困ったときは?

副腎疲労とメンタルヘルス

朝スッキリ起きれない、日中も疲れやすい。
ちょっとしたことに敏感に反応して、クヨクヨしてしまう。
特に原因となるストレスがないのに、気持ちが落ち込む。

ストレスの多い現代社会。ほとんどの方が、上記のような何らかのメンタル不調を経験しているはずです。しかし病院を受診しても特に異常は見られず、「気のせいでは?」「もっと頑張れ」という言葉に傷ついた…というケースも多いのではないでしょうか。

「ストレスで胃がキリキリする」という日は、胃薬で乗り切れるかもしれません。しかし「ストレスでなんだかぼんやりして、生きる気力がない…」という日は、どうすることもできず、お布団から出れずに人に迷惑をかけたり、もしくは頑張っちゃったりしていませんか?

そんなときは、自分を責めず、「副腎」をいたわってあげてみましょう。

過度のストレスが原因で副腎が疲労している状態(副腎疲労)が起きていれば、どんなに頑張ろうと思っても、あなたの気持ちだけでは何ともならないからです。

\\\ 副腎疲労とメンタル不調について、専門医に聞いてきました ///

教えて先生!

小西康弘Yasuhiro Konishi

医療法人全人会 理事長 / 小西統合医療内科 院長

2013年より 小西統合医療内科 院長 総合内科専門医 / 医学博士

副腎は腎臓の近くにある、ホルモン分泌を司るとても小さな臓器です。副腎からは別名「ストレスホルモン」と呼ばれるさまざまなホルモンが分泌され、ストレスに対する耐久力を高めてくれています。

しかしストレスが慢性化すると副腎が疲労し、十分な量のストレスホルモンが分泌できなくなってしまいます。その結果、身体はストレスの影響をそのまま受け、あちこちに不調が起こり始めるのです。

さまざまなストレスが原因で副腎機能が一過性で低下した状態を「副腎疲労」といいます。最近は書籍やマスコミでも取り上げられるようになってきました。

注意してほしいのは、医学の世界でよく使われる「副腎機能低下症(アジソン病)」とは別の病態だということです。「副腎機能低下症」が感染症や血流障害により副腎機能が永久に低下した状態であるのに対し、「副腎疲労」はストレスにより一時的に副腎機能が低下した状態です。

【副腎疲労が引き起こすさまざまな症状】

  • 生理痛、PMS(生理前症候群)
  • 風邪をひきやすい。風邪をひくとなかなか治らない。
  • 気分が落ち込みやすい。やる気が起こらない。
  • 疲れやすい。何をするのも億劫になる。
  • 朝が起きれない。朝起きる時から疲れている。
  • 寝つきが悪くなる。熟睡感がない。
  • 集中力が低下する。物忘れが強い。
  • 新しいことをする気力が湧かない。
  • 気分が落ち込みやすい。やる気が起こらない。

副腎疲労からくる不調には、メンタル関連の症状が多いのがお分かりになるでしょうか。

副腎疲労がやっかいなのは、「副腎を疲れさせる原因もストレス」「疲れてしまった結果もメンタル不調」というループを持つことです。特定の食材を食べる、薬を飲むというピンポイントの治療はできません。しかし逆に考えると、間にある「副腎疲労」が改善できれば、はじめと終わりにある「ストレス」「メンタル不調」も改善できる可能性がある、ともいえます。

HPAアクシスとは

ストレスは身体に具体的な影響を及ぼしますが、そのことはまだ十分に理解されていないようです。メンタル疾患の患者さんが受けがちな「気のせい」「弱いから」という言葉が、一般の方の理解不足を表しているともいえるでしょう。

しかし精神的ストレスが身体に影響を及ぼすことは、医学的にも機序がはっきり示されています。ストレスは視床下部を通じて脳下垂体から分泌されるホルモンに影響を与えます。結果、副腎や甲状腺などの全身のホルモン臓器に作用し、不調の原因となっています。この一連の流れをHPAアクシスといいます。

【HPAアクシスの流れ】

ストレスの刺激により、視床下部からCRH(コルチコロトピン放出ホルモン)が分泌される

CRHが脳下垂体に影響を与え、ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)が分泌される

ACTHの刺激を受けた副腎皮質から、コルチゾールが分泌される

コルチゾールの分泌過多を防ぐ

コルチゾールは副腎皮質から分泌されるホルモンの一種です。コルチゾールの分泌過多は、ストレスから身を守ろうとして起きる現象です。瞬間的な量の増加に問題はありませんが、長期的なストレス環境下にあると脳の海馬が委縮し、メンタル疾患につながってしまいます。

うつ病患者のコルチゾール値は総じて高い傾向にあることからも、コルチゾールの分泌過多がメンタル疾患に関係していると分かります。

このHPA系の反応の程度は、人によって異なります。同じストレスがかかっていても、HPA系のバランスが整っている方は体調を崩すことが少なく、逆にHPA系が敏感な人は、少しのストレスでも不調を引き起こしやすいといえるでしょう。

副腎疲労を改善し、メンタル不調を防ぐ

メンタル不調を改善したければ、副腎疲労に目を向けてください。副腎疲労は、唾液中コルチゾール検査などでその程度を測ることができます。検査で副腎疲労が疑われる場合は、副腎疲労に対しての治療を行うと同時に、副腎疲労を起こしている原因として、リーキーガット症候群、腸管カンジタ症、重金属蓄積などがないかを調べていきます。

うまくいえない不安感や倦怠感、朝のだるさや食欲・性欲不振、何ごとにも意欲的に取り組めない…という訴えの方を検査すると、原因として考えられる具体的なデータが現れることがしばしばあるのです。

自分を責めたり、カフェインを取るなどの短絡的な行動では、メンタル不調は改善しません。まずはストレスに負けない副腎を取り戻し、副腎疲労の原因に対しての治療を行うことが大切でしょう。

また、ストレスの影響を受けにくくする訓練も可能です。ストレスに負けない心と、副腎疲労の両軸を考えることが、心も体も健康な状態をキープする最善の方法ではないでしょうか。

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