基礎知識

腸内環境の見直しは「遠回りの近道」、小腸・大腸の役割と、腸内環境悪化で起きる意外な症状たち

病気予防の観点から、腸内環境に対する意識はどんどん上がってきています。書店には関連書籍も並んでいますし、日頃から腸の健康に気を配っている方も多いことでしょう。

実際、腸内環境の悪化は、慢性的な体調不良につながります。「たいしたことないだろう」とそのサインを放置すると、将来的には大きな病気に発展する可能性も否定できません。腸は単に食べ物を吸収する管ではありません。「第2の脳」ともいわれる、身体機能を動かす大切な役割を担っているのです。

 

小腸の「ふたつの機能」

まっすぐに伸ばすと4.5m〜6mもの長さになると言われる、人間の小腸。

小腸には生命維持のために大切な、以下の「ふたつの機能」が備わっています。

【小腸のふたつの機能】
①食べたものを、人体に有益な微細粒子に変え、血液中に栄養として送り込む
②分子の大きな食べ物や毒素、有害細菌をブロックする

 

人間は口からさまざまなものを体内に入れています。それは食べ物だけとは限りません。身体にとって有害なもの…たとえば細菌や炎症物質、毒素なども、食べ物と一緒に小腸に届きます。

それを仕分けし、有害なものをブロックし、栄養素を正しい形で血中に取り込むという、まさに「外界からの敵をブロックするための固いガード」として機能しているのが、小腸なのです。

小腸に破れができるとどうなるか

生物の時間で習った通り、人間の小腸は「絨毛(じゅうもう)」と呼ばれる何百ものひだでできています。

ひだをすべて広げると、その表面面積はテニスコート一面分。それだけの面積の「腸壁(ちょうへき)」が、さらに組織を守る粘膜と最近で覆われ、外界からの異物をブロックするという大切な役割を果たしています。

ところが、その小腸の壁が何らかのダメージを受け、破れてしまうことがあります。小腸のバリアはとても薄く、まぶたの薄さの層一枚でできているため、腸内環境のバランスが崩れることで、穴が開いてしまうのです。

そうなると、本来は小腸内でブロックされるはずの有害物質が、腸から血液中に流れ出してしまいます

本来の健康な腸壁は、きちんと消化されたタンパク質・脂肪・デンプンだけを通すため、良い栄養素だけが血中に運ばれ、身体全体が正しく機能します。しかし腸壁が刺激を受け炎症を起こしてしまうと、細胞の接合点がゆるくなってしまい、大きなサイズの分子も通してしまうことに。
これが、さまざまな慢性疾患の原因になっているのです。

 

腸内環境と免疫システム

私たちの身体には「免疫システム」が備わっています。

免疫システムとは、体内に入ってくる異物や病原菌・毒素などを感知し、それに抵抗して打ち勝つ力。たとえば風邪をひいたとき、免疫力が高ければ風邪のウイルスをすぐに追い出せますが、免疫力が弱っていると、ウィルスの影響を受けて風邪をひいてしまうのです。

小腸は、この免疫システムとも密接なかかわりを持っています。

腸壁が破れ、本来はあるべきではない大きなサイズの分子が血中に流れ出すと、異変を感じ取った免疫システムが作動し始め、身体全体に影響を及ぼすのです。

また、小腸の腸管の内側は、前述の通り粘膜層に覆われています。

その粘膜は異物をブロックするだけではなく、それ自体が免疫的な防御作用を持っています。本来であれば、その粘膜にある「分泌型免疫グロブリンA」と呼ばれる抗体が、侵入者である異物を無力化しするのですが、小腸自体がダメージを受けているため、分泌型免疫グロブリンAの量が減ってしまい、異物をブロックできずに感染や慢性疾患の原因となってしまうのです。

この「腸管に傷が付き、有害物質が血液中に流れ出してしまう現象」には、リーキーガット症候群という名前が付いています。原因不明の慢性疾患に悩む人の原因は、このリーキーガット症候群にもあることが分かってきています。

