物です。毎日少しづつ食べていれば、体内に堆積し、いつか病気の元となるでしょう。
ポリフェノールの健康効果と、摂り方の注意点
チョコレートを買うなら、砂糖・添加物の量が少ない商品を選んでください。
最近ではスーパーやコンビニでも高カカオのチョコレートを見かけるようになりました。カカオには、カルシウム、鉄、亜鉛、マグネシウムといったミネラル群だけではなく、ポリフェノールが含まれています。ポリフェノールとは、植物が光合成を行うときに自らを守るため生成する成分です。赤ワインにも豊富に含まれることが知られていますが、チョコレートには赤ワインよりもたくさんのポリフェノールが入っています。
ポリフェノールは、病気の原因となる活性酸素の発生を抑える働きを持ちます。抗酸化作用も高く、動脈硬化の進行抑制や、ガン細胞の増加防止にも一役買っています。
ただしカカオポリフェノールは、「食べ溜め」はできません。健康効果があるからと一気に大量に食べていては、健康効果よりもデメリットが上回ります。気を付けてください。
身体は心理に影響される
チョコレートは決して悪の食べ物ではありません。すべてのものにはいい面と悪い面とがあることを知る必要があります。ネットでの情報に飛びついて、「あれはよくない」と言って極端に避けたり、「これは健康に良い」と安易に飛びつかないことが大切です。物事の両面を理解し、客観的に判断するようにしましょう。
チョコレートに限りませんが、ネガティブな気持ちで食べると、悪い予想が現実となることがあります。おまじないのような話ですが、これは本当です。たとえば「今日もチョコレートを食べてしまった!また太ってしまう」「医者に内緒でチョコレートを食べているけれど、検査で見つかったらどうしよう」などと、罪悪感を持ちながら食べれば、そのネガティブな未来を引き寄せてしまう可能性が高まるでしょう。
人間の身体は、心理と直結しています。「おいしい!活力になった!」とプラス思考で食べれば、よい影響を与えるのは当然です。食べ過ぎはいけませんが、せっかくの「美味しいチョコレート」は、カカオの健康効果を十分に受け取るつもりで食べてみてください。