おすすめすること

シニア層の栄養管理

人生100年時代。

かつて「お年寄り」とされていた60代・70代も、セカンドステージでもうひと活躍できる社会になるといわれています。

日本人の寿命がここまで延びている一番の要因は、栄養です。

昔に比べ公衆衛生の状態が良くなったなど、他の要因もありますが、こんなにも全体的に寿命が延びているのは食事内容の変化のおかげに違いありません。最近では、シニアほど粗食ではなく高栄養のものを食べた方がいい、という説も出てきています。

内閣府公表の高齢社会白書「平均寿命の将来推計」によると、日本人の平均寿命は今後も延びると推定されています。今から約40年後の2060年には、男性は84.19歳に、女性は90.93歳になると予想されていますから、驚きです。

ただし、単に長生きをすればいいわけではありません。健康で、前向きに、いきいきとしたシニアライフが送れなければ、長生きしたって幸せとはいえませんから…

そこで今回は、シニア世代の「健康・長生き」のヒントを、栄養の観点から探ってみたいと思います。

\\\ そこのところ、専門医に聞いてきました ///

教えて先生!

小西康弘Yasuhiro Konishi

医療法人全人会 理事長 / 小西統合医療内科 院長

2013年より 小西統合医療内科 院長 総合内科専門医 / 医学博士

当然ながら、栄養状態はその人の寿命に大きく関係しています。

食事から摂るエネルギーが不足すると、本来は身体をつくるために蓄えられてきた脂肪やタンパク質を燃やしてエネルギーを補おうとします。歳を取って腸管の機能が低下し、タンパク質の吸収力が弱まれば、筋肉量も落ちて身体機能がうまく働かなり、老衰は早まります。

老化を放置すれば当然ながら寿命の延びは止まりますが、いま「シニア世代」といわれる年代の方々は高度成長期に子ども時代を過ごしています。小さいときから高栄養の食事を摂ってきた年代が高齢になってきたからこそ、全体的な寿命がどんどん延びているのでしょう。

ただし気を付けたいのは、高栄養の食事=欧米的な肉食というわけではないことです。食の欧米化にともない、日本人には少なかった生活習慣病や大腸ガンが増えたのは事実だからです。

低栄養に注意

最近では、シニア世代の「低栄養」が問題になっています。

「低栄養」とは、健康のために最低限必要な栄養素が摂れていない状況を指します。加齢で筋肉量が落ちると自然に行動量も減り、人は自然に老衰していきますが、そこに「低栄養」が加われば「フレイル(虚弱)」という状態を引き起こし、病気や寝たきりの原因となります。

厚生労働省の調査では、70〜75歳の5人に一人が低栄養傾向(BMI20以下)にあると示されています。

総コレステロール値が低く赤血球の数が少ない、またアルブミン値が低いといった低栄養の高齢者ほど、認知症のリスクが高まることも分かってきました。

周囲の助けも必要

歳を取って食が細くなることはよくありますが、「食べたい」という欲望自体が少なくなれば、食事回数が減り、メニューのバリエーションもなくなるでしょう。
その状態を放置すれば、簡単に低栄養になってしまいます。

特に、ひとり暮らし高齢者は食生活が乱れがちです。コンビニ食や「孤食」、また不規則な食生活が続けば、健康維持は困難になります。情報格差や、自炊するだけの気力や健康維持ができないことも関係しています。

シニア世代の栄養バランスを考えるなら、「食べる楽しみ」を失わないよう意識する必要があります。ひとり暮らしであっても、ときに家族や友人と食卓を囲む機会があればベストです。

お手本は、女性のヘルシー志向

寿命と栄養が関係しているのであれば、女性の寿命が男性より長いのも頷けます。女性は、ダイエットやスキンケアなどの美容や、月経・出産・更年期などの身体の変化を通じて自分の身体と向き合う機会が多く、食事やライフスタイルを見直し始める年齢が男性より早い傾向にあるからです。

料理ができる人が多い、友人とおしゃべりする機会が多い、という要素も含め、女性の持つヘルシー志向が「日本人の寿命」というデータに大きな影響を与えているのであれば、栄養に無頓着な男性は生活の見直しが必要なようです。

人生100年時代を迎えるにあたり、自分の健康を人任せにすることはおすすめしません。なぜなら長寿社会は、誰にとっても未知の領域だからです。シニア世代こそが栄養バランスに気を配り、日本人が世界で一番「元気で長生き」といわれる時代を目指すべきではないでしょうか。

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