基礎知識

監修医師に徹底的に教えてもらおう!「予防医学」の重要性とは 


予防医学は、これから「長生き社会」を迎えるにあたり、重要になる考え方です。

予防医学という言葉はまだ一般的になっていませんが、その背景には、しっかりとした歴史と裏付けがあり、多くの専門家に注目されている分野でもあるのです。

そこでこの記事では、「予防医学.jp」の医師監修記事を書いてくださっている医療法人全人会理事長 小西康弘先生に、「予防医学の歴史と重要性」についてをしっかりとお聞きしてみました。

まだまだ知られていませんが、予防医学のベースには、私たちが健康をキープするために必要な考え方が存在しています。少し専門的な言葉も出てきますが、ぜひお読みください。

Q.そもそも、病気になる原因は何ですか?また、病気は予防医学で防げるのでしょうか。

予防医学とは、簡単にいうと、病気にならない身体をつくる、たとえばガンにならない身体をつくっていきましょうということです。

人間はどうして病気になるのでしょうか。もちろん個別の病気に関しては、それぞれ個別の原因があります。しかし普遍的な原因として、病気には「活性酸素」が関係していると言われています。

たとえば動脈硬化という状態がありますよね。

血管が固くなって起こる病気、脳梗塞・心筋梗塞や認知症にしても、動脈硬化が原因となっています。

だから、非常にアバウトな言い方ではありますが、動脈硬化にならないために活性酸素をどうコントロールするかということが、病気になりにくい身体をつくるうえで非常に大切なのです。

Q.病気になったら、病院で治療を受けたらいいのではないでしょうか?

そうですね、現時点ではそう考えている人がほとんどでしょう。

予防医学と通常の医療とは、少し違います。

活性酸素などのいろいろな要因が関係して病気になったときに、「それを治していきましょう」というのが、一般的な意味での「治療」です。しかしそれは、あくまで対症療法なのです。

脳梗塞や心筋梗塞なども大きな病気でも、医療は飛躍的に進歩していますから、薬でコレステロールや血糖をコントロールし、動脈硬化の進行を遅らせて、できるだけ発症が進むのを抑えましょうという考え方はあります。

ただし、たとえば動脈硬化の原因である脂質異常症という状態に関していうと、これまでは「悪玉コレステロールが原因」とされていて、とにかく悪玉コレステロール値を下げることが必要、とされていました。

しかし実際に現場で検診をしていると、コレステロール値がめちゃくちゃ高くてもピンピン元気な90代の方はいっぱいいます。

本当に悪玉コレステロールが原因なら、そのような方たちは全員が動脈硬化になっているはずですし、病気になっていないとおかしいのですよね。

Q.病気と活性酸素の関係を、もう少し詳しく教えてください

もう少し、動脈硬化の例を使ってお話ししましょう。

たしかに悪玉コレステロールは動脈硬化を進ませる要因のひとつではありますが、それ単独では動脈硬化は進まないということが、すでに分かってきています。

そして実は、コレステロールが高い状態に加えて、活性酸素が高い状態が病気を進行させるということも、分かってきているのです。

動脈硬化は、体内で活性酸素が異常に発生し、悪玉コレステロールにくっつくことによって起こります。つまり、活性酸素がたまっている状態が、動脈硬化のトリガーになるということです。

このようなメカニズムはガンでも同様です。多段階発ガンという言葉がありますが、ガンというのは急にポンとできるものではなく、何段階かのステップを経由して大きくなると言われています。そのステップがどんどん進行するときに、活性酸素が影響を及ぼすのです。

単純に遺伝子の異常だけでガンができるわけではないのですね。

だからこそ、活性酸素を増やさないようにすることが、病気になりにくい身体をつくるうえで大切なのです。

Q.活性酸素とは、いったいどのような物質なのでしょうか?

