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映画「ボヘミアン・ラプソディ」から学ぶ、AIDS(エイズ)の歴史と時代背景

Portrait of happy crowd enjoying and dancing at music festival

映画「ボヘミアン・ラプソディ」が人気を博した2018年冬。
往年のファンだけではなく、「クイーン」というロックバンドをご存じなかった方の心にも、フレディ・マーキュリーの生き方や情熱、また歌声が新たに刻みこまれたのではないでしょうか。

ところで、映画の主題ではありませんが、クイーンの歴史を振り返るうえでは、フレディ・マーキュリーのセクシャリティとAIDSという病気を避けて語ることはできません。
この記事では、1980年代のアメリカで起きたAIDS騒動を簡単に振り返り、若い世代にもその時代背景を知っていただきたいと思います。

そして、AIDSは決してスクリーンの中だけの病気ではないこと、また不必要に恐れるものでもないということも理解し、正しい知識を持てるようにしてみてください。

1980年代のAIDS差別騒動

1980年代の「AIDS差別騒動」を記憶している方も多いと思います。
しかしそれ以降に生まれた方にとっては、「恐ろしい病気のひとつ」程度にしか認識されていないでしょう。

AIDS(先天性免疫不全症候群)が初めて報告されたのは、1981年のアメリカでした。はじめは「未知の病気」とされ、原因不明で死に至る「人類に襲いかかった、恐怖の病気」というネガティブなイメーが、メディアを通じて世界に広がったのです。

AIDSの原因菌であるHIVウイルスが発見されたのは、1985年です。それまでの数年間、AIDSの原因は謎とされ、プール、くしゃみ、接触などで感染するなどの噂が駆け巡りました。

AIDSとゲイへの差別

初期のAIDS患者は、全員がゲイでした。
そのため世界中で同性愛者に対する恐ろしいほどの差別が広がったのです。

ここ数年で、LGBTなど多様なセクシャリティを持つことが、個人の当たり前の権利として受け入れられています。

しかし1980年代のAIDS騒動を知っている世代に、同性愛者への差別意識が残りがちな理由には、当時の原因不明の死に至る病への恐怖と嫌悪感が、拭い去れていないという視点も必要でしょう。

フレディ・マーキュリーがAIDSと診断されたのは、実際には1987年ですが、映画の中では、1985年のライブエイド以前として描かれています。

多少史実と映画では変わっていますが、当時のアメリカでは実際に多くのアーティストやアスリートがAIDSで亡くなっています。

フレディ・マーキュリーがゲイであること、AIDSを患っていることが世間に知られた1990年頃には、クイーンのファンまでもが風評被害に苦しむなど、病気への偏見はすさまじいものでした。

1980年代の日本はどうだった?

日本でも、AIDSの恐ろしい噂は広まっていました。当時は性交渉で感染することが一番に取り上げられ、性交渉時にはコンドームをつけること、という今では当たり前のことが、声高くいわれ始めた時期でもあります。

初期のAIDS騒ぎの時期は、日本のバブル期(1986〜1991)とちょうどピッタリ重なります。好景気という浮ついた雰囲気の中に、「かかったら死ぬ恐ろしい病」「防ぐにはコンドームしかない」という表面的なゴシップ情報が流布し、またゲイへの差別も助長されていきました。

日本のAIDS騒ぎは、まさに「どんちゃん騒ぎの裏に隠れている恐怖」ともいえる、バブル期の二面性を象徴するような出来事だったのです。

正しい情報が出始めた1990年代

1993年、「フィラデルフィア」という映画が公開されました。トム・ハンクス主演の、ゲイとエイズへの偏見を、法定でくつがえしていく物語です。

1995年には「マイ・フレンド・フォーエバー」が封切られます。これはHIVに感染した少年との友情物語で、「AIDSの特効薬が見つかった」という噂を信じ、少年がふたりで旅に出るというストーリーです。

この頃には「AIDSは、同性愛には関係がない」「ウイルス性の病気で、年齢性別を問わず誰でもかかり得る」という認識も広がっていきます。

日本では「薬害エイズ訴訟」が大きな社会問題になりました。

これは、HIV感染者からの血液を原料につくられた血液凝固因子製剤を、ウイルスの不活性化(加熱処理)をせずに流通させ、多くHIV感染者・AIDS患者を生み出した事件です。

この事件をきっかけに、日本でもAIDSへの関心は高まり、また正しい知識が求められるように社会が変化していきました。

このように、AIDSは「原因不明の死の病」から「同性愛者への偏見を助長させる病」と思われていた時期を経て、「ウイルス性の病気であり、誰でもかかる可能性がある」という正しい認識をされるようになっていったのです。

HIVウイルスの感染力はとても弱い

AIDSは、すでに「死ぬ確率の低い病気」になっています。

まず、AIDSの原因菌であるHIVウイルスの感染力は、インフルエンザウイルスなどよりずっと弱いことが分かっています。

HIVの主な感染経路は
① 性的接触
② 血液感染
③ 母子感染
の3つ。そのため、患者に接した、肌が触れた程度のことでは感染はしません。

また、HIVウイルスに感染した場合でも、それがAIDSとして発症する確率は非常に低く、ほとんどのケースでは、自分のリンパ球がAIDSを防いでくれます。

ただし、AIDSの正式名称「先天性免疫不全症候群」からも分かる通り、免疫力が弱っている場合は、ウイルスを体内で退治できずにAIDSを発症してしまう確率は上がります。

これは風邪などと一緒のメカニズムです。風邪だって、免疫力が高い人はかかりにくいですよね。

HIVウイルスの感染力は弱いため、健康で免疫力の高い人であれば、そうそうAIDSにはなりません。

ただし、薬害、間違った性交渉、患者との血液接触(歯ブラシや注射針)などの危険はあります。どの病気にもいえることですが、正しい知識で予防し、もしリスクを負ったことが分かったなら、素早く対処することが大切なのです。

まとめ

フレディ・マーキュリーのエピソードを中心とする1980年からのAIDS騒動は、確かにとても悲しいものでした。しかしたった40年で、ここまで解明され、死に直結するとはいえなくなったのは、医学の発達と、正しい知識を持とうとした人々のおかげでしょう。
決して恐れることはありません。正しい予防と、感染後の処置を行うことで、苦しい思いをする方がひとりでも減るような社会にしていきましょう。

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