困ったときは?

自己免疫疾患のメカニズムと、治療の最前線

身体に入った細菌やウイルスなどの異物を退治してくれる免疫機能。普段は身体を守るために働いていますが、とあるキッカケで自分自身の身体を異物と認識し、攻撃を始めてしまうことがあります。

それはまさに、免疫の暴走!
これまで味方だった存在が急に攻撃をしてくるわけですから、身体にとってはたまったものではありません。

免疫の暴走から引き起こされる病気を、自己免疫疾患といいます。関節リウマチ、膠原病、甲状腺に関するバセドウ病や橋本病などがよく知られています。どれも特別な病気ではありません。原因ははっきり特定できていませんし、将来あなたの免疫が急に暴走しないとは、いい切れないからです。

えっ…
避けるにはどうしたらいいの?
予防法はあるの?

調べてみると、予防のヒントは意外なところにありました。

\\\ 自己免疫疾患について、専門医に聞いてみました ///

教えて先生!

小西康弘Yasuhiro Konishi

医療法人全人会 理事長 / 小西統合医療内科 院長

2013年より 小西統合医療内科 院長 総合内科専門医 / 医学博士

自己免疫疾患は全身に影響が出る全身性自己免疫疾患と、特定の臓器だけが影響を受ける臓器特異的自己免疫疾患のふたつに分けられます。

全身性自己免疫疾患でよく知られる病気に、関節リウマチがあります。臓器特異的自己免疫疾患には、潰瘍性大腸炎やクローン病、甲状腺に関する病気が含まれます。

病名だけを聞くと怖い病気に思えますが、研究が進み、自己免疫疾患のメカニズムもだいぶ解明されてきました。

自己免疫疾患の原因は体内

免疫機能が低下すると風邪を引きやすくなるのは常識ですが、自己免疫疾患にウイルスは関係ありません。自己免疫疾患の原因は、体外から入ってくる異物ではなく体内にありますから、風邪とはメカニズムが異なります。

関節リウマチを例にお話ししましょう。関節が炎症起こし、骨や軟骨が破壊されて激しい痛みや腫れを感じる病気です。放置すれば関節が変形し、疲労や発熱などの全身症状につながることもあるとても苦しい病気です。

炎症といっても外部から菌が入って起きるわけではありません。関節リウマチの炎症は、バランスを崩した免疫細胞が暴走し、自分の関節細胞を攻撃することによって引き起こされます。

原因は「痛い場所」にはない

関節リウマチでは、痛い場所に原因はありません。

一般的には、痛みや腫れがあれば原因物質を取り除いたり、痛みを緩和する治療法が思い浮かぶでしょう。しかし自己免疫疾患では、攻撃される側に悪い物質は存在しません。ひざの関節にある軟骨には原因はなく、悪いのは突然ひざの軟骨を攻撃しだした免疫細胞だからです。

そのため、自己免疫疾患の治療は痛い場所に対してではなく、急に暴走を始めた免疫細胞を元の状態に戻すために行われます。

自己免疫疾患の治療

自己免疫疾患の治療には一般的にはステロイドが使われます。ステロイドには免疫の暴走を無理やり押さえ込む作用があり、とても効果があります。その反面、暴走していない免疫細胞も抑え込み、免疫力が低下して風邪や感染症にかかりやすくなるなど副作用も多く、治療は簡単ではありません。

自己免疫疾患の治療すべてにステロイドが使われるわけではありません。たとえば甲状腺疾患の治療には、甲状腺の活動性を抑える薬が使用されます。ただしその薬は必ずしも免疫バランスを整える薬ではありません。研究はだいぶ進んでいますが、甲状腺の細胞を攻撃する抗体は見つかっていても、それを取り除く治療法はまだ確立していないのです。そのため投薬治療と並行して免疫バランスを整える必要があります。

橋本病は、甲状腺が免疫細胞に攻撃されすぎて甲状腺を作れなくなり、甲状腺機能が慢性的に低下する病気です。そこまで攻撃を受け続けると、攻撃側の免疫を整えようとしても間に合いません。壊された細胞は再生しませんから、甲状腺ホルモンを薬で補う治療が行われます。

バセドウ病の治療では、細胞に放射線を当てて暴れている細胞を潰していくという方法が取られることもあります。

解明は進んでいる

謎だった自己免疫疾患のメカニズム自体も、かなり解明されてきました。どこに炎症因子があるのかを特定し、免疫異常を調整する薬も生まれています。ステロイドや免疫抑制剤で、広く無差別的に免疫を抑えるのではなく、炎症を起こしている部分の免疫だけを特異的に抑えるような治療薬も出てきています。関節リウマチやクローン病の治療は、劇的に進化しているといってよいでしょう。

免疫の暴走自体が無差別に起きるエラーなのか、生活習慣に起因する現代病なのかはまだ分かっていません。しかし免疫バランスを整えること自体は、全身の健康維持を考える上でとても大切ですし、自己免疫疾患の予防にもつながります。

免疫力をコントロールしているのは腸

その免疫のコントロールセンターは、腸にあります。腸は食物や体外から入ってくる異物に一番接触する機会の多い臓器です。だからこそ異物からの攻撃を防ぐため、全身の70%もの免疫細胞が腸に集められています。免疫力を高めようと思うなら、腸内環境の改善が何よりもおすすめです。

余談ですが、食物アレルギーも同じメカニズムで発生します。アレルギーも元をたどれば腸内の免疫細胞に原因があります。本来は攻撃する必要のない栄養素やタンパク質に異常反応することで、湿疹や体調不良などのアレルギー反応が引き起こされているからです。

現在自己免疫疾患の治療に取り組まれている方だけではなく、予防を考える方も、まずは腸内環境を整えてみてください。免疫は健康の要、健康に生きるための必須要素といえるからです。

専門医に気になる症状を相談してみませんか?以下ボタンよりお気軽にお問い合わせください。

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