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【医師に聞く】身体にとっての異物を「記憶する」、免疫寛容という仕組み

子供
免疫寛容」という言葉があります。
あまり馴染みのない言葉かと思いますが、その人の「免疫力」を決める、とても大切な機能です。
今回は、免疫寛容とは何なのか、またアレルギーや感染症、自己免疫疾患などの病気を防いでくれる「免疫細胞」が、どうして急にエラーを起こしてしまうのかを、医師に聞いてみました。
免疫寛容と腸内環境の関係からは、さまざまな病気予防のヒントが見えてくるでしょう。

免疫細胞の働き

免疫力とは、私たちの身体が感染症やウイルスに対して抵抗力を獲得することをいいます。

免疫細胞は、身体に入ってきた異物に対して、「これは危ないから攻撃しよう」とか、「これは身体に必要なものだからスルーしよう」など、それぞれを記憶します。

それがうまくできていないと、身体に必要なものまで攻撃をしてしまったり、逆に、排除すべき対象をスルーしてしまい、病気に感染してしまうからです。

では、その記憶はいつされるのかというと、生まれてから3歳くらいまでの、免疫寛容の時期だといわれています。

免疫寛容について

生まれた子どもは、少しずついろいろなものを食べますよね。

自分の身体にはない栄養素に始めて出会い、それを取り込んでいくわけですが、食べ物だって本来は異物です。しかし免疫寛容のおかげで、その頃までに身体に取り込んだ物質は、免疫細胞が記憶して、「これは、今後また入ってきても大丈夫」という区分をするのです。

だから、その時期に形成された腸内フローラは、体外から入ってきた菌も含めて、自分の身体の一部として免疫に記憶されるのです。

自己免疫疾患は、免疫細胞の記憶エラー

免疫は、免疫寛容の時期の記憶をもとに自分を守っていきます。

しかし、あるとき免疫が自分自身の身体への攻撃を始めることがあります。それを、自己免疫疾患といいますが、本来は「問題ない」と記憶していたはずの体内物質に対して攻撃をしかけ始めるのです。

その原因は、免疫のバランスが崩れ、記憶プラグラムにエラーが起きてしまったからです。

自己免疫疾患のひとつである、関節リウマチを例にとって説明します。

まず、免疫細胞が、関節にある一部のタンパク質に対して、「これは身体にとって異物だ」と認識することはら始まります。

関節にある軟骨は、生まれたときからあったもので、異物ではありません。

しかし、何らかのエラーが起きて、免疫細胞が関節にある特定のタンパク質を攻撃してしまいます。たとえばヒザの軟骨の中にも、さまざまな物質がありますが、ヒザの軟骨全体を攻撃するわけではなく、ヒザに含まれる一部のタンパク質の抗原を認識して、攻撃をしかけているのが、関節リウマチなのです。

免疫がタンパク質を敵認定するメカニズム

自己免疫疾患には、関節リウマチのほかにも、甲状腺に関する病気などさまざまなものがありますが、「免疫細胞の記憶エラー」が原因となっていることは、共通です。

しかし、生まれたときからある関節や甲状腺は、本来は免疫寛容の状態にあって、免疫細胞から敵として認識されていないはずです。

ではいったい、どの時点で敵認識されるのでしょうか。

まず、甲状腺が敵として認識されるのは、甲状腺が何か悪いことをしたわけではありません。

腸に入ってくるタンパク質の一部が、甲状腺の一部のタンパク質と共通性があることがあります。
つまり、腸に入ってきたタンパク質が免疫細胞から異物認定されると、「このタンパク質と同じものが、甲状腺にもあるぞ!」ということで、甲状腺を攻撃しだすのです。

トリガーは腸にある

子供たち
意外に感じられるかも知れませんが、免疫疾患の大元を探れば、身体の中の一部を異物として認識するスイッチが入るのは、腸だということが分かっています。

免疫バランスが崩れたから、いきなり甲状腺疾患になる…ということはありません。
普通なら異物として認識されないようなタンパク質が腸の中で攻撃されることで、その矛先が甲状腺にも向く…という流れで自己免疫疾患が引き起こされるのです。

ではその腸に入ってきた甲状腺と共通性もつタンパク質ですが、そのタンパク質も、もとは身体の中にあったはずです。つまり免疫寛容が成り立っていて、本来は敵として認識されないはずです。

そうではないと、人間は何か新しいものを食べるたびにあちこち攻撃されることになってしまいます。しかし、そんなことにはなっていませんよね。これも免疫寛容のおかげで、もともと身体の中にあるタンパク質と同じものであれば、体外から入ってきても攻撃はされません。

ところが腸内環境が崩れてしまうと、免疫のバランスが崩れて、エラーが起き、今まで仲のよかった仲間を攻撃してしまう…ということなのです。

アレルギーも一緒

だから、免疫のバランスを整えようと思ったら、まずは腸内環境に目を向ける必要があるのです。

この考え方は、食べ物のアレルギーでも一緒です。
「卵アレルギーだから、卵を食べるのをやめる」という発想になりがちですが、本来は卵が悪いわけではありません。そうではなく、攻撃する方がエラーを起こしているのだから、そちらをメンテナンスする方に目を向けたらいいですよ、ということなのです。

腸内環境と免疫疾患

最近では免疫疾患に関する治療法も、とても進化しています。標的治療といいますが、いじめっ子に変わってしまった免疫を特定し、ピンポイントで治療することで、元のいい子に戻すことができつつあります。

しかし、それは、暴れている免疫疾患をなだめるための治療ですから、これ以上の暴れ者を出さないためにも、ベースである腸内環境を整えることは、とても大切です。

分子栄養学の分野では、腸内の菌が免疫疾患に大きく関係していることも知られており、そのような治療も取り入れられています。

たとえば、あくまで治療経験の範囲のことでエビデンスはありませんが、カンジタ菌というカビを腸内から除菌すると、関節の痛みが治る人がいます。

一見つながりはなさそうですが、腸内環境を整えてカンジタ菌を除菌することは、関節リウマチの治療に効果はありそうです。

予防医学として腸内環境を整えることは、免疫寛容で「OK」とセッティングされている食べ物や物質に対して、プログラミングエラーを起こさせないための「基本のキ」だといえるでしょう。

まとめ

免疫寛容とは、3歳くらいまでに取り入れた、はじめて接する食べ物などの異物に対して「これはOK」と認識する機能だということが分かりました。
しかし腸内環境が崩れると、免疫細胞にエラーが起き、「OK」としていた物質に対し攻撃を始めてしまいます。自分の体内でこのような「内部戦争」が起きてしまうのは、とても大変なことです。免疫バランスをくるわせないためにも、予防医学としての腸内環境に目を向けてみましょう。

監修医師/小西康弘(医療法人全人会理事長)

2013年に小西統合医療内科を開院。2018年9月より医療法人全人会を設立。分子栄養学や機能性医学の最先端の知識に基づき、私たちの体が本来持っている「自己治癒力」を高める医療を提供。
豊富な臨床経験に基づいた有益な情報を発信中。

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