活性酸素といっても、一般の方はイメージがしにくいと思います。

僕らの身体は、原子があって、分子があって、その周りを電子がまわっているという構造をしています。

科学で習ったのを覚えている方もいらっしゃると思いますが、物質…分子や原子が電子を失うと、プラスイオンになります。

そして活性酸素とは、電子が欠乏している状態のものを指します。

それを「酸化」といいます。よく、身体が酸化すると老化が進むとか、酸化は美容・アンチエイジングの敵だとかいわれますが、酸化とは電子がどんどん失われていく状態のことなのですね。

電子が欠乏した物質たちは、むりやり周りの仲間から電子を奪おうとします。これを分かりやすくたとえると、活性酸素自体が酸化した状態であり、「電子が欲しい盗人」ということですね。

この活性酸素は渇望感が強いので、スキがあれば電子を奪ってやろうと、虎視眈々と周囲をうかがっている状態です。

まわりの健全な市民にしてみると、活性酸素という盗人がきたら電子が奪われ、自分も酸化してしまう。しかし盗人の数が多いと、対抗することができず、どんどん酸化させられてしまうのです。

つまり、盗人をそもそも増やさない、増えてしまった盗人を退治(中和)するというイメージを持っていただくと、「活性酸素を減らして健康体になりましょう」ということが理解いただけるかと思います。

Q.活性酸素は身体のどこでつくらるのですか?

活性酸素は、外から入ってくるものではありません。私たちの身体の中でつくられるものです。

それならば、積極的につくられないような状態にしてあげたらいい。

活性酸素の発生に大きく関係しているのが、ミトコンドリアです。これは、はじめて知る方も多いと思いますが、大切なことなので覚えておいてくださいね。

私たちが食べたものは、腸で分解されて血液の流れに乗り、糖質やたんぱく質・脂質に分解され、細胞に取り込まれて、ミトコンドリアで燃やされます。

ミトコンドリアとは、細胞の中にある発電機関のようなものです。しかし、ミトコンドリアが弱っていて発電処理がうまくいかないと、漏電を起こしてしまいます。

その結果、活性酸素が生まれてしまうのです。つまりそもそも活性酸素は、ミトコンドリアの流れがうまくいっていないことが原因で増えていくのです。

だから活性酸素を減らしたい!という方は、まずは細胞内にあるミトコンドリアを元気にしてあげることを考えなくてはなりません。

Q.活性酸素を増やさないために、自分でできることはありますか?

「活性酸素を減らしたい!」という方は、そこだけにフォーカスした行動を取りがちですが、そもそもそんな方に限って、生活がめちゃくちゃ乱れていたり、食のバランスが取れていません。

それではダメですね。

まずは生活習慣や睡眠から改善しないと、細胞レベルで元気にはなれないということに、自身で気付く必要があります。

しかし、病気のトリガーになる活性酸素も、病気という自覚症状が出ないと、その存在を意識することはありません。

これは大きな問題です。病気にならないと気が付かない、その結果「治療」というかたちでしか健康維持に取り組めない方が多いという現状を、何とかしなくてはいけません。

「活性酸素が減ったな」というサインは、健康な方にはあらわれません。

だからこそ、サインが無いときから、活性酸素を増やさないような生活習慣・食事や運動、もしくは専門家が提案する方法を取り入れておくことが大切なのです。

Q.生活習慣はなかなか変えられないのですが…

「活性酸素を増やさない」
それが予防医学の考え方です。

しかし、「活性酸素を増やさない・病気になりにくい身体をつくる」ということは、それぞれ個人が取り組まなくてはならないことです。

そのため初めは大変かも知れませんが、予防医学をライフスタイルに取り入れ、生活習慣にしてしまう必要があります。

「3カ月予防医学をがんばったから、病気にならない」ということにはならないからです。継続しないと、意味がないのです。

逆にいうと、3か月も続けることができたら、それはすでに習慣化されています。

自分の健康に対して何かをすることが、苦痛ではなくなっているでしょう。

Q.予防医学は日本では遅れていると聞きますが、どうでしょうか

日本全体の予防医学に対する意識は、とても遅れています。
特に、健康に対する自己防衛という意味では、30年は遅れています。

しかし、皆が予防医学を意識して、活性酸素を増やさないような生活習慣を持ち、たとえばサプリメントなども活用して自己防衛に取り組めば、病気は確実に減ります。病気が減ったら、保険治療も減り、医療費も下がっていくでしょう。

