ストレス・疲労

【医師に聞く】心と身体の関係その②  ストレッサーとストレス反応

その①では、ストレスを察知した「ホルモン系」と「神経系」が、実際に身体に不調という反応を引き起こすまでのプロセスについて、医師に丁寧に教えてもらいました。
ここからは、ストレスの原因となるストレッサーと、私たちが社会的ストレスにどのように対処していくべきなのかを、聞いていきたいと思います。

ストレッサーとストレス反応

ストレスを与える人・ものを、ストレッサーといいます。

ストレスの原因となるストレッサーが存在し、ストレスを生み出す事象があって、それを受け止めて起きた身体中の一連の反応が、「ストレス反応」です。

気を付けたいのは、ストレッサーは一緒でも、ストレスを受け取る側の状態が違うと、脳や自律神経で起こる反応が大きく変わるということ。

たとえば、イヤな上司がいるとします。

その上司から、
「人格否定され、罵倒された」というストレスと、
「命令された山のような仕事を、見返すために頑張ってやる」というストレスでは、
全く逆のストレス反応が起きます。

また、同じ上司にガミガミいわれても、「成長のために注意してくれているんだ」「まあ、聞き流してほどほどにやろうよ」などとポジティブに捉えられる人もいますよね。それも、ストレスの受け止め方の違いです。

ストレッサーが同じでも、人によってストレス反応が違うということは、よくあります。
たとえストレスであっても、それを刺激にして成長できたのなら、自分の力でプラスのストレスに変えられているということですね。ストレスは、受け止め方が大事なのです。

ストレス反応には、認知機能が関係している

では、同じ人間なのに、どうして受け止め方が違う人がいるのでしょうか。

同じストレッサーから受けたストレスに、人によって逆の反応が起きるのには、「認知機能」が関係しています。

認知機能とは、起きた事象をどのように認知するかということです。

たとえば、いろいろな物事をネガティブに捉えてしまう人がいますが、それはその人の「認知機能=心の中の鏡」が、なにかの影響を受けているということですね。いわれたことを勝手に「負」に改変してしまう傾向があるのも、認知の問題です。

では、ネガティブな認知がどこで生まれるのかというと、小さいときに育ってきた環境や経験が関係します。いじめられていた、親から認められずに愛情不足だった、などの要因がベースになり、認知機能がネガティブな方向にしか働かないことが多くあるのです。

そのような認知機能を持つ人は被害者意識が強くなるため、上司がその人のために指導していても、「いじめられている、差別されている」と捉えてしまい、過剰なストレス反応を引き起こしてしまいます。

そうではなく、親から愛情をかけられて育ち、父親から叱られても「おまえにこうなって欲しいから、こう願っている」と説明されて育つと、たとえ上司からガミガミいわれてもマイナスには捉えませんし、落ち込みも一瞬で済み、すぐに立ち直ることができます。

心理学の領域には、「認知行動療法」というメソッドがありますが、それはこの認知自体を変えようというもので、気持ちを楽にしたり、行動をコントロールするために使われています。

過去の経験は、潜在意識に蓄積されている

ストレッサーは、上司とは限りません。
肉親の死や災害など、自分では変えられないストレスであっても、認知の違いでストレス反応が変わるというシステムは、まったく同じです。

同じ災害にあっても、「大丈夫」と気にせず、早々に立ち直る人もいれば、パニックを起こし過敏になってしまう人もいますよね。これが認知の違いです。

認知機能は、元となるストレスの強弱や内容だけではなく、過去の人生で何を経験してきたかということに関係していきます。

生まれてからの記憶は、自分では覚えていなくても、潜在意識が覚えています。

自分で思い出せる・考えられる「顕在意識」は、氷山のほんの一角です。
それに対し、潜在意識は意識の99%を占めるといわれています。

避けられないストレス、どうすればいい?

病気の治療でも、すーっと治る人と、なかなか治らない人がいます。
その場合は、単に身体を診るだけではなく、カウンセリングなどで心や認知について解きほぐす必要が出てきます。

潜在意識や認知の問題は、実はとても大切です。

一般の医学のまな板には乗りにくいので、知られていない部分もありますが、心の問題が自律神経やホルモン系を介して身体に影響を与えているのは事実であり、「病気」として表面に現れてくる事象のほとんどの原因であると考えます。

ストレッサーを遠ざけて暮らそう

最近は、うつ病が増えています。
ブラック企業という存在も取りざたされ、現代ならではの社会的ストレスが表面化してきました。

同じストレッサーであっても、受け止め方によってはネガティブなストレスになる場合もポジティブなストレスになる場合もあるという話をしましたが、間違えてはいけないのは、「ネガティブな反応をするのは、受け取る側が悪いからだ」としてしまうことです。

社会的な暴君がいて、客観的に誰が見てもひどいことをしているとしましょう。

その被害者に対して、暴君が「うつ病になるのはお前の認知が悪い」というのは、まったく間違っています。社会的に許されるかどうかということと、ストレスに対してどのような心がけで受け止めようとするかは、全く次元の違う話です。

ストレスを受けた側が我慢をするのではなく、ストレッサーを遠ざけられるようにならなくては、良い社会とはいえないでしょう。

また、環境汚染やテクノストレスなども同様です。リスクへの認識を正しく持ち、必要なら距離を置かなくてはいけません。

健康に生き抜くために、ストレスをはね返す力を持とう

たとえば、煙草もストレッサーになり得ます。

受け手の話でいうなら、ヘビースモーカーでも病気にならず平気な人もいれば、吸っていないのに病気になる人もいます。

同じ喫煙環境にいても、肺がんになる人と、ならない人もいる。それには、その人それぞれの免疫力や自己治癒力といった、「自分を外的ストレスから守る力」が関係しています。

これは決して、煙草を吸っても大丈夫ですよ、という話ではありません。煙草は客観的に見て有害ですし、発がん性があるのであれば、できるだけ社会と隔離し、病気になる人を減らしていかないといけません。

社会としては禁煙にしないと皆の健康は守れない。けれども、いきなり禁煙になるわけじゃないし、受ける被害がゼロにならないのであれば、自分で自分を守る必要があるということです。

そのためには、身体のバランスを整え、ストレッサーから受ける外的ストレスをはね返せる心身をつくることが求められます。
それこそが、究極の予防医学ではないでしょうか。

まとめ

原因不明の体調不良が「自律神経のバランスのせいですね」といわれてしまうのは、問題がないのであれば、それ以上調べることができないからです。そこに、「自律神経失調症」という名の入れやすい箱があるため、まとめられてしまうのです。

確かに検査では原因が判明しなくても、心のストレスに発端があり、神経系やホルモン系のバランスが崩れているのであれば、その不調は気のせいではなく、細胞レベルで身体が弱っているということでもあります。
ストレッサーは何か?それはどうすれば解決できるのか?を読み解き、自分で対処することが困難であれば、専門家にも相談してみてください。

監修医師/小西康弘(医療法人全人会理事長)

2013年に小西統合医療内科を開院。2018年9月より医療法人全人会を設立。分子栄養学や機能性医学の最先端の知識に基づき、私たちの体が本来持っている「自己治癒力」を高める医療を提供。
豊富な臨床経験に基づいた有益な情報を発信中。

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