「病気の原因は、活性酸素」だといわれています。
しかし、活性酸素が悪者であることは何となくイメージできても、活性酸素がいったい体内のどこで生まれ、どのように病気を引き起こしているか…については、まだまだ知られていません。
そこで今回は、「活性酸素は、体内に火をつけて回る放火犯であり、その結果の炎症が、すべての病気の原因である」という病気の道筋について、医師に分かりやすく説明してもらいました。
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動脈硬化の原因は、油ではなく活性酸素
このサイトでは、腸内環境を整えることの必要性をよくお話しています。それは、腸内環境が整い、腸の善玉菌が増えることで、免疫システムのエラーを防ぎ、動脈硬化などの病気を防ぐことができるからです。
動脈硬化の原因は、油分の取り過ぎと思っている方が多くいらっしゃいますが、そのようなことで動脈硬化にはなりません。
動脈硬化の原因は何かというと、体内で活性酸素が増えたからです。
私たちが悩む、さまざまな身体の不調や病気は、この活性酸素によって引き起こされています。
病気の原因
誰しも病気になると、「原因が知りたい」と考えます。そして、塩分の取り過ぎなんじゃないか、あの物質が悪いんじゃないか、ウイルスに感染したんじゃないか…と、必死に犯人探しをするでしょう。
もちろん、風疹などウイルスが原因をはっきり分かっている場合は、そのウイルスに対する治療が必要です。
しかし、さまざまな病気の原因は、活性酸素が体内で増えることです。
活性酸素とは、「物質を酸化させるパワー」の強い酸素です。本来は体内の細菌・ウイルスや有害物質を撃退してくれたり、体内の酵素の働きを促進してくれる、役に立つ物質でもあるのですが、活性酸素が増えすぎると、正常な細胞をも攻撃し、酸化させてしまうのです。
「細胞の酸化」は、老化の原因とされています。そのため活性酸素を増やさないことは、アンチエイジングの観点から語られることが多くありますが、それ以上に病気の原因となることを覚えておきましょう。
LDLコレステロールの数値に一喜一憂しないこと
悪玉コレステロール・善玉コレステロールという言葉がありますが、悪玉コレステロールが高いだけで動脈硬化は起きません。
健康診断でLDLの数値を見て一喜一憂してはいけません。LDLは、まだ悪玉に変身する前の数値です。それが、活性酸素により「悪玉化」されることで、はじめて動脈硬化が起きるのです。
LDLの数値が200に近いような老人でも、ピンピンしている方がいます。どうしてだろう?と思いますが、食事をはじめ、生活習慣がよく、活性酸素が増えないような生活を送っているのでしょう。
また、ストレスが少ない、腸内環境が整っているなどの条件が加わると、活性酸素を増やす炎症物質が身体の中にあまり入ってこないため、いくらLDLの数値が高くてもそれが悪玉化しないということです。
活性酸素が増えるのは、「身体の炎症」のせい
では、どうして活性酸素が増えるのでしょうか。
それは、身体に炎症が起きるからです。
炎症症候群という概念があります。
「病気をひとことでいうと、炎症である」という考え方で、標準的な医学でも受け入れられはじめています。
その考えでいうと、糖尿病も炎症、ガンも炎症です。
そのため、炎症をどうやって抑えるか、また、そもそも、その炎症がどこから起こってきたかを見定めて対処することが大切なのです。
活性酸素は炎症の犯人
「活性酸素が病気の原因」と聞くと、活性酸素が炎症の燃料であるようにイメージできますが、そうではありません。活性酸素は燃料ではなく、火をつけてまわる犯人の方といえるでしょう。
活性酸素が増えると、体内での放火が増え、いろいろなところで炎症が起きてしまいます。
そして、放火犯をひとりやっつけても後から後から増えていくため、キリがなくなり、体内が大火事になってしまった状態が、病気なのです。
活性酸素の住処は、ミトコンドリアです。
ミトコンドリアは、細胞内にある「エネルギーを製造所」ですが、そこが不完全燃焼を起こすことで、ミトコンドリアから活性酸素が漏れ出てしまいます。
そして、ミトコンドリアから発生した活性酸素が身体のアチコチに火をつけていく…という流れになっているのです。
病気の道筋を知る
炎症症候群は、病気をみるときのキーワードとしてとても大切です。
・ミトコンドリアが不完全燃焼を起こす
・そこから活性酸素が漏れ出していく
・活性酸素が身体のアチコチに火をつけて、炎症を起こす
・病気になる
このように病気の道筋をイメージできると、どの段階で食い止める必要があるのかも見えてきます。
最後の「病気になる」に至ってから、火消しに必死になっても、大火事になればなるほど、消火は難しくなります。だからこそ、予防医学では「活性酸素を増やさないように」ということがよくいわれているのです。
活性酸素を増やさないために
では、活性酸素を増やさない・減らすためにはどうしたらいいのでしょうか。
抗酸化治療
活性酸素は、血液検査ではかることができます。数値が高い人に対し、病院で行われている抗酸化治療・抗炎症治療では、アルファリポ酸やビタミンCなど、抗酸化効果が高く、活性酸素を減らすための医療用サプリメントが使われます。
また、今は大きな病気ではないけれど、アンチエイジング・美容のために抗酸化力の高い栄養素を摂っている方も多いでしょう。
たとえば、ポリフェノールには、活性酸素を消去する力があるといわれています。
しかし、ワインをたくさん飲んだからといって万人に効果があるわけではありません。まずは、活性酸素を増やさないための生活習慣が大切です。
炎症を防ぐ食事
炎症症候群のことが分かると、病気に対する見方も変わってくるはずです。
医師からいわれる「バランスの良い食事」とは、結局は身体に炎症を起こさない食事のことです。
そして、炎症を起こさない食事とは、腸内環境を整えるもの・抗酸化物質が含まれているものを積極的に摂れる食事のことだと思ってください。
これは、たとえば「ヨーグルトを食べたから大丈夫」などという単純な話ではありません。身体にいいといわれている食材もピンキリです。本当に身体にいい物質だけならいいのですが、そこにたっぷりと添加物が入っていたのならば、腸の炎症の原因にもなってしまうからです。
ただし、極端になることはいけません。現代社会で、完全に添加物を避ける生活は不可能です。添加物にも、味を良くする・安全に保存するなどのメリットはありますし、そもそも、少しの添加物で炎症を起こさないような状態を目指すことが大切だからです。
視野を広く持ち、「炎症を起こしにくい身体のためには、何を食べたらいいか」という観点から、食事のことを考えるようにしてみましょう。
まとめ
活性酸素はよくない!ということは知っていても、活性酸素が細胞のミトコンドリアから出てきていることや、身体に放火して歩くことで炎症が起こり、病気を引き起こしていることなどは、まだまだ一般的には知られていません。しかし、炎症症候群のことが分かると、病気になる道筋が見え、どこに対策をしたらいいのが明確になります。なってから…ではなく、元気なうちから身体の基礎を整えることが大切なのです。
監修医師/小西康弘(医療法人全人会理事長)
2013年に小西統合医療内科を開院。2018年9月より医療法人全人会を設立。分子栄養学や機能性医学の最先端の知識に基づき、私たちの体が本来持っている「自己治癒力」を高める医療を提供。
豊富な臨床経験に基づいた有益な情報を発信中。