実際アメリカでは、ガン患者の減少により医療費が減っています。

かつてアメリカでは、ガンの増加をストップさせるための啓蒙活動がありました。そして、ジャンクフードではなく野菜を食べ、添加物が入っているものは避けましょう、という考え方が浸透し、ガンを減らすことを成功させたのです。

1977年、アメリカでは「マクガバンレポート」という食生活指針の報告書がまとめられました。その時期を境に、国民の意識が向上したのです。今のアメリカは、私たちがイメージするような、ファストフードばかりを食べている国ではありません。そのイメージはすでに30〜40年も前のものです。

アメリカでは、一部の人を除き、食生活からの自己防衛が当たり前になっています。またアメリカは、医者にかかったときに保険診療はききません。そのため「病気にならないように」という意識自体が強いのです。

逆説的な話ですが、ある意味、日本の保険診療は病気を増やしているとも言えるでしょう。

日本人は、「病院にいけば何とかなる」と思っている節が強くあります。病気を防ぐために、生き方・ライフスタイルを変えないといけないという切迫感があまりなく、「病気になってから薬を飲めばいい」という方も多くいます。

確かに処方薬は、毎日サプリメントを飲むよりも安くつきます。

何より、いつ病気になるかが分からないのに、ずっと自己防衛をするのは大変、という思い込みがあるようです。

日本にはすばらしい面もありますが、健康意識に関しては後進国であると言えるでしょう。

Q.食べ物にどれくらい気を使ったらいいですか?

最近よく聞くようになった「スーパーフード」とは、活性酸素を増やさない・消去するような抗酸化物質が含まれている食べ物のことです。

その食べ物をしっかりとれば、身体の中の活性酸素が中和されるといわれますが、ではその効果は?というと、理屈的には、ずーっと食べ続けないといけない。これが難点です。

例として、赤ワインに含まれるポリフェノールをあげましょう。ポリフェノールには確かに活性酸素を消去する作用はあります。しかしこれは実験的レベルでの効果でしかありません。

「赤ワインを飲み続けた人が本当にガンにならないか」という実験のデータを集めるには、長い年月が必要です。その物質に健康作用があることと、ガンの確率が減るというのは、まったく違う話だからです。

科学的には、毎日飲酒した人と、まったく飲まなかった人が30年後にガンになる確率が何%なのかという膨大な比較研究がなされないと、本当にポリフェノールが身体にいいかということが分かりません。動物実験で作用が確認されたとしても、人間の身体にどのような影響があるかは、もっと綿密に調べないといけないからです。

病院で出る薬は、飲む人と飲まない人を人為的に分け、「何年間飲んだらどうなるか」というデータが出せているものです。だからエビデンスがあると言えますが、赤ワインを30年間飲んだ人の健康をどうやって検証するか、病気の発症率をどう調べるか、はとても困難なことです。

また「これが健康にいい」という自然食品があっても、人間が食べ続けたらどうなるかはまだ証明されていません。

しかし一般の方はそこまでの知識がありませんから、「いい」と聞いたらその食品に注目し、ときには商売に利用されてしまうのです。

そうならないためにも、分子栄養学・機能性医学に注目し、健康のベースを整えるために役に立つものを選ぶ必要があります。

Q.分子栄養学について教えてください

一般的な栄養学と、分子栄養学は少し違います。

これには歴史的な背景もありますが、ビタミン・ミネラルの例で簡単に説明すると、栄養学とは「足りない栄養素なら補いましょう」という考え方です。

ビタミンCが欠乏するとこうなるよ、だから「食べ物で補いましょう、こんな料理にしましょう」という方法を提案するのが一般的な栄養学だと思ってください。

それに対し分子栄養学は、ビタミンCの大量投与から始まりました。不足分の補給ではなく、大量投与をすることで、ガンが治るなどの思わぬ治療効果が出たという報告があったのです。

