困ったときは?

「妊娠しにくいな」と思ったときに考えてみたい、母体環境

経済的な理由で子どもを産まない人が増えた、といわれています。その反面、「子どもが欲しい」「早く産みたい」という思いがあるのに、なかなか妊娠できない方が増えているのも事実です。

そのような方は不妊治療に取り組みますが、保険適用外で費用がかさむため、子どもを求めているのに、これまた経済的な理由でなかなか不妊治療ができないという声も聞かれます。

そのため政府は、「不妊治療の保険適用」を政策の柱の1つとして打ち出してはいますが…。

いくら経済的支援があっても、「なかなか妊娠できない」という女性の悩みが根本から解決できるわけではありません。政府の施策や、辛い不妊治療の結果を待つ前に、私たちにできることはないのでしょうか。

\\\ 本当のところを、専門医に聞いてみました ///

教えて先生!

小西康弘Yasuhiro Konishi

医療法人全人会 理事長 / 小西統合医療内科 院長

2013年より 小西統合医療内科 院長 総合内科専門医 / 医学博士

国が不妊治療の保険適用を検討するのは、少子化対策のためです。少子化の背景には、さまざまな社会的問題が潜んでいます。ひとつの問題が解決したからといって、出生率が急に上がるわけではありません。しかし、「母体の健康」という観点から見ると、私たちにできることは意外とシンプルではないかと考えています。

健康体なのに、なかなか妊娠できないという方に焦点を当てた場合、まずは不妊症や習慣性流産などが推測されるでしょう。

その原因がはっきりしている場合は、具体的な治療や対処が行えます。その結果、不妊治療(人工授精や対外受精)を検討される方も、とても増えています。

そうではない場合は、母体の体内環境が整っていない可能性があります。

人間として健康であれば、妊娠率が上がる

妊娠しやすい母体環境といっても、赤ちゃんに特化した何かがあるわけではありません。人間として当たり前の健康を維持しましょうということです。

栄養バランスのよい食事をして、腸内環境を整え、ストレスを避けて気持よく生活できていますか?
特にストレスは大敵です。仕事の負荷や、昼夜逆転の生活などで生理が止まったことはないでしょうか。生殖に関することは、生命維持よりも後回しにされます。そのようなことが日常茶飯事に起きているのであれば、母体環境がよいとはいえません。

妊娠前から栄養バランスを整える

母体環境のためには、栄養バランスが大切です。

妊娠が分かったあとは、皆さん栄養に気を配られます。たとえば産婦人科からは葉酸を摂取するようにいわれるはずです。妊娠初期に葉酸が足りないと、脊椎分離症の子どもが産まれやすくなるからです。葉酸は表立って活躍する栄養素ではありませんが、神経が分化して発生する過程においてとても大切な栄養素なので、皆さんサプリメントなどで積極的に摂られるのではないでしょうか。

しかしできれば、妊娠前からもっと栄養に気を配ってください。分子栄養学や機能性医学の分野でも、ビタミンB、ビタミンDや亜鉛が注目されており、必要な栄養が不足すると妊娠率が下がるというデータはたくさん出ています。

栄養のアンバランスが不妊率を上げるという論文はたくさん出ています。しかし、残念なことに、不妊治療の専門の先生が、こう言った機能性医学の論文を読んでいるかというと、そうではない場合が多いように思います。

デトックス力を高める

栄養バランスとは、単に不足しているものを入れることだけではありません。身体から毒素や不要物をしっかり排出し、巡りのよい身体を目指すことも、妊娠のためには重要です。

日々の食事に含まれる食品添加物や重金属などは、完全排除は不可能です。だからこそ自分のデトックス力を上げ、新たに摂る栄養素をしっかり吸収できる余地を残しておきましょう。

まずは、専門医の診察を受けて、妊娠を妨げる異常はないかどうかを、きっちりと調べてもらうことはとても大切ですが、何も器質的な異常がない場合、体の栄養のバランスが乱れている可能性があることを知ってください。

当院でも、不妊外来で特に異常は指摘されないのに、なかなか子供ができないということで受診される患者さんがおられます。当院は不妊治療の専門医ではありませんが、体のバランスを整えることで、数ヶ月後には自然に妊娠したという患者さんが少なくとも10組以上はおられます。

「妊娠できないから、すぐに体外受精」と、安易に考えるのではなく、まずはお母さんの健康に関する意識をもう少し上げてみてほしい、と思います。

自己治癒力のスイッチが上がれば…

実際、当医院でも、不妊治療でなかなか結果が出ていなかった方の自然妊娠例はたくさんあります。特に妊娠を考えておらず、別の症状改善のために身体を整えていただくと、結果的に妊娠された方も多くいらっしゃいます。

特別なことをしなくても、患者さん本人が持っておられる「自己治癒力」のスイッチがオンになることで、身体の不調が取れ、ホルモンバランスも正常化するのだと思います。

「母体環境」は可視化しにくく、自分自身で把握しにくいことですが、妊娠のためだけではなく、人生通じて健康に生きるための基本でもあります。

もし不妊に悩んでいるなら、「妊娠」という一点だけではなく、もっと広く、総合的にご自身の身体のコンディションを考えてみてはいかがでしょうか。

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