個性的な腸内フローラ

ここまで、小腸に傷ができてしまうと、いかに悪影響なのかを見てきました。

次は、大腸と腸内環境についてです。

人間の腸内には500種類・100兆個以上とも言われる「腸内フローラ(腸内細菌叢)」が存在し、その細菌たちの多くは、大腸内に住んでいます。それは、胃酸や腸内の収縮のため、小腸に住む細菌は限られているからです。

人間の赤ちゃんの消化器は、生まれる前は無菌状態ですが、出産時に産道にいる細菌を飲み込みながら出てきます。そして生まれて2・3日後には、それらの細菌は小腸と大腸でコロニー(集落)をつくり始めます。この、生まれてすぐにできた腸内のコロニーは、人間の免疫力形成に大きな影響を与えています。

生まれてからの腸内細菌育成状況は、「何を食べたか」で変わっていきます。そして、その人が一生を通じて使うことになる「個人的な特徴を持つ腸内フローラ」ができあがるのです。

腸内フローラの生態系は、一生を通じて比較的安定した状態を保つと言われてきました。しかし最近では、老化が進むにつれて腸内フローラの構成が変わることも分かってきています。

腸内環境とひと口に言いますが、私たちの健康は、これらの絶妙なバランスのうえに成り立っているのです。

 

腸内のバランスが崩れると起きる、意外な症状たち

腸内のバランスが崩れ、リーキーガット症候群になってしまうと、どのような症状が引き起こされるのでしょうか。

腸管から血中に流れ出した毒素や分子は、さまざまな部位に悪影響を及ぼします。その中には「慢性疾患」と呼ばれ、毎日の生活に支障をもたらすものや、原因不明とされ、改善できないと思い込まれているものまで、多種多様な症状が含まれます。

「腸が原因」と聞くと、腹痛や胃腸炎をイメージしがちですが、実はまったく関係のなさそうな症状の原因が、腸内に潜んでいることがあるのです。

【リーキーガット症候群に関連するとされる症状例】

  • 免疫力の低下、原因不明の発熱
  • 息切れ、胸やけ、吐き気、嘔吐
  • 腹痛、頻繁なおなら、消化不良、下痢、便秘
  • 抜け毛、もろくなった爪、皮膚疾患
  • 不眠症、記憶力や集中力の低下
  • 疲労感、不快感、食欲低下、膀胱炎
  • 慢性関節痛、慢性筋肉痛
  • 攻撃的な行動、不安感、気分の混乱、モヤモヤ感
  • 自閉症、統合失調症、慢性疲労症候群
  • 老化の加速、アルコール中毒

腸に関係がなさそうな症状や、メンタル不調の原因を探ると、リーキーガットであった…というケースは珍しくありません。

上記の症状は、命にかかわらないものも多いため、一般的な病院では症状を緩和するための対症療法しか施されないでしょう。

しかし、「何だかつらい」「原因不明だから耐えるしかない」と我慢をしながら生きることは、決して健康的な生活とはいえません。

腸内環境の見直しは、日常の不調を改善する、「遠回りのような近道」。今まであまり意識していなかった方も、自分の腸内に住む細菌たちがいかに大きな役割を担っているかを知り、健康維持に役立てていきましょう。

 

まとめ

私たちは、食物を食べないと死んでしまいます。そして、口から体内に入れたものはすべて、消化器内で処理されます。そう考えると、有害物質をブロックし、栄養を着実に血液内に届けてくれる「腸」を、もう少し大切に扱った方が良さそうです。

実際に不調を抱えている人もそうではない人も、目に見えない器官だからこそ、いたわったり、バランスを整えられるような生活を心がけてみてください。

 

監修医師/小西康弘(医療法人全人会理事長)

2013年に小西統合医療内科を開院。2018年9月より医療法人全人会を設立。分子栄養学や機能性医学の最先端の知識に基づき、私たちの体が本来持っている「自己治癒力」を高める医療を提供。
豊富な臨床経験に基づいた有益な情報を発信中。

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