困ったときは?

ストレッサーとストレス反応

「あ〜!ストレスが溜まって辛い!」私たちは簡単にこう口にしますが、そのストレス、もう少し細分化して考えてみませんか?ストレスの種は、私たちが感じる前から存在するはずだからです。

私たちにストレスを与える人・ものをストレッサーといいます。

ストレスを感じるまでには、

  • 原因となるストレッサーの存在
  • ストレスを生み出す事情

という要素が既に存在し、それを受け止めて起きた体中の一連の反応が「ストレス反応」と呼ばれています。

イライラすると八つ当たりしてくるパワハラ上司を例にしてみましょう。

  • パワハラ上司=ストレッサー
  • 上司の機嫌を損ねる電話=ストレスを生み出す事情

この2つの要素が揃い、そこに偶然あなたがいて、上司の八つ当たりがあなたに降りかかったとしましょう。冗談じゃないですよね。たまたま居合わせただけで、その場にいなかった同僚は難を逃れたわけですから。

これを「たまたま、運が悪かった」とケロッと忘れられたらいいのですが…上司の罵声で胃がキリキリしたり、夜まで引きずって眠れなくなったりしているならば、あなたには自分で思う以上の負荷がかかっているはずです。

そこで発生する胃痛や不眠こそ「ストレス反応」。
身体からのSOSであるストレス反応を放置してはいけません。

\\\ ストレッサーとストレス反応について、専門医に聞いてみました ///

教えて先生!

小西康弘Yasuhiro Konishi

医療法人全人会 理事長 / 小西統合医療内科 院長

2013年より 小西統合医療内科 院長 総合内科専門医 / 医学博士

ストレッサーは一緒でも、ストレスを受ける側の状態が違えば、脳や自律神経で起きる反応は変わります。「上司からの罵倒」という現象を受けて、胃が痛くなるか、ケロッとしていられるかは、受け取る側の問題ということです。

同じ上司にガミガミいわれても「成長のために叱咤激励をしてくれている、ありがたい」と感じれば、ポジティブなストレス反応が生まれます。ストレスの受け止め方は、人それぞれなのです。

ストレス反応には認知機能が関係している

同じ人間なのに、受け止め方が違う人がいるのはなぜでしょうか。

同じストレッサーから受けたストレスでも、人によって逆の反応が起きる現象には認知機能が関係しています。たとえば、物事を何でもネガティブに捉えてしまう人がいますね。その人は、認知機能つまり心の中の鏡が何らかの影響を受けており、言葉やできごとを勝手にマイナス変換してしまっています。

そのようなネガティブな認知には、多くは幼少時の環境や経験が関係しています。いじめや、親から認められず愛情不足だったなどの要因がベースとなり、認知機能がネガティブな方向にしか働かないまま大人になっている方は、とても多くいらしゃいます。

被害者意識が生み出す、過剰なストレス反応

ネガティブな認知機能を持つ人は、被害者意識が強くなります。上司の叱責がその人のためであっても、「いじめられている、差別されている」と捉えてしまい、過剰なストレス反応が引き起こされます。

親の愛情が十分で、叱られても「期待している」と説明されて育った人は、上司からの叱責をマイナスには捉えません。気の落ち込みも一瞬で済み、すぐに立ち直ることができるはずです。

心理学の領域には、認知行動療法というメソッドがあります。その人の認知自体を変えるための治療法で、気持ちを楽にしたり行動をコントロールするために使われています。ストレス反応で生活に支障が出るほどに被害者意識が強く、自己肯定感が低いことに悩んでいるのであれば、専門医のサポートが必要です。

過去の経験は潜在意識に蓄積されている

いざとなったら、仕事をやめれば上司からは逃げられます。しかしストレッサーは上司とは限りません。肉親の死や災害など、自分ではどうしようもない環境がストレッサーになることも多いでしょう。その場合も、認知の違いでストレス反応が変わるという脳のシステムは変わりません。仕事を辞めても、また別のストレッサーとなる人と出会ってしまえば同じ反応が起こるでしょう。

避けられないストレスはどうすればいい

ストレスを考えるとき、潜在意識や認知の問題はとても大切です。心の問題が自律神経やホルモン系を介して身体に影響を与えているのは事実ですし、病気として顕在化する症状のほとんどの原因は、ストレスにあるとも考えられます。

病気治療でも、スッと治る人となかなか治らない人がいます。なかなか治らない人の潜在意識には、罪悪感が潜んでいたり、自分自身を許していなかったりすることもあります。身体的なアプローチでどうしても良くならない場合は、単に身体を診るだけではなく、カウンセリングなどで心の問題を溶きほぐす必要があるでしょう。病状に対しての捉え方が変わるだけで、急に体調が改善される方もおられます。

ストレッサーを遠ざけてください

先ほど、同じストレッサーであっても受ける側の認知でストレス反応に違いが出るという話をしましたが、間違えてはいけないのは、ネガティブな反応が出る人の方が悪いわけではないことです。

社会的な暴君がいて、誰が見ても酷い行動をしているとしましょう。その被害者に対して「うつ病になるのはお前の認知が悪い」といえるでしょうか。

ストレスを受けた側が我慢をするのではなく、ストレッサーを遠ざけられる社会をつくる必要があります。環境汚染やテクノストレスなども同様です。リスクを正しく認識し、必要なら距離を置く選択ができなければいけません。

まずはストレッサーから離れてください。その上で身体のバランスを整え、外的ストレスを跳ね返せる心身をつくりましょう。「ストレスで辛い」状態が毎日続くことに麻痺してはいけません。それはどう考えても、我慢で済む段階を超えているからです。

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