困ったときは?
ストレス反応とストレスホルモン
「失恋をしたら食欲がなくなって、体重が一気に5キロ減った」
「面接試験の日に、緊張のあまり電車の中でおなかが痛くなった」
心と身体は、私たちが思う以上に密接です。
強いストレスを感じると、内臓へ使うべきパワーも「ストレスへの救急部隊」へ回されます。急なストレスで気分が悪くなったりおなかが痛くなったりするのは、そのためです。
ストレスによる身体反応は、嬉しいときにも発生します。たとえば結婚や就職などで新しい生活がスタートしたとき。気を張っている最中は気付きにくいのですが、ふと我に返った瞬間、急に疲労を感じたり、やる気がなくなってしまった…という経験をお持ちの方もいるのではないでしょうか。
5月病など、春のバタバタのあとに「ふっ」と糸が切れてしまうのも、ストレスに関係しています。
しかしそれは、私たちが環境に慣れるまで無理をしないよう、身体が勝手に調節をしてくれている証拠。ストレスからくる不調は、私たちがバランスを取って生きていけるよう、ときどき鳴るアラームのようなものなのです。
\\\ ストレスとの付き合い方を、専門医に聞いてきました ///
教えて先生!
小西康弘Yasuhiro Konishi
医療法人全人会 理事長 / 小西統合医療内科 院長
2013年より 小西統合医療内科 院長 総合内科専門医 / 医学博士
ストレスを与える人・もの・ことは「ストレッサー」、身体に出る反応は「ストレス反応」と呼ばれています。
ストレッサーに出会ったとき、まっさきに反応するのは脳です。嫌いな上司や、会いたくない人と一緒のエレベーターに乗ってしまったときなどは、脳が拒否反応を起こし、脳や副腎から「ストレスホルモン」が分泌されます。
ストレスホルモンの種類は多岐にわたります。下垂体前葉ホルモンである副腎皮質刺激ホルモン、下垂体後葉ホルモンであるバゾプレシン、オキシトシンや、副腎皮質から分泌されるレニン、コルチゾール、そして副腎髄質からはアドレナリン、ノルアドレナリンなどが分泌され、ストレス反応を引き起こします。
過剰分泌が体調不良の原因になる
人間は毎日、多少のストレスを受けながら生きていますから、ある程度ストレスホルモンが分泌されるのは当然でしょう。しかし常にストレスに耐えて生活をしていると、ストレスホルモンが過剰に分泌されてしまいます。
ストレスホルモンが過剰になると、集中力が持たなくなる、もの覚えが悪くなるなどの影響が出始めます。ストレスが溜まったときに頭がぼーっとして何も考えられなくなるのは、ストレスホルモンが過剰に分泌されているせいです。
早く寝なくてはいけないのに、頭の中にストレッサーが浮かんで眠れないという状態も、ストレスホルモンの影響を受けている可能性があるでしょう。
コルチゾールの分泌バランスを整える
ストレスホルモンのひとつに、副腎から分泌されるコルチゾールがあります。
コルチゾールは糖質や脂質、タンパク質などの代謝に影響を与え、血糖を上げ、身体の炎症やアレルギー反応を抑える働きをしています。過剰分泌になると免疫系・中枢神経系・代謝系など、身体のさまざまな機能に影響を及ぼします。うつ病患者には、コルチゾール値が高い傾向があることも分かっています。
副腎疲労に注意
コルチゾールの過剰分泌を防ぎバランスを取るには、ストレス環境からの脱却と同時に、副腎のケアが必要です。
副腎は、左右の腎臓の上部にひとつづつある小さな臓器ですが、副腎にストレスがかかり「副腎疲労」が起きると、ホルモンの分泌バランスは崩れてしまいます。
副腎疲労があると、いいようのない不安感や、倦怠感に襲われます。朝のだるさや食欲・性欲不振、何ごとにも意欲的に取り組めなくなるなど、生活先般に大きな支障が出てしまいます。
副腎の状態は、「唾液中コルチゾール検査」である程度分かります。慢性的なストレス反応に悩まされているならば、副腎疲労も疑ってみてはどうでしょうか。
ストレス環境から離れることが一番
ストレス反応という身体からの「アラーム」に気が付けたら、ストレス環境から逃げる・離れることも大切です。せめてその環境に長居しないようにしましょう。学校や仕事は難しいかも知れませんが、サークルやママ友の集まり、満員電車、気の乗らないメンバーとの会食などは、できるだけ避けてみてください。
まずは脳で受けるストレスを減らすこと。そして副腎に負担をかけない生活を送り、コルチゾールの分泌バランスを崩さないことが何よりです。
慢性的なストレス反応は、全身を疲弊させます。早くその状態から抜け出すため、副腎疲労が疑われるならば、検査を受けることも考えてみてください。
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