困ったときは?
ストレスで眠れない人が、夜にやっていいこと、悪いこと
仕事とプライベートの両立が必要な方にとって、ストレス解消はセルフマネジメントの一環。そのためにも夜はぐっすり眠りたいところですが、ストレスが溜まっていると睡眠の質が下がってしまいます。
昼間のストレスを引きずり、ネガティブ思考のままベッドに入ってしまえば、取れる疲れも取れません。身体は疲れているのに、頭と目がギンギンに冴えてしまって眠れない…という経験もあるはず。
そこで今回は、
- 寝る前に音楽を聞いてもいいの?
- 寝る前に何か食べたい…我慢した方がいいの?
- 他に何か、眠りやすくなる方法はないの?
という夜の過ごし方の疑問について、ヒントを探ってみます。
\\\ ストレスで眠れないときの対策を、医師に聞いてみました ///
教えて先生!
小西康弘Yasuhiro Konishi
医療法人全人会 理事長 / 小西統合医療内科 院長
2013年より 小西統合医療内科 院長 総合内科専門医 / 医学博士
眠れない、睡眠の質が低い、早朝目覚めてしまう…という状態が慢性的に続けば、それは睡眠障害です。睡眠障害は、「入眠障害」「中途覚醒」「早朝覚醒」に分けられます。日本では5人に1人が睡眠障害の状態にあるといわれています。
睡眠障害の原因はさまざまです。
お酒やカフェイン、薬の副作用などで眠れない・・・「生活環境要因」
暑さや寒さ、枕や環境変化で眠れない・・・「環境要因」
痛みやかゆみ、咳、頻尿などで眠れない・・・「身体要因」
緊張や不安、悩み、睡眠へのこだわりで眠れない・・・「メンタル要因」
特に、メンタル不調と睡眠障害は密接にかかわりあっています。うつ病の患者さんにはかなりの確率で睡眠障害がみられます。ストレスが原因で眠れない方は、それ以上メンタルが悪化しないよう注意が必要です。
音楽を聞いていいの?
YouTube等で音楽や動画を流しながら眠る、という方が増えています。音楽は不安を和らげ、脳を休めますから、間違いではありません。ただしいくら好きであっても、激しい曲ロックや合唱したくなるような曲はNGです。そのような音楽は、昼間のうちに楽しんでください。
効果的なのは自然音です。「川のせせらぎ」や「波の音」はリラックスを誘い、自律神経を副交感神経に切り替えてくれます。一番やってはいけないのは、音楽のためにスマホを枕元に置き、光が目に入る状態のまま横たわることです。これでは交感神経が優位なままになってしまいますから、入眠をスムーズにするためも部屋を暗くしてライトが目に入らない環境を作りましょう。
何か食べてもいいの?
脳を休めるためには糖分も必要です。空腹を我慢して眠れなくなるくらいなら、何か口に入れることは禁止ではありません。しかし砂糖の多いスイーツなどは身体を冷やします。夜中にチョコレートやシュークリームを食べてしまえば、胃も脳も休まりません。ストレス解消どころか、心身を痛めつけます。
寝る前にどうしても甘いものが食べたければ、常温の果物、ホットヨーグルトやホットミルクなど、身体を冷やさずに満足感が得られる低カロリーな食材を選んでください。
身体の冷えは大敵
身体が冷えていれば、入眠しにくくなります。女性の冷え性は宿命のようなものですが、男女ともに下腹部を触ってキンと冷えている方は、特に気を付けてください。子宮が冷えていると婦人科の病気リスクが高まるだけではなく、自律神経のバランスを崩してしまいます。
自律神経の乱れは、睡眠障害だけではなく不安、イライラ、果てはうつ状態までを引き起こします。おすすめは腹巻と湯たんぽです。夏場だって、おなかを触って冷えているなら、温めてみてください。あおむけに寝ておなかを両手でさするだけでも効果はあります。
寝る前に体内の空気を入れ替える
ストレスが溜まると呼吸が浅くなり、体内の酸欠状態を招きます。ベッドに入ったら、深呼吸を10回してみてください。吐くときは、吸うときよりやや長く、ゆっくり「はーぁ」と声を出します。その声と一緒に、ストレスを体外へ押し出すイメージで行います。
部屋を暗くして窓を開け、空気の入れ替えをしましょう。空気のよどんだ部屋で寝ていては気分も晴れません。部屋と体内の空気を入れ替えて眠る習慣を付けてください。
睡眠障害は根本対策を
上記のような対策は、ストレスをベッドに持ち込まないためにやって損はない対策です。ただし根本解決にはならないでしょう。人間は社会性をもつ生き物ですから、ストレスを完全になくすことはできません。うまく付き合う、ストレッサーから離れる、などの対策を取るとともに、睡眠障害が出ているのなら自己判断せずに医師に相談してください。
睡眠不足で一番影響を受けるのは脳です。車の運転や細かい仕事は、記憶力や認知能力などの脳の高度な機能をフル回転させて行われています。脳は燃費が悪く、十分な休息と栄養がなければ、動きが悪くなります。
脳の疲れからミスが増えてストレスが増大すれば、ストレスホルモン(コルチゾール等)の分泌で血圧は上がりますし、睡眠中に生産される抗体が作られず免疫力の低下を招きます。結果、病気につながりますから、軽視してはいけません。
睡眠の重要性を理解し、少しでも質の良い睡眠が取れるよう、工夫してみましょう。