この、大量投与で「普通の量では得られなかった臨床的な効果がある」という発見が、分子栄養学のスタートとなりました。

分子栄養学でいう投与量は、一般的な栄養学や厚生労働省の出している量よりもはるかに多いものです。栄養学はバランスとるための目安の話だとすると、分子栄養学は、ある栄養素の集中的投与で、治療をするものであると考えていただけるとよいでしょう。

たとえば食べ物にはいろいろな成分、たとえばビタミンやミネラルが含まれていますよね。

その中でも、アルファリポ酸という抗酸化物質があります。この栄養素に関しては膨大な文献があり、健康に対する作用も分かっていますが、赤ワインや食べ物でとりつづけることは困難です。

そのためアルファリポ酸を単一物質としてカプセル化し、長期間飲んだグループと、飲まなかったグループで分けて、比較することで、結果検証が進められます。

このように、薬と同じようにデータ化をすることで、食べ物には微量しか入っていない成分を安全に効率的に取ることが、分子栄養学によって可能になってきているのです。

Q.機能性医学について教えてください

次に、機能性医学についても簡単に説明しましょう。機能性医学の「機能」とは「身体の機能」のことです。

栄養素を外から大量投与して臨床的な治療する分子栄養学ですが、大量にビタミンCを投与しても治らない場合、「腸内環境は正常?」「消化器官に異常はないか?」という疑問が生まれます。

つまり、いくら栄養を与えても、その人の消化機能や、肝臓の解毒機能などが正常に働いていないと、効果が出ないですよ、ということになるのです。

だから、栄養をきちんと行き届かせるため、まず先に身体の機能を整えることを視野に入れなくてはなりません。

Q.自分でバランスを取ることが大切なのですね

本来は、分子栄養学のプロは機能性医学にも通じていなくてはなりません。また病気の治療も、その両サイドからの適切なアプローチが求められます。

しかし、本来はそうあるべきですが、そのバランスを取れずに病気が治せていない方が本当に多くいらっしゃいます。そして、「どこに行っても、何をしても良くならない」という患者さんが増え続けているのです。

そうではなく、そこまで「治療」をしなくてもいいように、事前に自分で身体を整えておく「予防医学」を提案したいのです。

たとえばリーキーガットになってしまったら、それを起こさないようにしましょうというのが「機能性医学」ですね。

しかし予防医学は、そもそもリーキーガットにならないように、生活習慣に気を付けていくことを指します。

添加物・合成保存料だけではなく、精神的ストレスなども予防医学の範疇です。

また、小麦にはリーキーガットを起こす作用があるといわれていますが、そのようなものを「食べちゃダメ」で終わらせるのではなく、知識を持ち、過剰に摂り過ぎないようにすることが大切なのではないでしょうか。

とはいえ、表面的な知識だけで「これは食べちゃダメ!」と決め付ける人が多いですね。そうではなく、「小麦は毒だ」「危険だ」というマイナス情報の信ぴょう性をまず考えてみてください。

Q.予防医学は、人を幸せにします

健康で、ワクワクした人生を送ること。これが予防医学の本質です。

食事にも、幸福感がないといけません。「これしかダメ」「こんな添加物は危険じゃないのか」と思いながら食べるのと、「美味しそう!」「幸せ、ありがとう!」と思って食べるのでは、栄養の吸収率だって変わります。

多少の添加物が入っていても、プラスの気持ちで食べていたら、何の害もありません。しかし「これを食べたら、また悪化するのでは…」などと思っていたら、実際に病気は悪化しますよ。

これは意識の問題です。しかし、不安や危険をあおった商品をついつい買ってしまう方も、とても多くいらっしゃいます。

予防医学に興味を持っている方には、その波には乗らず、もっと賢くなっていただきたいと思います。

そうなるには、メンタルを強くすることも必要です。

同じネガティブな情報を手に入れても、何も思わない人もいれば、恐怖心を持つ人もいます。しかし、恐怖心をあおるような情報を信用してはいけません。

そもそも人を怖がらせる情報というのは、その発信者のエネルギー自体があまりよろしくありませんよね。それを見抜いて、賢くご自身の健康をコントロールしていただきたいと思っています。

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